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綾辻行人

HOBBY MAIN

タイトル 出版社 初版日 勝手な採点 通販
十角館の殺人 講談社文庫 1991年09月15日 ★★★☆ 購入
水車館の殺人 1992年03月15日 ★★★★ 購入
迷路館の殺人 1992年09月15日 ★★★★ 購入
人形館の殺人 1993年05月15日 ★★★☆ 購入
時計館の殺人 1995年06月15日 ★★★★☆ 購入
黒猫館の殺人 1996年06月15日 ★★★★ 購入
暗黒館の殺人(上) 講談社 2004年09月05日 ★★★★☆ 購入
暗黒館の殺人(下) 購入
びっくり館の殺人       購入
殺人方程式 切断された死体の問題 光文社文庫 1994年02月20日 ★★★ 購入
殺人方程式U 鳴風荘事件 1999年03月20日 ★★★ 購入
殺人鬼 新潮文庫 1996年02月01日 ★★★☆ 購入
殺人鬼U 逆襲篇 1997年02月01日 ★★☆ 購入
緋色の囁き 講談社文庫 1997年11月15日 ★★★☆ 購入
暗闇の囁き 1998年06月15日 ★★★ 購入
黄昏の囁き 2001年05月15日 ★★★☆ 購入
眼球綺譚 集英社文庫 1999年09月25日 ★★★☆ 購入
フリークス 光文社文庫 2000年03月20日 ★★★☆ 購入
霧越邸殺人事件 祥伝社 2002年06月20日 ★★★★ 購入
どんどん橋、落ちた 講談社文庫 2002年10月15日 ★★★☆ 購入
最後の記憶       購入

十角館の殺人

一言

誰にでも勧められるミステリーの良著。

目次

プロローグ
第一章 一日目・島
第二章 一日目・本土
第三章 二日目・島
第四章 二日目・本土
第五章 三日目・島
第六章 三日目・本土
第七章 四日目・島
第八章 四日目・本土
第九章 五日目
第十章 六日目
第十一章 七日目
第十二章 八日目
エピローグ

梗概

半年前、凄惨な四重殺人の起きた九州の孤島に、大学ミステリ研究会の七人が訪れる。島に建つ奇妙な建物「十角館」で彼らを待ち受けていた、恐るべき連続殺人の罠。生き残るのは誰か? 殺人は誰なのか?
鮮烈なトリックとどんでん返しで推理ファンを唸らせた新鋭のデビュー作品。
   ――裏表紙より

感想

構成・トリック・ストーリーの全てが平均より少しずつ上、といった印象の作品。様々な推理が数多く披露されるので、それを読むだけでも面白い。
少々偏った推理小説ファン向けに書かれた傾向も無くは無いが、良い意味でバランスが取れている。僕はこの作品で初めて推理小説を読んだが、ミステリーの入門書としての役割も担えるのではないだろうか。


水車館の殺人

一言

巧妙な殺人トリックなど無くても面白い本格ミステリは書けるんだ、という見本のような作品。

目次

プロローグ (一九八五年 九月二十九日 午前五時五十分)
第一章 現在(一九八六年 九月二十八日)
第二章 過去(一九八五年 九月二十八日)
第三章 現在(一九八六年 九月二十八日)
第四章 過去(一九八五年 九月二十八日)
第五章 現在(一九八六年 九月二十八日)
第六章 過去(一九八五年 九月二十八日)
第七章 現在(一九八六年 九月二十八日)
第八章 過去(一九八五年 九月二十八日)
第九章 現在(一九八六年 九月二十八日)
第十章 過去(一九八五年 九月二十八日〜二十九日)
第十一章 現在(一九八六年 九月二十八日)
第十二章 過去(一九八五年 九月二十九日)
第十三章 現在(一九八六年 九月二十九日)
インターローグ
第十四章 現在(一九八六年 九月二十九日)

