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『蜂』シリーズ1 〜蜂の種類は生物学者の気紛れで決まる

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蜂という昆虫は人間のように高度な社会性を持っていて調べてみるととても面白い。これから何回かに分けて蜂(主にミツバチ)の生態について紹介して行きたい。

蜂の特徴を挙げると、次のようになる。

ところが以上のような特質は全て蟻にも当て嵌まる。「蟻には羽は無いだろ」と思う人もいるかも知れないが、それは間違いである。確かに普段よく見かける働き蟻や兵蟻には羽は無いのだが、そっちの方が例外なのだ。ちなみに蜂にも羽が無い種が有る。アリバチの雌やハネナシヒメバチ等だ。生物学上、蜂と蟻の区別は『蜂には胸と腹を繋ぐ腹柄が無いが、蟻には腹柄が1,2個有る』というものである。

蜂の種類は非常に多い。主な属科名だけでも、キバチ科・ヤドリキバチ科・ハバチ科・ヒラタハバチ科・コンボウハバチ科・ミツフシハバチ科・ヤセバチ科・ヒメバチ科・コバチ科・コマユバチ科・タマバチ科・ツチバチ科・セイボウ科・アリバチ科・ベッコウバチ科・スズメバチ科・ドロバチ科・アナバチ科・コハナバチ科・ハキリバチ科・ミツバチ科……とある。蜂の各種族はこのそれぞれに対し、さらに数十種類〜数百種類ずつに細かく分類されるのである。これだけ沢山の種類が有ると、変わった名前の蜂も多い。アナバチ科のキアシハナダカバチモドキ等は最早、蜂なのかそうでないのか分からない。(いや、蜂だが……)

さて、最も有名な蜂と言えばミツバチだ。ではミツバチにはどのくらいの種類があるのだろうか? 現在、ミツバチの生息地域はアジア、ヨーロッパ、アフリカ、日本、フィリピン、インドネシアと多岐に渡っている。アメリカ大陸やオーストラリアにもミツバチは居るが、これは養蜂の為にヨーロッパから輸入された物だ。しかしそれも含めて考えるとミツバチは地球上の殆どの地域に生息している事になる。ちなみに寒冷な気候を好むマルハナバチは300種類以上、熱帯に生息するハリナシバチは500種類以上もいる。南米のみに分布しているシタバチでさえ100種類以上が確認されている。全世界に生息するミツバチの種類が相当な数に上るだろう事は想像に難くない。

しかし実際にはミツバチで独立種として認められたのは7種しかない。有名なトウヨウミツバチやセイヨウミツバチに加え、オオミツバチ、サバミツバチ、コミツバチ等がこれに当たる。それにしても先の話を聞くと、7種という数は少な過ぎるような感じを受けるだろう。実はこれには『生物学者の価値観』の問題が有る。

確かに独立種として認められたミツバチは7種しかいないが、蜂の分類方法はこれだけではない。亜種という物が有る。亜種とは、独立種のオリジナルと相違点が有る種が存在するが、その違いがあまりにも小さくオリジナルと殆ど変わらない、という場合に分類される。例えばニホンミツバチはトウヨウミツバチの亜種である。

問題は、その違いが大きいのか小さいのかを明確に判断する基準は存在しなく、全ては生物学者の裁量に任せられている、という事である。例えば台湾の馬博士は1953年にミツバチを24種に分類しようとする論文を発表した。これは多くの文献やタイプ標本の調査に基づく物だったが、当時は「細分化し過ぎている」というだけの曖昧な意見が大勢を占め、受け入れられなかった。しかし近年はミツバチの種類は増加傾向に有る。独立種の7種の内、3種はここ20年程度で増えた物だ。これはミツバチの研究が進んだ事により、独立種として扱わざるを得なくなった事例が増えて来ているからである。ミツバチ分類学の権威であるルットナー博士は近々独立種になる可能性の有るミツバチの名前を具体的に数種類挙げている。今後、さらにミツバチの独立種が増える可能性は充分に有る。


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