MENU TOP ABOUT DIARY COLUMN HOBBY NOVEL WORD BBS

『蜂』シリーズ3 〜女王蜂の非道な行い

COLUMN MAIN

女王蜂と働き蜂との格差は人間の人種差別の比ではない。

女王蜂と働き蜂との間には数多くの相違がある。例えば女王蜂の体重は働き蜂の4倍であり、寿命は50倍もある。また、女王蜂は1日当たり1500個もの卵を産む。これは自分の体重と同じだけの量の卵を1日で産んでいる計算になる。しかも女王蜂の産卵は1日では終わらない。女王蜂は巣の外で交尾を行うのだが、無事に交尾を終えて巣に戻ってくると働き蜂から欠かさずローヤルゼリーを貰いながら冬の間を除いて昼夜問わずずっと卵を産み続けるのである。対して働き蜂は卵を産む事も無く、寿命も1ヶ月と短い。

女王蜂と働き蜂はこんなにも違う。しかし実は両者は同じ受精卵から生まれて来る。それが何故ここまで分化してしまうのかはローヤルゼリーが大きく関与している。が、これについては後日述べる事にする。

また前回述べたようにミツバチは分業制度を敷いており、種族維持行動、つまり交尾行為は女王蜂が独占している。ところが既に「働き蜂は卵を産まない」と書いたが、これは文字通り「産まない」のであって「産めない」のではない。働き蜂は全てがメスであり、身体能力的には産卵する事が出来るのである。

働き蜂は卵を産める。なのに卵を産まないのは何故だろうか? 働き蜂が卵を産めば、種としても働き蜂自身としても有益である。が、ここに一匹だけ不利益を被る存在が居る。女王蜂だ。女王蜂は交尾行為を独占する事により、働き蜂から一方的にローヤルゼリーを受け取る等の特権的利益を所有している。働き蜂が卵を産み始めたら、その地位を失ってしまうのである。そこで女王蜂は、或るあまりにも非人道的な行為を行う事によって自分の特権的地位を保っている。

女王蜂は自ら“女王物質”という物質を分泌しており、働き蜂からローヤルゼリーを受け取る時に触覚等で働き蜂の身体に女王物質を付着させている。この行為を“ローヤルコート”と言う。ローヤルコートで女王物質が付着した働き蜂は、他の働き蜂と触覚で触れ合ったり、口移しで餌の交換を行う為、女王物質は瞬く間に群中の働き蜂に行き渡る事になる。

さて、これにて女王蜂の陰謀は終わりを告げる。というのも、女王物質とはオキソデセン酸の事であり、この物質は“性フェロモン”として知られている。これは別名、“卵巣発育制御フェロモン”と呼ばれていて、効能は読んで字の如く、『生殖機能の抑制』である。つまり女王蜂は働き蜂から餌を貰っておきながら、その機会を利用して群の中で自分だけが交尾を行うように仕向けているのだ。


今日今日のアクセス数/昨日昨日のアクセス数/累計累計のアクセス数
Read me! ページ最上段へ