梗概

古城を思わせる異形の建物「水車館」の主人は、過去の事故で顔面を傷つけ、常に仮面をかぶる。そして妻は幽閉同然の美少女。ここにうさんくさい客たちが集まった時点から、惨劇の幕が開く!
密室から男が消失したことと、一年前の奇怪な殺人とは、どう関連するか?
驚異の仕掛けをひそませた野心作。
   ――裏表紙より

感想

過去の殺人事件と現在の殺人事件を繋げる手法が効いている。また、作中のトリック自体は大したものではないが、そこから浮かび上がる真相は充分に衝撃的。
個人的には藤沼由里絵の本性には、がっかりさせられたが……それは男のエゴというものか。


迷路館の殺人

一言

構成は秀逸。しかし不満点は少なくない。

目次

<プロローグ>
プロローグ
第一章 迷路館への招待
第二章 競作・迷路館の殺人
第三章 その夜
第四章 第一の作品
第五章 首切りの論理
第六章 第二の作品
第七章 第三の作品
第八章 第四の作品
第九章 ディスカッション
第十章 開かれた扉
第十一章 アリアドネの糸玉
エピローグ
あとがき
<エピローグ>

梗概

奇怪な迷路の館に集合した四人の作家が、館を舞台にした推理小説の競作を始めたとたん、惨劇が現実に起きた!
完全な密室と化した地下の館で発生する連続殺人の不可解さと恐怖。逆転また逆転のスリルを味わった末に読者が到達する驚愕の結末は? 気鋭が異色の構成で挑む野心的な長編本格ミステリー。
   ――裏表紙より

感想

全体的な構成は素晴らしい出来映えだ。作中作という構図を多重に使用する事で、さらに効果を増している。
一方で推理モノに必須とも言えるサスペンスが殆ど無いのは残念だった。殺される人間が目次を見ただけで分かってしまうからだろう。推理過程も少々強引さが感じられる部分が有った。
最後の「<エピローグ>」は前作『水車館の殺人』で作者が悔やんでいた或る事の解消だろうか。


人形館の殺人

一言

“歪さ”を内包した『館』シリーズ異色作。

目次

プロローグ 島田潔からの手紙
第一章 七月
第二章 八月
第三章 九月
第四章 十月
第五章 十一月
第六章 十二月
第七章 一月(1)
第八章 一月(2)
第九章 一月(3)
第十章 二月
エピローグ 島田潔からの手紙

梗概

亡父が残した京都の邸「人形館」に飛龍想一が移り住んだその時から、驚倒のドラマが開始した! 邸には父の遺産というべき妖しい人形たちが陣取り、近所では通り魔殺人が続発する。やがて想一自身にも姿なき殺人者がしのび寄る!
名探偵島田潔と謎の建築家中村青司との組合せが生む館シリーズ最大の戦慄。
   ――裏表紙より

感想

初見の際は「何だかスッキリとしないストーリーだなぁ」と感じていたのだが、再読してみて面白さが認識できた。これは紛れも無く綾辻行人の『館』シリーズであり、その独特の面白さは少しも失っていない。
では何故、初見では評価が低かったのかというと、これはもう読めば一目瞭然である。探偵役の島田潔の不在、曖昧な現実感、“推理小説”としての決定的な欠落……様々なハンデを負いながら、しかし作者が「すごく愛着がある」作品だというのも頷ける。
そもそも作中に出て来る人形館からして歪な形をしている本作品が持つ、もう一つの歪さ――それを許容できるか否かで、この作品の評価が大きく分かれるだろう。


時計館の殺人

一言

ミステリーの一つの頂点。

目次

プロローグ
第一章 針のない時計塔
第二章 遅れて来た二人
第三章 ≪旧館≫その1
第四章 死者の鎖
第五章 ≪旧館≫その2
第六章 遺された言葉
第七章 ≪旧館≫その3
第八章 十六歳の花嫁
第九章 ≪旧館≫その4
第十章 沈黙の女神
第十一章 ≪旧館≫その5
第十二章 四人の子供たち
第十三章 ≪旧館≫その6
第十四章 不眠の功罪
第十五章 悪夢の果て
第十六章 女神の歌声
エピローグ

