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星新一

HOBBY MAIN

タイトル 出版社 初版日 勝手な採点 通販
ボッコちゃん 新潮文庫 1971年05月25日 ★★★☆ 購入
ようこそ地球さん 1972年06月15日 ★★★ 購入
気まぐれ指数 1973年05月25日 ★★★★★ 購入
ほら男爵 現代の冒険 1973年11月30日 ★★★ 購入
ボンボンと悪夢 1974年10月30日 ★★★ 購入
悪魔のいる天国 1975年07月25日 ★★☆ 購入
おのぞみの結末 1976年03月30日 ★★★ 購入
マイ国家 1976年05月30日 ★★★☆ 購入
妖精配給会社 1976年11月30日 ★★★ 購入
宇宙のあいさつ 1977年03月30日 ★★★★ 購入
午後の恐竜 1977年05月30日 ★★★ 購入
白い服の男 1977年08月30日 ★★☆ 購入
妄想銀行 1978年03月30日 ★★★ 購入
ブランコのむこうで 1978年05月25日 ★★★★ 購入
人民は弱し 官吏は強し 1978年07月25日 ★★ 購入
おせっかいな神々 1979年05月25日 ★★☆ 購入
ひとにぎりの未来 1980年05月25日 ★★★☆ 購入
だれかさんの悪夢 1981年07月25日 ★★☆ 購入
未来イソップ 1982年08月25日 ★★★☆ 購入
さまざまな迷路 1983年08月25日 ★★☆ 購入
かぼちゃの馬車 1983年10月25日 ★☆ 購入
エヌ氏の遊園地 1985年07月25日 ★★ 購入
盗賊会社 1985年08月25日 ★★☆ 購入
ノックの音が 1985年09月25日 ★★★☆ 購入
夜のかくれんぼ 1985年10月25日 ★★☆ 購入
おみそれ社会 1985年12月20日 ★★★ 購入
たくさんのタブー 1986年02月25日 ★☆ 購入
なりそこない王子 1986年02月25日 ★★★ 購入
どこかの事件 1986年10月25日 ★★☆ 購入
安全のカード 1987年12月20日 ★★ 購入
ご依頼の件 1989年04月25日 ★★★ 購入
ありふれた手法 1990年11月25日 ★★★ 購入
凶夢など30 1991年12月20日 ★★★ 購入
どんぐり民話館 1992年12月25日 ★★★ 購入
これからの出来事 1993年11月25日 ★★★☆ 購入
つねならぬ話 1994年07月01日 ★★★ 購入
きまぐれ遊歩道 1995年06月01日 ★★★★ 購入
明治の人物誌 1998年05月01日 ★★ 購入
ショートショートの広場1 講談社文庫 1985年07月15日 ★★★★☆ 購入
ショートショートの広場2 1989年02月15日 ★★★★ 購入
ショートショートの広場3 1991年06月15日 ★★☆ 購入
ショートショートの広場4 1992年09月15日 ★★☆ 購入
ショートショートの広場5 1994年03月15日 ★★★☆ 購入
ショートショートの広場6 1995年03月15日 ★★★★ 購入
ショートショートの広場7 1996年03月15日 ★★★☆ 購入
ショートショートの広場8 1997年03月15日 ★★☆ 購入
ショートショートの広場9 1998年01月15日 ★★★ 購入

ボッコちゃん

一言

ショートショートのお手本。

目次

悪魔
ボッコちゃん
おーい でてこーい
殺し屋ですのよ
来訪者
変な薬
月の光
包囲
ツキ計画
暑さ
約束
猫と鼠
不眠症
生活維持者
悲しむべきこと
年賀の客
ねらわれた星
冬の蝶
デラックスな金庫
誘拐
親善キッス
マネー・エイジ
雄大な計画
人類愛
ゆきとどいた生活
闇の眼
気前のいい家
追い越し
妖精
波状攻撃
ある研究
プレゼント
肩の上の秘書
被害
なぞめいた女
キツツキ計画
診断
意気投合
程度の問題
愛用の時計
特許の品
おみやげ
欲望の城
盗んだ書類
よごれている本
白い記憶
冬きたりなば
なぞの青年
最後の地球人

梗概

スマートなユーモア、ユニークな着想、シャープな諷刺にあふれ、光り輝く小宇宙群! 日本SFのパイオニア星新一のショートショート集。
表題作をはじめ『おーい でてこーい』『殺し屋ですのよ』『月の光』『暑さ』『不眠症』『狙われた星』『冬の蝶』『鏡』『親善キッス』『マネー・エイジ』『ゆきとどいた生活』『よごれている本』など、とても楽しく、ちょっぴりスリリングな自選50編。
   ――裏表紙より

