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“能力主義”&“転職志向”離れ

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最近の新入社員は“能力主義”から離れて来ている。

財団法人社会経済生産性本部の『第15回2004年度新入社員意識調査』によれば、日本の企業にも浸透して来ているアメリカ式の“能力主義賃金”が新入社員に敬遠され始めている事が判明した。

自分の能力に応じて給料が変化する“能力主義賃金”だが、依然として支持率は66.7%と高水準ではあるものの、これは2年前よりも6.6%低下しており、1997年以来最低の数値を記録している。一方で加齢と共に給料が上昇する“年功主義賃金”を望む新入社員の割合は1997年以降、過去最高だ。

日本では“能力主義”は益々浸透していくと思っていたので、これは意外な結果だった。せっかく賃金方式を変えた企業にとっては頭の痛い話かも知れないが、これは現実に即した結果だと思う。というのも、「能力や成果に応じて賃金を決定する」という方式は聞こえが良いものの、実は現状と比べて過半数の人間は損をするシステムだからである。

“能力主義賃金”でも“年功主義賃金”でも、全社員の賃金の平均が一定であると仮定しよう。そうなると前者の方式では偏差(給料の格差)が大きくなり、後者の方式では偏差が小さくなると考えられる。問題は“能力主義賃金”で偏差が大きくなる原因にある。

平均的なサラリーマンが年収500万程度だったとして、“能力主義賃金”によって実力の無いサラリーマンの給料がどれだけ下げられるかというと、これは物理的に言って500万までしか下げようが無い。現実的には100万とか200万下げるのが精々な筈だ。一方で実力の有るサラリーマンは年収が1000万を超える(平均よりも500万以上高い)事になるだろう。

つまり、“能力主義賃金”で偏差が大きくなるのは、給料が大幅に下がる人間が居るからではなく、給料が大幅に上がる人間が居るのが原因である、という事だ。これは数学的に言って、過半数の人間は(幅は小さいにせよ)給料が下がる事を意味する。つまり、大幅に給料が上がる人に対して平均的な人たちが少しずつ給料を負担している、という構図が出来上がってしまうのである。

新入社員の方々は、この現状を敏感に察知したのではないかと思う。以上より結論。

“能力主義”では過半数の社員が損をする。


最近の新入社員は“終身雇用”を望んでいる。

引き続き、財団法人社会経済生産性本部の『第15回2004年度新入社員意識調査』から。

「自分が馴染めない仕事を我慢して続けるのは無意味だ」と考える新入社員は1998年の51.2%をピークに年々減り続け、2004年には32.6%にまで低下した。「無意味だとは思わない」と考える新入社員は67.4%だ。現在では3人に2人以上が「仕事が自分に合っていなくても、やり続ける事に意味が有る」と考えている事になる。
また、「条件の良い会社が有れば、さっさと移る方が得だ」と考える新入社員も1999年の43.6%から、2004年は33.7%まで減っている。

以上の事から、ここ数年で「一度就職したら、基本的にはその職場に居続けたい」と考える新入社員が急増している事が分かる。最近は“転職志向”が強くなっていると言われていたので、これは意外な結果だろう。

先程、最近の新入社員は“能力主義”から離れて来ていると書いた。そして今日は“転職志向”からも遠ざかっている事が分かった。そして“年功主義賃金”や“終身雇用”といった旧来の日本的システムを支持している。これは何故だろうか?

思うに、“能力主義”や“転職志向”はある意味で公平だが、実際には一部の本当に実力の有る社員しか得をしないからではないか。だから多くの“普通の”社員は、わざわざ損をするシステムを肯定したくないのである。

“能力主義”も“転職志向”もアメリカで実践されて来た。そして日本では(特にマスコミが)アメリカ的システムを無差別に支持する傾向が強い。だからこれらは21世紀の日本の目指す雇用形態のように言われ続けて来たが、実は日本人には貧富の格差を拡大するようなアメリカ的システムは合っていないのではないかと思う。

以上より結論。

日本の新入社員は早くも“能力主義”や“転職志向”というアメリカ式雇用形態を否定し始めている。


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