梗概

館を埋める百八個の時計コレクション。鎌倉の森の暗がりに建つその時計館で十年前一人の少女が死んだ。館に関わる人々に次々起こる自殺、事故、病死。死者の想いが籠る時計館を訪れた九人の男女に無差別殺人の恐怖が襲う。凄惨な光景ののちに明かされるめくるめく真相とは? 第45回日本推理作家協会賞受賞。   ――裏表紙より

感想

文庫にしては分厚いな、と思わせるが、それもその筈。今作は600頁を超える大作である。
その分量に相応しい、いや、それ以上の内容を伴ったミステリーである。『館』シリーズとしては、最も通常のミステリーに近い雰囲気を持っているかも知れない。
二元中継のように進められるストーリーに、緻密なトリック、そして物語の真相――どれを取っても一級品である事に間違いは無い。前半で作中最大のトリックに関するヒントが与えられ過ぎている気がしなくもないが、そんな欠点など吹き飛ばしてしまう位の勢いが、この作品には込められている。
『館』シリーズの最高峰だけでなく、奇を衒わないミステリーとしての最高峰まで上り詰めてしまったのではないか――そういう印象を抱かせるに足る作品である。唯一、結末だけは少し不満が無かった訳ではないが……。


黒猫館の殺人

一言

今まで以上にキレの有る結末。

目次

プロローグ
第一章 鮎田冬馬の手記 その1
第二章 一九九〇年六月 東京
第三章 鮎田冬馬の手記 その2
第四章 一九九〇年六月 東京〜横浜
第五章 鮎田冬馬の手記 その3
第六章 一九九〇年七月 札幌〜釧路
第七章 鮎田冬馬の手記 その4
第八章 一九九〇年七月 阿寒
エピローグ

梗概

6つめの「館」への御招待――自分が何者なのか調べてほしい。推理作家鹿谷門実に会いたいと手紙を送ってきた老人はそう訴えた。手がかりとして渡された「手記」には彼が遭遇した奇怪な殺人事件が綴られていた。しかも事件が起きたその屋敷とはあの建築家中村青司の手になるものだった。惨劇に潜む真相は。   ――裏表紙より

感想

『迷路館の殺人』以来の作中作的な構成。しかし無論、内容は大きく異なる。
前作『時計館の殺人』と比べるとボリューム的には見劣りするが、相変わらず作者が読者に投げ掛けるトリックは巧い。読み終わった後では「これは少々、序盤でヒントを与え過ぎではないか?」と思ったが、実際に読んでいる最中には全く気付かなかったのだがら、やはりこれで良かったのだろう。
殺人トリックはコジツケも良い所だが、この作者が目指すのは、そういう分野には無いのがハッキリ分かるし、それに何より“推理小説”としての体を為していないのに、“推理小説”として読み始めても不満感が残らないのが素晴らしい。


暗黒館の殺人

一言

紛れも無い大作。しかし構成に気取られ過ぎた感は拭えず。

目次

前口上
第一部
第一章 蒼白の霧
第二章 誘いの囁き
第二部
第三章 墜落の影
第四章 空白の時間
第五章 誹の祝祭
間奏曲一
第六章 異形の寸劇
第七章 惑いの檻
間奏曲二
第八章 兆しの色
第九章 午後の無惨
第十章 迷宮の調べ
第十一章 闇の宴
間奏曲三
第三部
第十二章 混沌の朝
第十三章 疑惑の扉
第十四章 無音の鍵盤
第十五章 無意味の意味
間奏曲四
第十六章 宵闇の迷走
第四部
第十七章 追憶の炎
第十八章 暴虐の残像
第十九章 抜け穴の問題
第五部
第二十章 消失の夜
第二十一章 妄執の系譜
第二十二章 暗黒の眷属
間奏曲五
第二十三章 無明の夜明け
第二十四章 分裂の明暗
第二十五章 真昼の明暗
第二十六章 欠落の焦点
間奏曲六
第二十七章 暴走の構図
第六部
第二十八章 封印の十字架
蛇足