感想

表題作についてのみ。
設定は非現実的だが、結末にリアリティが有るのが凄い。これこそショートショートのお手本だろう。


ようこそ地球さん

一言

変わった構成の「セキストラ」。

目次

デラックスな拳銃
弱点
宇宙通信
桃源郷
証人
患者
たのしみ
天使考
不満
神々の作法
すばらしい天体
セキストラ
宇宙からの客
待機
西部に生きる男
空への門
思索販売業
霧の星で
水音
早春の土
友好使節
ずれ
愛の鍵
小さな十字架
見失った愛情
悪をのろおう
ごうまんな客
探検隊
最高の作戦
通信販売
テレビ・ショー
開拓者たち
復讐
最後の事業
しぶといやつ
処刑
食事前の授業
信用ある製品
廃虚
殉教

梗概

文明の亀裂をこじあけて宇宙時代をのぞいてみたら、人工冬眠の流行で地上は静まりかえり、自殺は信仰にまで昇華し、宇宙植民地では大暴動が惹起している――人類の未来に待ちぶせる悲喜劇を、皮肉げに笑い、人間の弱さに目を潤ませながら、奇想天外、卓抜なアイデアをとりまぜて描いたショートショート42編を収録。現代メカニズムの清涼剤とも言うべき大人のための寓話集です。   ――表紙裏より

感想

「セキストラ」についてのみ。
星新一の書くショートショートはオーソドックスなタイプが殆どだが、本作は珍しく構成に凝っている。読んだ後に何となく微妙な感覚が残る。
星新一は後期ではそのような作品も多いが、これは非常に初期に書かれた作品なので、そういう意味ではかなり珍しい。


気まぐれ指数

一言

現在ライトノベルで流行の手法が昭和30年代に。

目次

序曲
悪日
ある神学
手帳
電話
アンテナ
二十万円
賭け
友引
紙屑
作品
決算期

梗概

ビックリ箱作りのアイデアマン黒田一郎は、犯罪批評を趣味とする教養高き紳士。ふとした気まぐれから自ら完全犯罪を計画し仏像窃盗に乗り出すが、はからずも神主、未亡人、セールス・ガールをめぐって、てんやわんやの大騒動がまき起こる……。
ショートショートの第一人者星新一が、傑出したギャグと警句をふんだんにもり込んで描く、スマートでユーモアにみちた長編コメディー。
   ――裏表紙より

感想

こんな作品が、昭和38年という時代に書かれたのが驚き。現在のライトノベルの『ブギーポップは笑わない』や『バッカーノ!』などに近い手法だが、より現実を舞台に淡々とストーリーを進めて行く。
途中でダレる部分が無い訳でもないのだが、物語の収束に向けて少しずつ事態が変化していく様が、見ていて気持ち良い。
星新一初の長編だと思われるが、これだけのモノが書けながら何故もっと長編を書かなかったのか不思議である。時代に合わなかったのだろうか。


ほら男爵 現代の冒険

一言

ただ只管に奇妙な話。

目次

サハリの旅
海へ!
地下旅行
砂漠の放浪

梗概

“ほら男爵”の異名を祖先にもつシュルテン・フォン・ミュンヒハウゼン男爵は育ちの良い32歳の独身男性。祖先の執念のせいか旅に出かけると必ず奇妙な事件が待ちうけている。愛すべきわが男爵の前に出現するのは、人魚、宇宙人、ドラキュラ伯、ミイラ男、美女、魔女、インディアンetc……。懐かしい童話の世界に現代人の夢と願望を託した、シニカルでユーモアのある現代傑作冒険記。   ――表紙裏より

感想

星新一の長編小説は、自身のショートショートとは異なった奇妙さを持っている。恐らく長編の奇妙さの方が万人受けはしないのだが、しかし何処か飽きない魅力に溢れているのはこちらの方だと思う。
物語はナンセンス系でページ数は少ないが、それでもやや冗長に感じられてしまう展開が有るのは残念だ。この作品は物語そのものよりも、只管に奇想天外な展開を楽しめなければ辛いかも知れない。


ボンボンと悪夢

一言

アイデアは良いが、加工が……。

目次

椅子
雪の夜
処方
凝視
夜の道で
夢の男
利益
不運
症状
顔のうえの軌道
友を失った夜
健康の販売員
むだな時間
乾燥時代
囚人
白昼の襲撃
転機
宇宙のネロ
オアシス
賢明な女性たち
宇宙の指導員
上流階級
夜の侵入者
鋭い目の男
再認識
目撃者
報告
循環気流
専門家
年間最悪の日
模型と実物
老後の仕事
悪魔のささやき
組織
報酬
すばらしい食事

