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信号機の“系統制御”

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自動車が普及した社会に於いては、信号機は欠かせない存在である。交通事故での死亡者数は年々減少して来ている(関連リンク参照)が、これはエアバックなど自動車自体の安全性が向上した為で、交通事故件数そのものは未だに増加傾向である。しかし信号機というシステムが無かったら、交通事故は現在の数十倍、数百倍にも膨れ上がっていたに違いない。

関連リンク:「交通事故の死者数の推移」

信号機の中には“押しボタン式”というのが存在する。歩行者がボタンを押すと歩行者側の信号が青になる信号機だ。たまにボタンに気付かなくて、5分くらい立ち往生したりする。また、“夜間のみ押しボタン式”の信号機も存在する。

平成13年の時点で、日本には約18万基の信号機が存在した。信号機は短期間で増減する物ではないから、現在も同程度だろう。個人的には数百万基くらい有るんじゃないかと思っていたので、割と意外だった。この錯覚は恐らく東京に住んでいる所為だろう。東京は地方よりも、明らかに信号機が多い。

さて、その18万基の信号機の内、約2万6千基が押しボタン式信号機である。全体の約15%。結構、多い。ただ、この押しボタン式信号機には、以前から疑問が有った。

これは僕の経験的な話だが、押しボタン式信号機の中には、「ボタンを押すとすぐに青に変わる」、「ボタンを押して一定時間が経過してから青に変わる」、「通常はすぐに青に変わるが、赤になってからすぐにボタンを押した場合にのみ、一定時間が経過してから青に変わる」という3つの種類が存在するような気がするのだ。

如何にも全国共通な基準が有りそうに思えるのだが、経験的にはそうなっていない。押しボタン式信号機は利便性に優れたシステムだと思うのだが、青に変わるまでの基準がマチマチでは、歩行者が勘違いしてしまうケースが想定されるのではないだろうか? それは非常に宜しくない事態だと思う。

――という事で、押しボタン式信号機について調べてみた。

『財団法人 日本交通管理技術教会』に拠れば、一般的な押しボタン式信号機は、ボタンを押せば直後に信号が青になるようになっているそうだ。しかしこれには例外も有り、その一つが“系統制御”が行われている路線の信号機だという。

信号機は3つの役割を担っている。1つ目は、当然だが交通事故の防止。2つ目は、自動車の流れをスムーズにする事。3つ目は、なるべく自動車の停止回数を減らす事だ。3つ目は「何故?」と思う人も居るかも知れないが、自動車の停止回数を減らす事で排気ガスや騒音などの公害を減せる、という訳だ。

この2つ目と3つ目の役割を果たす為、信号機には様々な細工が施されている。例えば十字路交差点では、自動車の交通量が多い通りと少ない通りが交差している場合、信号機が青になっている時間を敢えて変化させている。例えば交通量が多い通りの信号機は60秒間も青になるが、交通量が少ない通りは40秒間しか青にならない、などの調整を行っている。このような時間配分を“スプリット”と呼ぶ。

また大通りの場合は、隣接する信号機が青になる時間を、その信号機間の距離に合わせてズレを持たせている。こうする事で、そこを走る自動車が通過する信号機が次々と青になり、スムーズに進めるようになる訳だ。このような仕組みを“オフセット”と呼ぶ。

以上のような“スプリット”や“オフセット”というシステムは、信号機が導入された当初は全く行われていなかった。信号機は予め決められたサイクルで、青→黄→赤→……と変わるだけだったのである。が、現在では信号機にコンピュータを内蔵させ、さらにそのコンピュータを隣接する信号機と接続する事によって、時間や交通状態に応じて“スプリット”や“オフセット”を変更出来るようになった。これが“系統制御”である。

現在では都市部を中心に、“車両感知器”を要所要所に散りばめる事によって、多くの信号機を状況に合わせてコンピュータで制御している。この“系統制御”の為に、「押しボタン式信号機」のボタンを押したからと言って、すぐには信号を青には出来なくなったのである。その1つの信号機は、他の多くの信号機に影響を与えているからだ。

以上より結論。

信号機はコンピュータにより、複雑な“系統制御”をされている。この為に「押しボタン式信号機」のボタンを押しても、すぐに青にならない事が有る。


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