梗概

九州の山深く、外界から隔絶された湖の小島に建つ異形の館――暗黒館。光沢のない黒一色に塗られたこの浦登家の屋敷を、当主の息子・玄児に招かれて訪れた学生・中也は、<ダリアの日>の奇妙な宴に参加する。その席上、怪しげな料理を饗された中也の身には何が? 続発する殺人事件の“無意味の意味”とは……?
シリーズ最大・最深・最驚の「館」、ここに落成!
   ――上巻裏表紙より

十八年前に暗黒館で起こった殺人と不可思議な人間消失の謎を追ううち、遂に玄児の口から語られる<ダリアの宴>の真実、そして恐るべき浦登家の秘密……。いつ果てるとも知れぬ嵐の中、犯人の狂気はさらなる犠牲者を求め、物語は哀しくも凄絶な破局へと突き進む!
構想から完成まで、八年の歳月を費した比類なき巨大構築。ミステリ作家・綾辻行人の全てがここに結実!
   ――下巻裏表紙より

感想

とてつもなく長いミステリー。原稿用紙2500枚分という事なので、通常の文庫7冊分くらいになるのか。
ここまで長大になってしまったのには勿論、理由が有る。この『暗黒館の殺人』は、今までの『館』シリーズの集大成でもあり、全ての『館』に通じる原点でもある――そういう作品なのだ。至る所に散りばめられた他の『館』との接点の数々は、正に綾辻行人という作家の全てが詰め込まれていると言っても過言ではない。
そしてこれは作中でも示されている事だが、読み進めて行くに従って自然と発生する違和感――「何となくおかしい」という感覚。そして、その感覚が次第に強まって行く奇妙な不可思議さ。作者が求めたのは、そういう処だったのだろう。
だから敢えて断言するが、『暗黒館の殺人』はミステリーではない。例えば殺人事件にしても、最初から殺害方法は分かっていて、後は犯人が誰なのかを残すばかりなのだが、その辺りの真相に至るまでの過程は、少々アンフェアだ。寧ろ途中の“間違った推理”の方が説得力が有ったりする。
つまり、この作品の魅力はそんな部分に有る訳ではない。これはもう読んでみないと何とも説明のしようが無い。強いてアドバイスをするとすれば、「必ずページ順に読む事」とでも言おうか。特に決して先に「蛇足」を読んではならない。それだけを守れば、“何かに取り憑かれたような感覚”に陥る事は、間違い無いだろう。


びっくり館の殺人

一言

目次

梗概

   ――

感想


殺人方程式 切断された死体の問題

一言

犯罪者達の群像劇的な展開は見事。しかし伏線の回収には、やや強引さが見られる。

目次

プロローグ(1) ――ある犯罪の光景――
プロローグ(2) ――新聞記事――
プロローグ(3) ――犯罪計画――
T 事件を演出する七つの場面
明日香井叶のノートより(1)
U 刑事たちによる事件の捜査
明日香井叶のノートより(2)
V 明日香井家における事件の再検討
明日香井叶のノートより(3)
W 偽刑事たちによる事件の再捜査
明日香井叶のノートより(4)
X 明日香井家における事件の「不可能性」の検討
明日香井叶のノートより(5)
Y 罠、そして事件の終局
エピローグ(1) ――電話――
エピローグ(2) ――回想――

梗概

首が、ない!? ――警視庁刑事・明日香井叶は絶句した。
教団ビルで“お篭もり”の儀式中だった「御玉神照命会」教主・貴伝名剛三が、なぜか別の建物の屋上で死んでいたのだ。しかも、頭部と左腕を切断されて! なぜ犯人は死体を切断したのか? 叶の双子の兄・響が怪事件の謎に挑む。
読者を必ずや驚倒させる極上の本格推理、待望の文庫化!
   ――裏表紙より

