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『蜂』シリーズ14 〜スズメバチを殺すミツバチ

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スズメバチと聞くと、人を刺して殺すといったような恐ろしい印象が強いが、ここでは逆にスズメバチが殺されてしまう、という話をする。

キイロスズメバチ(以下、スズメバチ)の働き蜂は、ニホンミツバチ(以下、ミツバチ)の巣を発見すると近くでホバリング(停止飛行)をしながら巣に帰って来るミツバチを捕らえる。そしてそれを肉団子状にして自分の巣に持って帰り、幼虫の餌とするのである。ところがミツバチの巣は中年ミツバチが見張りをしているので、スズメバチが近くで待機しているのを先に発見する事も有り得る。この時、ミツバチ達は信じられない行動に移る。

何と、ミツバチがスズメバチに襲い掛かるのである。攻撃力ではミツバチはスズメバチに絶対に敵わないのにである。しかもそれに気付いた他のミツバチ達も次々とスズメバチに向かって行く。そしてミツバチ達はスズメバチを中心とした球を描くように各々が位置し、蜂球を作るのである。これは僅か数秒で出来てしまい、スズメバチはあっという間に中に封じ込められてしまう。そしてミツバチ達が解散した後にはスズメバチの死体が落ちている事になる。

何故スズメバチは死んでしまったのだろうか? 普通に考えれば「スズメバチはミツバチに何回も刺されて死んだのでは?」となるだろうが、しかし事実はそうではない。

ミツバチの巣の中は常時36度でほぼ一定である。我々人間にとっては生きられなくは無いが、かなり暑いと感じる温度だ。つまりミツバチは人間よりもかなり熱に強いと言える。そして蜂球の中の温度は約46度にもなる事が判明している。蜂球を構成しているミツバチ達は自ら発熱している事になる。

この46度という温度は非常に絶妙な数値なのである。蜂は人間よりも熱に強いと言っても、それには当然限界が存在する。スズメバチもミツバチも活性化するのは共に39度という温度なのだが、スズメバチは44.5度で歩行不能、46度で行動停止に陥る。一方でミツバチは47.5度で歩行不能、50度で行動停止となる。つまり、46度という温度はスズメバチは行動不能となってしまうが、ミツバチは活性化するだけでデメリットの無い温度である、という事だ。こうしてミツバチは圧倒的攻撃力を持つスズメバチに対する対抗手段を有しているのである。

ちなみに蜂球を作れるのはニホンミツバチだけで、近年日本で急速に増加しているセイヨウミツバチには作れない。セイヨウミツバチが元来生息していたヨーロッパにはスズメバチのようなミツバチの外敵が存在しなく、蜂球のような防衛機能を進化させられなかったからである。外敵が居ないと進化できないというのは皮肉な話だ。


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