梗概

ドイツの片田舎で買ったふしぎな魔力をもった椅子……。静かな雪の夜に、老夫婦のもとにあらわれた侵入者……。あくびの出るような平和な地球に、突如出現した、黄金色に輝く奇妙な物体……。宇宙に、未来に、平凡な日常生活の中に、ユニークな想像力と、シャープなインテリジェンスで描き出される、サスペンス、ミステリー、ユーモアあふれるショートショート36編を収録。   ――裏表紙より

感想

「すばらしい食事」についてのみ。
アイデアが素晴らしい。現在ではコント等にも応用されている手法だが、当時としてはかなり珍しかったのではないか。
ただ、これだけのページ数を割くならば、もう少し巧く加工出来たような気もする。オチは良いが。


悪魔のいる天国

一言

恐ろしい状況をユーモラスに描いている。

目次

合理主義者
調査
デラックスな金庫
天国
無重力犯罪
宇宙のキツネ
誘拐
情熱
お地蔵さまのくれたクマ
黄金のオウム
シンデレラ
こん
ピーターパンの島
夢の未来へ
肩の上の秘書
殺人者さま
ゆきとどいた生活
愛の通信
脱出口
もたらされた文明
エル氏の最期
夢の都市
サーカスの旅
かわいいポーリー
契約者
となりの家庭
もとで
追い越し
診断
告白
交差点
薄暗い星で
帰路
殉職
相続
帰郷

梗概

ふとした気まぐれや思いつきによって、人間を残酷な運命へ突きおとす“悪魔”の存在を、卓抜なアイデアと透明な文体を駆使して描き出すショートショート36篇を収録する。
人間に代って言葉を交わすロボットインコの話『肩の上の秘書』未来社会で想像力にあふれた人間を待ち受ける恐怖を描く『ピーターパンの島』など、日常社会、SFの世界、夢の空間にくりひろげられるファンタジア。
   ――裏表紙より

感想

「肩の上の秘書」についてのみ。
コンピュータに支配される人間という主題はショートショートに限らずよく描かれるテーマだが、それをシリアスになり過ぎずにサラッと流すように書いているのが良い。ある意味でユーモラスだとすら言えるが、それだけに具体的な想像をした時に怖いものがある。
ラストの一文が何とも言えない。


おのぞみの結末

一言

奇妙なフレーズが秀逸。

目次

一年間
ひとつの目標
あの男この病気
侵入者との会話
現実
親しげな悪魔
わが子のために
ある占い
おのぞみの結末
空の死神
要求

梗概

家事万能のロボットを手に入れたら……。世界平和をめざす秘密組織が実権を握ったら……。安逸と平穏をのぞみながら、退屈な日々にあきたらず、精神と肉体の新たな冒険を求める人間。超現代のなかでも、あいかわらず滑稽で愛すべき、人間らしい心の動きをスマートに描く11編。新鮮な発想、奇想天外なストーリーの展開、そして意外な結末は、あたかもアイディアを凝集した玉手箱。   ――裏表紙より

感想

表題作についてのみ。
「ジャックポット教」とは何とも面白い試みである。実際に効果が出る為には、どれくらい信者が必要かな。「メロンライスにガムライス」という一種の合言葉は、あまり有名になっては効果が無いし。ただ何とも奇妙な感覚を抱かせるフレーズである。
途中からの展開が読めてしまうのが少々、残念だ。もう一つくらい新たな宗教を出してみると面白くなったかも知れない。


マイ国家

一言

ショートショートの新境地。

目次

特賞の男
うるさい相手
儀式
死にたがる男
いいわけ幸兵衛
語らい
調整
夜の嵐
刑事と称する男
安全な味
ちがい
応接室
特殊な症状
ねむりウサギ
趣味
子分たち
秘法の産物
商品
女と金と美
国家機密
友情の杯
逃げる男
雪の女
首輪
宿命
思わぬ効果
ひそかなたのしみ
ガラスの花
新鮮さの薬
服を着たゾウ
マイ国家

梗概

マイホームを“マイ国家”として独立宣言した男がいた。訪れた銀行外勤係は、不法侵入・スパイ容疑で、たちまち逮捕。犯罪か? 狂気か? ――世間の常識や通念を、新鮮奇抜な発想でくつがえし、一見平和な文明社会にひそむ恐怖と幻想を、冴えた皮肉とユーモアでとらえたショート・ショート31編。卓抜なアイディアとプロットを縦横に織りなして、夢の飛翔へと誘う魔法のカーペット。   ――裏表紙より