感想

綾辻行人では珍しく登場人物が多い作品。犯人の異なる複数の犯罪が結び付いているから、それが必然か。
物語は序盤の描き方が秀逸。『館』シリーズのような作品を通じた巨大なトリックは無いものの、適度に読者を引き込む。
主人公兄弟と、その妻の人間像には疑問を抱いてしまうが、それはまぁ許容範囲。結末は作者独特の後味の悪さが残る。スッキリと終わらせた方が、印象は良かったかも知れない。


殺人方程式U 鳴風荘事件

一言

「読者への挑戦」で、ミステリとしてはやや簡単に。

目次

プロローグ
T 月蝕の夜、二人は出会った
DATA(1)
U 十年前の約束が語られる
DATA(2)
V 双子は入れ替わるものである
DATA(3)
W 旧友たちと再会する
DATA(4)
X 鳴風荘に到着する
DATA(5)
Y 鳴風荘の夜は更ける
インターローグ
Z またしても死体の髪が切られている
DATA(6)
[ 本物の刑事たちが登場する
DATA(7)
\ 問題点が検討される
DATA(8)
] 密室と呼ぶには屋根がない
DATA(9)
ではここで、謹んで読者の注意を喚起する
]T 犯人が指摘される
]U 時を遡る
エピローグ

梗概

六年半前の月蝕の夜、美島夕海の姉・紗月が惨殺された!
――夫の明日香井叶ではなく、双子の兄・響を伴い、鳴風荘を訪れた深雪。再会した友人たちの中には、死んだ姉そっくりに変貌した夕海の姿が……。その夜、再び不可解な殺人事件が勃発する! 犯人は何故、死体の髪を切って持ち去ったのか!?
著者が初めて「読者への挑戦」を付した長編本格推理の傑作!
   ――裏表紙より

感想

この作者にしては分量が多く、なかなか読み応えが有る作品。複数の地点を行き来する展開も珍しい。
ミステリとしては、初めて「読者への挑戦」を付したという事で少々ヒントを与え過ぎた、という印象が拭えない。その為、独特のアッと驚く真相というものが無かった。また謎解きの部分はやや回りくどく、少し冗長な感じがした。事件自体も偶発的な事象に頼っている部分が大きく、何となく作者の作為が感じられてしまったのは残念。
それでも前作で感じた人物像の違和感は少なくなったように思う。単に慣れただけかも知れないが。


殺人鬼

一言

過激過ぎる残虐シーンには注意が必要。

目次

はしがき
第1部
インターローグ1 ――侵入――
第2部
インターローグ2 ――隔離――
第3部
インターローグ3 ――狂気――
第4部
インターローグ4 ――解放――
第5部 A&B
蛇足

梗概

夏季合宿のため双葉山を訪れた親睦団体<TCメンバーズ>の一行。人里離れた山中での楽しいサマーキャンプは、突如出現した殺人鬼によって、阿鼻叫喚の地獄と化した。次々と殺されていく仲間たち……手足が切断され、眼球が抉りだされ、生首は宙に舞う! 血濡れの殺戮はいつまで続くのか? 殺人鬼の正体は? 驚愕の大トリックが仕掛けられた、史上初の新本格スプラッタ・ホラー。   ――裏表紙より

感想

綾辻行人はミステリーにホラー風味を付ける事が多いが、今回はホラー色が前面に出したミステリー。かなり表現が過激なので、読む場合はそれなりの覚悟が必要だろう。
しかし物語の結末は、如何にもこの作者らしい着地をしている。それはミステリー作家としての意地とでも言おうか。これが有ったからこそ、残虐シーンの数々に耐えるだけの価値が有るストーリーになっている。


