日本はコンドーム大国である。
日本で最もオーソドックスな避妊方法は、男性のコンドーム着用である。1998年の毎日新聞社の調査では、避妊を望む日本人カップルの内、78%がコンドームを着用している事が判明した。
避妊具の代表的な存在であるコンドームは、日本では1950年代からオカモト株式会社により製造され始めた。厚生労働省の「薬事工業生産動態統計調査表」によれば、平成9年の時点では、国内で7つのメーカーが、年間12億4000万個のコンドームを出荷している。世界全体のコンドーム出荷数は約58億個なので、日本は世界のコンドーム市場の20%以上のシェアを占めている事になる。(国外では、世界シェアの26%を占めているイギリスのDurex社が有名。)
日本のコンドーム国内総出荷量12億4000万個の内、国内消費量は5億8000万個である。これは凄い数値だ。世界のコンドーム消費量は、1位が中国の11億5000万個、2位がインドの9億個で、3位が日本なのである。日本の2倍程度の人口を抱えるアメリカでさえ、コンドームの年間消費量は4億個に過ぎない。
そして日本は、残りの6億6000万個のコンドームを輸出している。日本製コンドームの約半数は、海外で使用されているのである。つまり、日本はコンドーム輸出大国であると言えるだろう。
日本は世界第3位のコンドーム消費国であると同時に、コンドーム輸出大国である。これは日本のコンドームの優秀性を示していると言える。
実は、日本のコンドームが優秀なのには理由がある。
先程も書いたが、コンドームは日本で最もオーソドックスな避妊方法だった。これは、この数十年間、変わっていない。従って、コンドームには様々な改良が為されて来た。丈夫さを保ちつつ、違和感無くセックスを楽しめる為の工夫が続けられて来たのである。結果として日本では、薄く、互いの体温を伝え易いコンドームが開発されていった。
ところが欧米では、避妊に対しては以前からピルを使用して来た。欧米に於いては、コンドームは性感染症を予防するだけの役割しか担って来なかったのである。その結果、コンドームを薄くすると使用者の不安を増大させてしまう事になり、欧米のコンドームメーカーは日本のように、コンドームを薄くする技術を重視してこなかったのである。
男性にとっては、コンドームの厚さは重要な問題だ。早漏で悩む男性でない限り、コンドームは同じ丈夫さならば、絶対に薄い方が良い。
以上より結論。
日本はコンドーム大国である。日本のコンドームは優秀だ。
避妊には、ピルとコンドームを併用すると、実に効果的である。
避妊を望む日本人の78%は、避妊手段としてコンドームを使用しているが、コンドームによる避妊は完璧ではない。「コンドームだけでは危険である」というのは有名な話だが、では、どのくらい危険なのだろうか?
一年を通じて、ある特定の避妊法を行っていたにも関わらず妊娠してしまう確率を、“失敗率”と言う。各避妊法の危険性は、この失敗率を用いて比較するのが一般的だ。この数値が高ければ高いほど、「それは妊娠してしまい易い避妊法である」と言える訳だ。
コンドームの失敗率は3%〜14%と言われている。随分幅の大きな数値だが、これは付け方の問題で、正しくコンドームを装着すれば3%、正しく装着しないと14%、という事である。
コンドームに関しては、誤解も多い。例えば、コンドームが破れる危険性を考慮して、(或いは早漏を気にして、)コンドームを二重に装着する男性がいるが、これは反って逆効果で、内側と外側のコンドームが擦れる事により、破ける可能性が増してしまう。実はこのように、正しくコンドームを装着出来ていない男性は、非常に多いので、注意が必要だ。
さて、コンドームの失敗率は3%〜14%である。これは極めて危険な数値であると言わねばならない。男性のコンドームの付け方が下手だったら、7年に1回の割合で、相手の女性は妊娠をしてしまう。
他の避妊方法として有名なのは経口避妊薬(低用量ピル)だが、ピルの失敗率は0.1%〜5%である。この数値も幅が大きいが、正しくピルを服用すれば失敗率は0.1%という事だから、1000年セックスをし続けて、ようやく1回妊娠する確率である。コンドームと比べると雲泥の差だ。しかしピルも正しく服用しないと、失敗率は5%まで跳ね上がってしまい、コンドームと同程度の失敗率になってしまうので、要注意である。
ところで、しばしば「避妊にはピルとコンドームを併用すると効果的」と言われるが、これは確かである。例えば、コンドームの装着が下手な男性と、たまにピルを服用するのを忘れてしまうドジな女性という、避妊に関しては最悪な組み合わせのカップルが、日常的に性交渉を持った時の失敗率は、0.14×0.05×100=0.7%で、男性がコンドームをキチンと装着した場合の失敗率3%を、大きく下回る。