感想

表題作についてのみ。
自宅を国家として独立させた家主と、そこに訪れた銀行員との奇妙なやり取り。そこには『家主=異常、銀行員=正常』という図式が成り立っているが、しかしラストではその公式が大きくグラつく。そこに至るまでの過程を楽しむ、というのがこのショートショートの楽しみ方だ。これは今までの『ショートショート=オチ付きの短編』という常識すらも打ち破り、新しい世界を構築するに至っている。


妖精配給会社

一言

作者の先見性に驚愕。

目次

福の神
暗示
アフターサービス
沈黙の時代
ある戦い
おみやげを持って
指導
おそるべき事態
夏の夜
三角関係
マッチ
妖精配給会社
恋いがたき
作るべきか
ハナ研究所
ひとつの装置
宝船
銀色のボンベ
遠大な計画
逃走
すばらしい星
分工場
ごきげん保険
責任者
遺品
春の寓話
輸送中
幸運への作戦
友だち
豪華な生活
宇宙の関所
求人難
ボタン星からの贈り物
天使と勲章
週末の日

梗概

他の星から流れ着いた≪妖精≫は従順で遠慮深く、なぐさめ上手でほめ上手、ペットとしては最適だった。半官半民の配給会社もでき、たちまち普及した。しかし、会社がその使命を終え、社史編集の仕事を残すだけとなった時、過去の記録を調べていた老社員の頭を一つの疑惑がよぎった……諷刺と戦慄の表題作など、ショート・ショートの傑作35編を収録した夢と笑いの楽しい宝石箱。   ――裏表紙より

感想

表題作についてのみ。
何の実用性も無く、ただ愛玩用としてのニーズだけがある“妖精”に関する物語。僕は読んでいて、“妖精”とは男性にとっての“理想の女性像”のように感じた。が、作者はそうと意識した訳ではないようだ。物語中では女性からの視点が皆無だからだ。
文明の行き着く先は、この“妖精”のような存在なのかも知れない。現に、愛玩用のロボットや仮想ペットは流行しつつある。この本が出版されたのは25年以上も前の事で、星新一の先見性には驚かされるばかりだ。


宇宙のあいさつ

一言

かなりの傑作。

目次

宇宙のあいさつ
願望
貴重な研究
小さくて大きな事故
危機
ジャックと豆の木
気まぐれな星
対策
宇宙の男たち
悪人と善良な市民
不景気
リンゴ
解決
その夜
初夢
羽衣
期待
反応
治療
タイムボックス
景品
適当な方法
運の悪い男
贈り主
タバコ
初雪
救助
繁栄の花
美の神
ひとりじめ
奇妙な社員
砂漠の星で
夜の流れ
あとがき

梗概

植民地獲得のために地球から派遣されてきた宇宙船はすてきな惑星を占領することができた。温和な気候、豊富な食料、従順な住民たち、200歳の平均寿命――疲れた地球人のための保養地として申し分なかった。しかし、喜びもつかの間、おそるべき事実が……不気味なイロニーのあふれる表題作など、奔放なアイデアと洒脱なエスプリでスマートに描くショート・ショートの傑作35編。   ――裏表紙より

感想

表題作についてのみ。
SFとしての体裁を保ちながら、現実に於ける問題をさらりと提示するのには本当に驚かされた。結末に至るまでのリアリティも素晴らしい。かなりの傑作だと思う。


午後の恐竜

一言

地球が見せる壮大な走馬灯。

目次

エデン改造計画
契約時代
午後の恐竜
おれの一座
幸運のベル
華やかな三つの願い
戦う人
理想的販売法
視線の訪れ
偏見
狂的体質

梗概

現代社会に突然出現した恐竜の群れ。蜃気楼か? 集団幻覚か? それとも立体テレビの放映でも始まったのか? ――地球の運命をシニカルに描く表題作。ティーチング・マシンとなった教育ママ、体中に極彩色の模様ができた前衛芸術家、核爆弾になった大臣――偏執と狂気の世界をユーモラスに描く『狂的体質』。ほかに、『戦う人』『契約時代』『理想的販売法』『幸運のベル』など全11編。   ――裏表紙より

感想

表題作についてのみ。
現代世界に突如として恐竜が出現し混乱する世間。一方で原子力潜水艦の行方を捜し続ける人間達。この2つが見事に折り重なり、壮大なショートショートを形成している。星新一としては珍しい構成である点も見逃せない。
ただ途中で何となくオチが読めてしまう。しかし、それすらも作者の計算の内のように思えるから不思議だ。