殺人鬼U 逆襲篇

一言

より過激さがパワーアップした第2弾。

目次

「双葉山の殺人鬼」に関する覚書
第1章 遭遇
第2章 目撃
第3章 覚醒
第4章 始動
第5章 進行
第6章 襲撃
第7章 感応
第8章 対決
蛇足

梗概

あいつはやはり生きていた! 双葉山中に潜むあの殺人鬼が、麓の街に姿を現わしたのだ。凄惨きわまりない殺戮の狂宴が、いま再び始まる。
他人の“目”になる不思議な能力を持った少年・真実哉との対決の行方は? そして明かされる、驚くべきその正体とは……。ミステリー界に一大衝撃をもたらした、新本格スプラッタ・ホラーの第二弾! あなたはこの恐怖に耐えられるか?
   ――裏表紙より

感想

前作『殺人鬼』を遥かに超える残虐シーンたっぷりの第2作。表現も過激さを増しており、そのようなシーンは流し読みするくらいでないと、なかなか耐えられない。
今作でもミステリー的趣向を凝らしてはいるが、しかし前作ほどの衝撃は無い。ただただ「スプラッタホラー」という側面を強化しただけのようにも見える。読者を選ぶ作品である事は間違い無いだろう。


緋色の囁き

一言

ホラーと推理の中道を行く。

目次

第1章 魔女の学園
第2章 開かずの扉
第3章 魔女の死
第4章 赤い日曜日
第5章 疑惑の影
第6章 暴走の教室
第7章 過去の囁き
第8章 贖罪の山羊
第9章 魔女たちの夜
第10章 暴かれた魔性
終章

梗概

「私は魔女なの」謎の言葉を残したまま一人の女生徒が寮の「開かずの間」で焼死した。その夜から次々と起こる級友たちの惨殺事件に名門女学園は恐怖と狂乱に包まれる。創立者の血をひく転校生冴子は心の奥底から湧き起こってくる“囁き”に自分が殺人鬼ではないかと恐怖におののく。「囁き」シリーズ登場!!   ――裏表紙より

感想

『館』シリーズよりも推理色を弱め、逆にホラー色を強めたような作品。それでも、そこまで怖い訳ではないので、ホラーが苦手な人でも大丈夫だろう。
綾辻行人は独自の世界観を構築するのが巧く、逆に本格推理小説としてはハッキリとした結末を与えないという傾向が有る。その為、今作のような小説の方が合っているのかも知れない。
割合と長めだったが、内容的にそれほど濃くなかったのが残念。


暗闇の囁き

一言

ジャンル不明の佳作。

目次

序章
第1章 誘いの闇
第2章 出会いの森
第3章 戯れの時
第4章 囁きの影
第5章 災いの牙
第6章 狂いの傾斜
第7章 怯えの渦
第8章 凍えの部屋
第9章 祈りの朝
終章

梗概

黒髪を切られ変死した女性家庭教師。そして従兄とその母親も眼球と爪を奪われて死んだ。謎めいたほどに美しい兄弟のまわりに次々と起こる奇怪な死。遠い記憶の闇のなかから湧き上がってくる“囁き”が呼び醒ますものは何か。『緋色の囁き』に続く異色の長編推理“囁き”シリーズ第二弾、講談社文庫に登場!!   ――裏表紙より

感想

物語の謎を大風呂敷に広げない事で、非常によく纏まった読み易い小説に仕上がっている。そして前作『緋色の囁き』よりも、さらにミステリーでもホラーでもない。どういうジャンルに区分けすれば良いのか、正直よく分からない。まぁそれは大した問題ではないのだが。
ただコンパクトに纏まっているが為に、真相のインパクトなどが弱かったのが残念。良くも悪くも「佳作」といった印象が残る作品だった。