以上より結論。
避妊には、ピルとコンドームを併用すると効果的である。避妊を望んでいながらも、コンドームの装着が下手な男性や、ピルの服用を忘れがちな女性に、特にオススメする。
読者の方から、「女性は1年に10〜12回程度排卵をし、その受精チャンスに一度でも当たれば妊娠するのだから、失敗率0.1%というのは、1000年に1度ではなく、100年に1度ではないか?」という指摘が有った。
結論から言うと、「1000年に1度」で合っている。“失敗率”というのは、あくまでも1年間という期間内での妊娠率の事なので、その間に女性が複数回の排卵を行う事は、折り込み済みなのである。
この辺りの書き方は不明瞭だったので、勘違いをされた方が、他にもいたかも知れない。申し訳無い。
また、女性の排卵の回数や、そもそもセックス自体の頻度によって、失敗率は大きく変わってくる。だから上記の失敗率はあくまでも「平均的な場合」と思って欲しい。
そう言えば、正しくコンドームを装着出来ていない男性は、非常に多いと書いたが、僕は高校2年生の時に「いざという時に、ちゃんと付けられるだろうか?」と(彼女も居なかったのに)心配になり、深夜のコンビニでコンドームをこっそりと購入し、自宅で密かにコンドームを付ける練習をしていたという、懐かしい思い出が有る。あれは簡単そうに見えて、なかなか難しいものだと思う。付ける時のコツとか、未だに分からない。サイズが合ってないからだろうか? 僕のは平均な筈なのだが。
日本で生まれた子供の半数は、“できちゃった”子供である。
昨日、避妊には、ピルとコンドームを併用すると効果的であると書いたが、日本では低容量ピルが中央薬事審議会に認可されたのは、1999年6月になってからの事である。そして昨年、2003年の時点でのピルの国内服用者数は、20万人程度と言われている。
これは避妊を望む女性数の2%にも満たない数値だ。他国を見ると、避妊を望む女性に於けるピル使用率は、アメリカが27%、フランスが36%、オランダが60%、イギリスが72%となっている。
ピルメーカーは当初、日本国内で200万人程度が、ピルを服用するようになると予想していたらしい。昨年の服用者数が20万人なのだから、完全にアテが外れた格好だ。何しろ桁が一つ違う。日本では、まだまだピルは浸透していない。
また日本では、定期禁欲法(基礎体温法)や性交中絶法(膣外射精)という、本来は“避妊法”とは言えないような避妊法を行っているカップルも多い。このように極めて失敗率の高い避妊法を行っているカップルは、フランスやアメリカでは5%前後なのに対し、1998年の毎日新聞社の調査によれば、日本では20%を超えているのが現状だ。
日本では失敗率の高い避妊法を行っている避妊希望者が多いのである。
結果として、日本では両親に意図されずに生まれて来た子供が多い。(望まれないで生まれた子供、という意味ではない。あくまでも妊娠を意図しなかっただけ。)
1995年に日本・アメリカ・フランスの3ヶ国で行われた、妊娠した女性を対象にした調査では、「自らの出産は望んだ結果である」(“子作り”をして出来た)と答えた妊娠女性は、フランスが66%、アメリカは43%、日本は36%だった。そして逆に、「自らの出産は意図しない結果である」(避妊に失敗して“できちゃった”)と答えた妊娠女性は、フランスが12%、アメリカは19%、日本は36%だった。
以上を簡単な表にすると、こうなる。
× |
フランス |
アメリカ |
日本 |
子作りの結果で子供が出来た |
66% |
43% |
36% |
避妊に失敗して子供が出来た |
12% |
19% |
36% |
なんと
日本では、“子作り”の結果である子供の数と、“できちゃった”子供の数とが同数なのである。“できちゃった婚”は既に市民権を得た印象が有るが、この状態は少なくとも他国と比較すれば、「異常である」と言わざるを得まい。
以上より結論。
日本で生まれた子供の半数は、避妊に失敗して“できちゃった”子供である。失敗率の高い避妊法を行っている避妊希望者が多い事が問題だ。
現在の日本では、4組に1組以上の夫婦が“できちゃった結婚”である。
厚生労働省の『「出生に関する統計」の概況(人口動態統計特殊報告)』によれば、
カップルが結婚してから第1子(長男、或いは長女)を出産するまでの平均期間は、長くなり続けている。昭和50年には結婚してから平均1.55年で第1子が生まれていたが、平成12年には平均1.89年になった。夫婦が第1子を出産するのが4ヶ月ほど遅くなった訳だ。これは第2子や第3子でも、同様の傾向が見られる。