白い服の男

一言

現代では平凡と受け取られても仕方ない。

目次

白い服の男
月曜日の異変
悪への挑戦
老人と孫
テレビシート加工
矛盾の凶器
興信所
特殊大量殺人機
ねぼけロボット
時の渦

梗概

横領、強盗、殺人……こんなたぐいの犯罪は一般の警察にまかせておけばよい。わが特殊警察の任務はただひとつ――人間が作り出す平和の虚妄性を痛烈な皮肉をこめて描く表題作。男っぽく言葉づかいのぞんざいだった妻が一夜あけるとすっかりしとやかな女になっていた――軽妙なタッチで医学の進歩の盲点を衝いた『月曜日の異変』。ほかに、『老人と孫』『テレビシート加工』など全10編。   ――裏表紙より

感想

表題作についてのみ。
25頁近い長さは“ショートショート”とは言い難いかも知れない。内容的には、徹底的に戦争を排除して平和を保とうとする社会の狂気を描いている。流石に現代ではありふれた内容だと言わざるを得ないが、これは僕が生まれるよりもかなり以前に書かれた話であり、それを考慮すれば作品に対する評価は大きく変わってくるだろう。


妄想銀行

一言

オーソドックスな作りで程が良い。

目次

保証
大黒さま
あるスパイの物語
住宅問題
信念
半人前
変な客
美味の秘密
陰謀団ミダス
さまよう犬
女神
海のハープ
ねらった弱味
繁栄への原理
味ラジオ
新しい人生
古風な愛
遭難
金の力
黄金の惑星
敏感な動物
宇宙の英雄
魔法の大金
人間的
破滅
博士と殿さま
小さな世界
長生き競争
とんでもないやつ
妄想銀行

梗概

人間のさまざまな妄想を取り扱うエフ博士の妄想銀行は連日大繁盛。しかし博士が、彼に思いを寄せる女から吸いとった妄想を自分の愛する女性に利用しようとしたのが過ちのもとだった――奇想天外なユーモアのあふれる表題作。ほかに、道で拾った風変りな鍵に合う鍵穴を探すことに情熱を傾ける男の物語『鍵』、人生修行に出て説教癖のついたロボットの話『人間的』などS・S32編。   ――裏表紙より

感想

表題作についてのみ。
何か非日常的な物を存在させ、それにリアリティを持たせる為の細かいエピソードを配置し、そしてその非日常に対するオチを用意する。星新一はショートショートをこのようにして作る事が多いが、「妄想銀行」は正にその手法。全体的に重過ぎず軽過ぎず、適正。


ブランコのむこうで

一言

児童文学的な雰囲気ながら、常に理性的な主人公が魅力。

目次

ある日のこと
おじいさん
お城の王子
さびしい街
皇帝ばんざい
ほほえみ
砂の上
赤ちゃんたち
10 そして

梗概

ある日学校の帰り道に、もうひとりのぼくに出会った。鏡のむこうから抜け出てきたようなぼくにそっくりの顔。信じてもらえるかな。僕は目に見えない糸で引っぱられるように男の子のあとをつけていった。その子は長いこと歩いたあげく知らない家に入っていったんだ。そこでぼくも続いて中に入ろうとしたら……。
少年の愉快で、不思議で、すばらしい冒険を描く長編ファンタジー。
   ――表紙裏より

感想

何となく古典的な児童文学的な雰囲気を醸し出しながら、しかし星新一らしい登場人物の思考は、得意のショートショートと酷似している。
感覚が支配するような世界観で、それでも理性を失わずに冒険を進める主人公の少年は、ともすれば年不相応に見えてしまう事も少なくないが、ここら辺を受け入れられるかどうかが作品評価の分かれ目になりそう。
星新一のショートショートを読み慣れていれば問題無いと思うが、そうでない読者にとっては少し違和感が強いかも知れない。


人民は弱し 官吏は強し

一言

明治時代という日本の実態を描く。

目次

人民は弱し 官吏は強し

梗概

明治末、12年間の米国留学から帰った星一は製薬会社を興した。日本で初めてモルヒネの精製に成功するなど事業は飛躍的に発展したが、星の自由な物の考え方は、保身第一の官僚たちの反感を買った。陰湿な政争に巻きこまれ、官憲の執拗きわまる妨害をうけ、会社はしだいに窮地に追いこまれる……。最後まで屈服することなく腐敗した官僚組織と闘い続けた父の姿を愛情をこめて描く。   ――裏表紙より

感想

星新一が自らの父親の半生を描いたノンフィクション小説。何処から出て来たのだろうと感心するくらいの詳細な描写には圧巻。
過去の日本が(もしかしたら今でも)公的機関が民間に対して不当な扱いを行っていた事には憤りを覚え、そして星新一の父親の涙ぐましいほどの努力には胸を打たれる。
本書は伝記的な位置付けであるが、その内容は殆どが仕事内容に限定されている。星新一がどのようにして生まれたのか、その辺りも是非とも知りたい所であった。