黄昏の囁き

一言

結局『囁き』シリーズとは何だったのか。

目次

序章
第1章 帰郷
第2章 邂逅
第3章 訪問
第4章 疑惑
第5章 追憶
第6章 浮上
第7章 恐怖
第8章 探索
第9章 破局
終章

梗概

兄急死の報に帰郷した医学生翔二は、元予備校講師占部の協力で、“事故”の真相を追い始めた。「ね、遊んでよ」謎の“囁き”に異常に怯える兄の幼馴染みたち。やがて一人また一人と殺人鬼の魔の手が伸びるなか、彼の脳裏に幼き日の恐るべき記憶が甦る。異色の長編推理“囁き”シリーズ第三弾!! 待望の登場。   ――裏表紙より

感想

ホラー色を強めた筈の作品だった『囁き』シリーズだが、今作は完全にホラーではなくミステリーに戻ってしまった。作者自ら『囁き』三部作と呼んでいる事から、もう続編は出ないのだと思うが、となると『囁き』シリーズとは一体何だったのか。
これは単なるホラーとミステリーの中道を歩むという意味ではなく、純粋に過去の曖昧な記憶が現在の人間に与える、強くてしかし儚い影響――そういう正体不明なモノの表現だったのではないだろうか。
各作品の主人公たちだけでなく、その脇を支えるキャラクター達にとっても記憶が大きく影響している。記憶の呪縛と、そこからの解放――これがテーマのシリーズは、ミステリーの多少の不備を付設しながらも見事に完結した。


眼球綺譚

一言

綾辻初の100%ホラー作品。

目次

再生
呼子池の怪魚
特別料理
バースデー・プレゼント
鉄橋
人形
眼球綺譚

梗概

ある日、大学の後輩とおぼしき男から郵便が届いた。「読んでください。夜中に、一人で」という手紙とともに、その中にはある地方都市での奇怪な事件を題材にした小説の原稿が……。表題作「眼球綺譚」他、誕生日の夜の“悪夢”を描いた「バースデー・プレゼント」、究極の“食”に挑んだ逸品「特別料理」など、妖しくも美しい7つのホラーストーリーを収録。著者の新境地を拓いた初の短篇集。   ――裏表紙より

感想

ホラー作でも常にミステリー色を残して来た綾辻行人が、初めてミステリーからの完全脱却を図った短編集。星新一のショートショートのようなテイストを出しつつ、非常に気持ち悪い作品を仕上げた。
同作者の他の作品を読んでいると先が読み易くなってしまうのが弱点だが、それなりに一工夫の有る作品が多い。個人的には前半に配置されている作品の方が楽しめた。


フリークス

一言

それぞれ味わいを異とする中編集。

目次

夢魔の手――三一三号室の患者――
四〇九号室の患者
フリークス――五六四号室の患者――

梗概

「J・Mを殺したのは誰か?」。私が読んだ患者の原稿は、その一文で結ばれていた。解決篇の欠落した推理小説のように……。
J・Mは、自分より醜い怪物を造るため、五人の子供に人体改造を施した異常な科学者。奴を惨殺したのは、どの子供なのか? ――小説家の私と探偵の彼が解明する衝撃の真相!(表題作)
夢現、狂気と正常を往還する物語。読者はきっと眩暈する!
   ――裏表紙より

感想

ある程度までは読者に結末を予想させ、実際にその通りにストーリーを展開させながら、それを超えて引っ繰り返す手腕は見事。特に「四〇九号室の患者」は秀逸と言って良い出来だろう。最初から伏線が散りばめられている。
一方で表題作で最長編でもある「フリークス」は、その長さの割には意外性は低い。しかし最も作者らしさが出ていたのは、この作品か。現代を舞台としていながら、ファンタジー風味を加えた得意の作風だ。作中作と登場人物との連動感は素晴らしい。


霧越邸殺人事件

一言

“大作”と言うよりは“力作”。

目次

プロローグ
第一幕 劇団「暗色天幕」
第二幕 “吹雪の山荘”
第三幕 「雨」
幕間一
第四幕 第二の死
第五幕 第三の死
第六幕 第四の死
幕間二
第七幕 対決
エピローグ

