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『蜂』シリーズ13 〜ローヤルゼリーを食べれば女王になれる

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今まで女王蜂と働き蜂とには大きな差が存在する事を再三に渡って書いて来たが、実は彼女たちは受精卵の段階では全く差は無い。

女王蜂と働き蜂は同じ受精卵から生まれる。つまり生まれた直後に両者に差は無い。では女王蜂と働き蜂という全く異なるカーストに分化してしまう原因は何かというと、それは食生活の違いである。

王台に生み付けられた卵、つまり女王蜂候補が孵化すると、若い働き蜂が世話をする。そして女王蜂候補には餌としてローヤルゼリーを与える。その量は多い時には400ミリグラムにも達する。これは女王蜂候補が蛹になるまでに食べ切れない程の量である。

一方、働き蜂の幼虫は初めだけはローヤルゼリーを貰う事が出来るが、女王蜂候補の幼虫が大きくなる頃には餌に花粉を混ぜられてしまう。花粉はローヤルゼリーの原料であるが、そもそもローヤルゼリーとは花粉から取り出したタンパク質の事である。つまり、花粉とは手抜き料理のようなものなのである。しかもその量は数ミリグラムと非常に少ない。

この餌の違いが、女王蜂候補と働き蜂との間に成長に於いて決定的な差を与えている。働き蜂の平均的な幼虫期間は6日、蛹期間は12日なのに対し、女王蜂候補の幼虫期間は5.5日、蛹期間は7.5日である。女王蜂候補の方が栄養価の高い餌を貰っているので、より早く成長出来るのだ。

しかし幼虫や蛹の期間が短いという事は、それだけ成長の機会を奪われているという事でもある。これではせっかく栄養価の高い餌を食べても効果は半減だ。ところが実はローヤルゼリーには幼若ホルモンが豊富に含まれている。幼若ホルモンとは幼虫形質を保つという働きがあるホルモンで、この為に女王蜂候補と働き蜂では蛹期間が大きく異なるのに幼虫期間にはあまり差が無いのである。

女王蜂候補と働き蜂との身体的な差はこれで説明出来たが、これでは巨大な働き蜂が育つ事は言えても、女王蜂と働き蜂という決定的なまでのカーストの差の原因には言及出来ていない。この分化にはローヤルゼリーに含まれるヒドロキシデン酸(別名、ローヤルゼリー酸)が関わっているのではないかと考えられていたが、残念ながらこれを否定する実験データも存在し、はっきりしない。ちなみにヒドロキシデン酸は女王物質によく似た物質である。現在の所はローヤルゼリー中のタンパク質が分化の原因の最有力候補として考えられている。


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