おせっかいな神々

一言

短い事で助かっている。

目次

笑い顔の神
現代の美談
サービス
魔法使い
奇妙な旅行
出来心
問題の男
非常ベル
古代の秘法
死の舞台
マスコット
税金ぎらい
隊員たち
指紋
権利金
保護色
夜の声
機会
魅力的な薬
未知の星へ
夜の事件
歴史の論文
重要なシーン
商売の神
四日間の出来事
愛の指輪
効果
協力者
狂気と弾丸
天罰
無表情な女
ささやき
午後の出来事
夜の召使い
三年目の生活
すばらしい銃
そそっかしい相手
伴奏者
敬服すべき一生

梗概

神さまたちはおせっかい。人間どもをからかったり、意地悪をしたり、時にはいたずらをしかけたり。あなたのそばで起る事件もひょっとしたら神さまの仕業かもしれない……。畑で拾った“笑い顔の神”の正体は? ブロンズの“商売の神”のご利益は? ――ふとした偶然からまき起される数々の事件を斬新・奇抜なアイデアで描き、異次元の笑いの世界に誘うショート・ショート40編。   ――裏表紙より

感想

「笑い顔の神」についてのみ。
男が金持ちになって行く過程に妙な現実感が有る。オチはオーソドックスだが、少々無理があるような気もする。


ひとにぎりの未来

一言

二重のどんでん返しが効いている。

目次

コビト
古びた旅館で
怪盗X
にこやかな男
お待ち下さい
拳銃の感触
異変
愛の作用
成熟
はじまり
遠距離通勤時代
爆発
うちの子に限って
極秘の室
第一部第一課長
代償
新しい装置
かくれ家
感謝の日々
妙な幽霊
流行の病気
進歩
依頼主
番号をどうぞ
気の毒な症状
ある建物
犯罪の舞台
破滅の時
幸運の副産物
なわばり
くさび
お祈り
世界の終幕
帰郷の手続き
はい
自信にみちた生活
平和の神
涙の雨
フィナーレ

梗概

人間の脳波を調べ、最も食べたいと思っている料理を作ってくれる<自動調理器>、遠距離通勤時代にうってつけ、眠っている間に会社まで運んでくれる<人間用コンテナ>、判断に迷った時、たちどころに指示を与えてくれる<身上相談機>、etc――こんな便利なものが出来たらすばらしいとお思いになるでしょう。未来社会の青写真、ちょっとのぞいてみませんか……。S・S40編。   ――裏表紙より

感想

「フィナーレ」についてのみ。
さらっと書いているが、二重のどんでん返しになっている。実際の安楽死の問題とリンクしているし、将来的にこのような事がないとも言えない所がまた良い。


だれかさんの悪夢

一言

基本的なショートショート。

目次

レジャークラブ
空白の行動
とりひき
コレクター
観光地
問題の装置
気力発生機
眠る前のひととき
夜の乗客
収支
安全装置
宣伝の時代
一本の刀
たのしい毎日
敬遠
反政府省
見習いの第一日
女とふたりの男
こわいおじさん
一年の計
ある初夢
ごねどく屋
利益の確保
きっかけ
クーデター
おせっかい
不快な人物
けじめ
誓い
会員の特典
亡命者
出所の日
平均的反応
テレビの神
小さな社会
宝への道
夢の女
一日の仕事
便利なカバン
ある犯行
宇宙をわが手に
装置一一〇番
歳月
だまされ保険
ある旅行
飛躍への法則

梗概

大金持になりたい。魅力的な女と結婚したい。おもしろおかしく毎日をすごしたい。超能力を身につけたい。国家元首になりたい。宇宙を征服したい。早く刑務所から出たい。――平凡なことから途方もないことまで、ああもしたい、こうもしたいと限りなく広がる人間の夢。だが、その夢を実現してみると……。欲望多き人間たちがひきおこす悲劇喜劇を軽妙に描く傑作ショートソート集。   ――裏表紙より

感想

「飛躍への法則」についてのみ。
ショートショートの基本構造に徹底的に忠実に従っているが、宇宙人の行動の理由が自分たちの為だったのか、地球人の為だったのかが考えさせられる。


未来イソップ

一言

読み方によって印象が変わる作品。

目次

いそっぷ村の繁栄
シンデレラ王妃の幸福な人生
表と裏
頭の大きなロボット
底なしの沼
ある商品
無罪の薬
新しがりや
余暇の芸術
おカバさま
利口なオウム
新しい症状
いい上役
電話連絡
やさしい人柄
つなわたり
オフィスの妖精
健康な犬
熱中
別れの夢
少年と両親
ねらった金庫
価値検査器
企業内の聖人
夢の時代
ある夜の物語
旅行の準備
どっちにしても
不在の日
奇病
ふしぎなネコ
やはり
たそがれ