梗概

「この家は祈っている。静かに、ひたむきに」――猛吹雪の中、忽然と現われた謎の洋館、その名は霧越邸。訪れた劇団「暗色天幕」の一行は、住人たちの冷たい対応に戸惑い、館内各所で出遭う不可思議な“暗号”に戦慄する。やがて勃発する殺人事件の現場には、何故か北原白秋の詩集が…。奇怪な“連続見立て殺人”の犯人は誰か? 館に潜む“何物か”の驚くべき正体とは…? 本格推理と幻想小説の類例なき融合を成し遂げ、我が国ミステリ史上に燦然と輝く異形の傑作、ここに登場!   ――裏表紙より

信州の山深き地にひっそりと建つ、「霧越邸」と呼ばれる秘密めいた洋館が、この物語の舞台であり、主人公でもあります。人間たちはもちろんたくさん登場しますが、真の主人公はやはり「霧越邸」そのものの方だろう、と考えています。
綾辻行人の代表作である、というふうに云われることもしばしばあります。それが正しいかどうかはさておき、僕が少年時代から抱きつづけていた「本格ミステリ」への想いを、すべて封じ込めたような作品であることは間違いないところです。
憂き世のあれこれをしばし忘れて、とっぷりと作品世界に浸っていただければと思います。
   ――表紙裏より

感想

“大作”と呼ばれるに相応しいボリューム。しかし本当に驚くべきは、その登場人物たちが語る、事細かな歴史的知識などを拠り所とした主張の方なのかも知れない。
というのも、ボリュームの割には殺人トリックなどへの力の入れ具合が低いのである。しかしそれが作品を貶めていないように感じるのが凄い。
屋敷の中の謎の人物に関する辺りなど、細かい所で疑問が無いでもないが、そんな感情を押し流してしまうかのような力強さを秘めている。そういう意味では、この作品は“大作”というよりは“力作”なのかも知れない。


どんどん橋、落ちた

一言

屁理屈も理屈の内である。

目次

第一話 どんどん橋、落ちた
第二話 ぼうぼう森、燃えた
第三話 フェラーリは見ていた
第四話 伊園家の崩壊
第五話 意外な犯人

梗概

ミステリ作家・綾辻行人に持ち込まれる一筋縄では解けない難事件の数々。崩落した〔どんどん橋〕の向こう側で、殺しはいかにして行われたのか? 表題作「どんどん橋、落ちた」や、明るく平和なはずのあの一家に不幸が訪れ、悲劇的な結末に言葉を失う「伊園家の崩壊」など、五つの超難問“犯人当て”作品集。   ――裏表紙より

感想

この作者のファンでなければ間違いなく怒り出す。いや、ファンでも怒る人が出て来てしまうかも知れない異色中編集。
しかしそれはレベルの低さ故ではない。作中で綾辻行人自身が語っているように、自分の在るべき姿――そのような曖昧な存在を必死に追い掛けている様が目に浮かぶような作品である。
“新本格”の代名詞として語られる事の多い作者だが、恐らくその呪縛から逃れたいという欲求が、この作品を完成させたように思う。絶対に自分の代表作シリーズでは出来ないような事を、とことんまでやってしまおうという意気込みは買いだ。
ちなみに第四話「伊園家の崩壊」は必見である。これが“最もマトモな作品”と言われるのだから尋常ではない。


最後の記憶

一言

目次

梗概

脳の病を患い、ほとんどすべての記憶を失いつつある母・千鶴。彼女に残されたのは、幼い頃に経験したという「凄まじい恐怖」の記憶だけだった。バッタの飛ぶ音、突然の白い閃光、血飛沫と悲鳴、惨殺された大勢の子供たち……。死に瀕した母を今なお苦しめる「最後の記憶」の正体とは何なのか? ホラーの恐怖と本格ミステリの驚き―両者の奇蹟的な融合を果たした、名手・綾辻行人の長編小説。   ――WEBサイトより

感想


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