ところが、より詳しいデータを見ると、面白い現象が起きている。下の
『第1子出生までの結婚期間別にみた出生構成割合』のグラフを見て欲しい。
これによれば、
第1子を出産するピークというのは、2つ有る事が分かる。結婚してから6ヶ月後と、10ヶ月後だ。この2つは「第1子を出産するモデルケース」と言う事が出来るだろう。
ところが、
以前は第1子を出産するピークは結婚してから10ヶ月後だったが、現在ではピークが6ヶ月の方に移っている。第1子を出産するまでの平均期間は長くなっているのに、ピークは逆に早まっているのである。
「結婚してから10ヶ月後に第1子を出産する」のは、容易に原因が想像できる。だからまぁ、敢えてここで書く必要は無いだろう。「結婚してから6ヶ月後に第1子を出産する」のは、妊娠が発覚するのが3ヶ月目くらいだから、そこから慌てて……と考えると計算が合う。典型的な“できちゃった結婚”だ。
以上から言えるのは、
現在の日本では“できちゃった結婚”が激増している、という事だ。まぁこれは、周知の事実だろう。
ここで
“できちゃった結婚”を、「結婚期間が妊娠期間より短い状態で出産した夫婦の結婚」と定義すると、“できちゃった結婚”の比率を算出する事が出来る。やはり厚生労働省の『「出生に関する統計」の概況(人口動態統計特殊報告)』によれば、昭和55年には12.6%だった“できちゃった結婚”率が、平成12年には26.3%にまで跳ね上がっている。
“できちゃった結婚”率は、この20年で倍増した事になる。
特に最近では“できちゃった結婚”率の増加傾向が強く、平成9年から平成12年までの3年間で3.7%も増加している。このペースだと、平成15年(昨年)の“できちゃった結婚”率は、30.0%にもなる。
もしかしたら“できちゃった結婚”が過半数を占める日も近いかも知れない。
以上より結論。
現在の日本では、第1子を出産するまでの平均期間は長くなっているにも関わらず、“できちゃった結婚”は増加している。これは、「出産の二極化」が進んでいる事を意味する。
中絶率と“できちゃった”率(避妊の失敗率)とは関係が無い。
あらかじめ言っておくが、僕は中絶に対して否定的な感情は持っていない。ちゃんとした避妊もせずに中絶をするのは如何なものかと思うが、止むを得ない事情で中絶をした女性も多い筈である。だから
このコラムは絶対に中絶批判ではない。
厚生省の『母体保護・人口動態統計』(1998年)によれば、日本では妊娠した女性の22%が中絶を行っている。年間34万件程度の中絶が行われているのである。
中絶というと、避妊に失敗したカップルが仕方なく行う、というイメージが強い。そうなると中絶は、「ちゃんと避妊しなかったんだろ」という冷たい視線を向けられる事になる。ところが
中絶と、避妊の失敗である“できちゃった”率とは、相関関係が無い。
上で既に、
現在の日本では、4組に1組以上の夫婦が“できちゃった結婚”であるや、
日本で生まれた子供の半数は、“できちゃった”子供であると書いた。間違いなく日本では“できちゃった”率が上昇を続けている。
ところが中絶は寧ろ減少傾向に有る。1998年の中絶率は22%で中絶件数は34万件だが、1990年には中絶率が27%で中絶件数は46万件だった。
日本では“できちゃった”率は上昇しているのに、中絶率・中絶件数は共に減少しているのである。
この原因の一つには“できちゃった”に対する世論が変化した事が考えられる。以前は未婚女性が妊娠するという事は、あってはいけない事とされて来たが、何年か前に、歌手の安室奈美恵が“できちゃった結婚”をしてから、かなり世論が変わったと思う。
ところが原因はそれだけではない。上で用いた、以下の表をもう一度見て欲しい。
× |
フランス |
アメリカ |
日本 |
子作りの結果で子供が出来た |
66% |
43% |
36% |
避妊に失敗して子供が出来た |
12% |
19% |
36% |
これによれば、日本の“できちゃった”率は50%にもなるが、それがフランスでは15%、アメリカでは31%に過ぎない。両外国間の差も大きいが、それ以上に日本との差は大きい。
日本の“できちゃった”率は、先進国の中では群を抜いている。
ところが中絶率となると話は変わる。フランスの中絶率は19%、アメリカの中絶率は29%にもなる。日本の中絶率である22%という数値は、決して高くないのである。
中絶というのは宗教的価値観などの問題も絡み、一概には言えない部分も多い。が、敢えて言ってみよう。中絶率と“できちゃった”率とは関係が無い。(そもそも宗教を考えるなら、宗教的束縛の小さい日本は、諸外国よりも中絶率が高くなる傾向が有る筈。)
以上より結論。
中絶率と“できちゃった”率とは関係が無い。