梗概

<アリとキリギリス><ウサギとカメ>など、誰でもごぞんじの寓話の世界。語りつがれてきた寓話も、星新一の手にかかると、ビックリ驚く大革命。時代が変れば話も変るとはいえ、古典的な物語をこんなふうに改作してしまっていいものかどうか、ちょっぴり気になりますが――。
表題作など、愉しい笑いと痛烈な諷刺で別世界へご案内するショート・ショート33編。
   ――裏表紙より

感想

「いそっぷ村の繁栄」についてのみ。
“教訓”をそのままに受け取ると、まるでショートコントのような展開だ。が、果たして作者が言いたかったのは“教訓”だったのだろうか? そう考えると作品の見方がガラッと変わると思う。


さまざまな迷路

一言

真逆の読み取り方が出来る。

目次

全快
町人たち
使者
重要な任務
森の家
ことのおこり
再現
しあわせな王女
ホンを求めて
因果
小鬼
過渡期の混乱
しあわせなやつ
目撃者
コーポレーション・ランド
判定
末路
ベターハーフ
小さな記事
みつけたもの
出口
名画の価値
三段式
かたきうち
すてきなかたねえ
一軒の家
買収に応じます
発火点
やつら

梗概

ある日とつぜん、おとぎ話の主人公になりたいと、とんでもないことを言い出した<王女>、なぜか、鬼が見えるという患者で繁盛する<神経科の医師>、街頭で通行人相手にキャンディーを売る<ロボット>etc.
未来・現代・過去を一つの次元にとらえ、迷路のように入り組んだ人間生活のさまざまな世界を32のチャンネルに写し出し、文明社会を痛撃する傑作ショート・ショート。
   ――裏表紙より

感想

「全快」についてのみ。
“知らない方が良い事も有る”という事を読み取るのは簡単だ。しかし作者は敢えてそれを否定したかったのではないだろうか。


かぼちゃの馬車

一言

オチは納得は出来るが――

目次

秘密結社
なるほど
虚像の姫
ご要望
厳粛な儀式
外見
七人の犯罪者
大洪水
高度な文明
確認
疑念
常識
ナンバー・クラブ
若がえり
大転換
新しい遊び
子供の部屋
処刑場
超能力
現在
質問と指示
悪魔の椅子
治療後の経過
交代制
事実
かぼちゃの馬車
墓標

梗概

地方から都会に出てきて、ひとりで暮らしている若い女のもとに届いたダイレクト・メールの内容は? だれもが見すごしてしまいそうな、目立たない家に住んでいる夫婦者の正体は? 熱帯の小さな国の独裁者に捕えられた男の運命は?
めまぐるしく移り変る現代社会の裏の裏のからくりを、寓話の世界に仮託して、鋭い風刺と溢れるユーモアで描くショートショート28編。
   ――裏表紙より

感想

表題作についてのみ。
20ページと、ショートショートとしてはかなりの長さであるにも関わらず、オチが読めてしまう。寓意性もイマイチで、納得の出来るオチの割には残念な作品。


エヌ氏の遊園地

一言

意外ではあるが、少々綺麗でない。

目次

けちな願い
人質
波状攻撃
あこがれの朝
副作用
車内の事件
危険な年代
秘薬と用法
殺し屋ですのよ
運命のまばたき
女の効用
うらめしや
尾行
欲望の城
昇進
よごれている本
ある商売
逃走の道
クリスマス・イブの出来事
協力的な男
女性アレルギー
依頼
紙片
港の事件
なぞめいた女
記念写真
夢と対策
個性のない男
夕ぐれの車
臨終の薬

梗概

エヌ博士の研究室を襲った強盗。金のもうかる薬を盗んだのはよかったけれど……。女性アレルギーの名探偵のもとに届いた大きな箱。その箱の中に入っていたものは……。別荘で休暇を過すエヌ氏のもとに、突然かかってきた電話。なんとその電話は江戸時代の霊魂からだった……。
卓抜なアイデアと奇想天外なユーモアで、不思議な世界にあなたを招待するショートショート31編。
   ――表紙裏より

感想

「臨終の薬」についてのみ。
薬の効果は意外だったが、それでも需要は無い気がする。これによって再び犯人が逮捕され、そしてまた後年になって襲われる、という展開になりそうだ。


