MENU TOP ABOUT DIARY COLUMN HOBBY NOVEL WORD BBS

『蜂』シリーズ8 〜不倫が推奨される女王蜂

COLUMN MAIN

ミツバチの世界は多夫一妻制である。

ミツバチの交尾は何処でどのように行われているのだろうか? 「女王蜂が交尾の為に巣から飛び立つと、その後を同じ巣に住んでいるオス蜂が一斉に追い掛け、最も早く女王蜂に追い着いたオス蜂が女王蜂と交尾する」という説が広く伝わっているが、これは間違いである事が分かっている。女王蜂は羽化してから1週間ほどで交尾飛行を行うが、オス蜂が後を追う事は無い。そもそも同じ巣に住むオス蜂は女王蜂の息子である訳だから、交尾の対象になる筈が無いのだ。

しかし多くのオス蜂が一緒に特定の場所に行き交尾を行っている事は1963年には明らかとなっていた。オス蜂の集合空間は地上10〜40m、直径50〜200mの範囲と、かなり限定されている。そしてそこに様々な巣のオス蜂たちが集まって来るのである。そしてそこに女王蜂がやって来るとオス蜂たちが彗星型となって一斉に追い掛け始める。

ちなみにその集合空間は何年経っても変化しない。これはオス蜂の平均寿命が数ヶ月しかない事を考えると奇妙な点だ。場所に特別な条件が有るのかも知れないが、これはまだ科学的に解明されていない。

交尾飛行から帰って来た女王蜂の輸卵管の中から8700万もの精子が発見された、という実験結果が有る。オス蜂は1回の射精で1100万程度の精子を放出するので、女王蜂は10分ちょっとの交尾飛行の中で8回程度の交尾を行った事になる。事実、その後の観察実験により、女王蜂は1回で6〜8匹のオス蜂と交尾している事が確かめられた。

何故、女王蜂は複数回の交尾を行うのだろうか? 取り合えず思い付くのは、1回の交尾では受精確率が低いので効率が悪い、という事だ。しかし女王蜂が体内に貯蔵しておける精子量は500万〜800万しかなく、交尾1回分も無い。余った精子は腹部の先端からそのまま押し出されるように排出される。従ってこれが多回交尾の理由にはならない。

女王蜂の多回交尾は遺伝子的な問題である。女王蜂はコロニー内の全ての蜂の母であり、只でさえ遺伝子的に似通っている。これは血縁度という面からは喜ばしい事だが、種の保存という立場から見れば逆に不利である。伝染病や環境の変化により一気に全滅してしまう可能性が高いからだ。

しかしミツバチは一回の産卵で大量の卵を産む。これにより益々遺伝子の単純化が進んでしまう。これを防ぐ為に女王蜂は1回で複数のオス蜂と交尾をし、遺伝子の多様性を保とうとしているのである。


今日今日のアクセス数/昨日昨日のアクセス数/累計累計のアクセス数
Read me! ページ最上段へ