盗賊会社

一言

現代批判風の作品が多い。

目次

雄大な計画
新しい社長
名案
ぼろ家の住人
滞貨一掃
あるロマンス
あすは休日
盗賊会社
殺され屋
あわれな星
やっかいな装置
程度の問題
趣味決定業
装置の時代
気前のいい家
最初の説得
仕事の不満
あるノイローゼ
声の用途
紙幣
大犯罪計画
感情テレビ
悲しむべきこと
時の人
善意の集積
黒い棒
なぞの青年
特許の品
打ち出の小槌
あるエリートたち
最高のぜいたく
無料の電話機
夕ぐれの行事
帰宅の時間
助言
長い人生

梗概

私は盗賊株式会社の社員。泥棒ごっこのオモチャの製造販売の会社ではない。れっきとした、泥棒を営業する会社だ。そんな仕事があったのかと内心うらやましがる人も多いかもしれない。平凡な日常のくり返しにあきあきしている人ならば……。
表題作の「盗賊会社」をはじめ、斬新かつ奇抜なアイデアで、現代社会を鋭く、しかもユーモラスに風刺する36編のショートショートを収録。
   ――裏表紙より

感想

表題作についてのみ。
盗賊会社という有り得ない存在にリアリティを持たせる為に細かな作戦を練るシーンが秀逸。これで違和感無く世界に入り込める。結末は予想外だが、ややインパクトが弱い。


ノックの音が

一言

珍しくショートショートの異色作。

目次

なぞの女
現代の人生
暑い日の客
夢の大金
金色のピン
和解の神
計略と結果
職務
しなやかな手
感動的な光景
財産への道
華やかな部屋
唯一の証人
盗難品
人形

梗概

ノックの音とともに、二日酔いの男の部屋にあらわれた見知らぬ美女。親しげにふるまう彼女の正体は?
いったい、だれのところへ、どんな人が訪れてきたのか。その目的は。これから部屋の中で、どんなことがおこるのか……。サスペンス、スリラーからコメディーまで、「ノックの音」から始まる様々な事件。意外性あふれるアイデアと洒落たセンスで描く15のショートショート。
   ――裏表紙より

感想

全ての作品が「ノックの音がした」という一文で始まるショートショート集。星新一としては異色の構成だ。その割には無理をしている印象も無く、すんなりと受け入れられる。
作品の内容もなかなか高水準。最後の「人形」だけは、金庫を埋めて酸欠になる、というオチの方がすっきりするような気がしたが、全体的には気楽に読めて面白い。


夜のかくれんぼ

一言

科学の代償が如何なる形で具現化されるのかを考えさせられる。

目次

こんな時代が
黒い服の男
ある帰郷
有名
若葉の季節
支出と収入
自信
未来人の家
不吉な地点
いやな笑い
うすのろ葬礼
はじめての例
黄色い葉
一家心中
つきまとう男たち
出現と普及
ご用件は
夢のような星
幸運の未来
殺意
背中の音
勝負
金の粉
幸運の公式
違和感
悪の組織
追われる男

梗概

宇宙からきた意味ありげな電波、壁からはえた人間の手、神からテレポートの能力をさずけられた男etc。
信じられないほど、異常な出来事が、次から次へと起るこの世の中。科学もふきとび、理屈も引っこむ摩訶不思議な世界に、あなたもまきこまれるかもしれません。ひと足さきに、活字の世界で奇妙な体験をしてみませんか。ミステリアスな世界にあなたを誘うショートショート28編。
   ――裏表紙より

感想

「こんな時代が」についてのみ。
これだけ科学文明が現代よりも進んだ時代に食料が不足しているという設定は現実的ではないが、しかし科学の発展と共に何か大切な物が犠牲になっているのではないか、という疑念はすっと付いて回る問題だろうと思う。その犠牲の代償がどのような形で現れるのか、それが問題だ。


おみそれ社会

一言

やや同傾向の作品が並んでしまったのが残念。

目次

おみそれ社会
女難の季節
ねずみ小僧六世
キューピッド
牧場都市
はだかの部屋
手紙
回復
古代の神々
殺意の家
ああ祖国よ

梗概

若く美しいバーのマダムが本妻で、主婦の典型といったふとった中年の婦人が二号。礼儀正しく頭もよさそうな、職務に忠実な模範警官がギャング団のあととり息子。そして、あまり売れない童話作家の私も……。
一皮むくと下からなにが出てくるのかわからないのが複雑な現代社会。なにげない日常生活のなかにひそむ二重性をユーモラスなタッチで描く表題作など11編を収録。
   ――裏表紙より

感想

星新一のショートショートにしては長めの作品が揃った短編集。長さに見合うくらいに物語を膨らませているのは良いが、その膨らませ方がやや単調だったように感じる。
結果として後半の作品ほど中弛みしてしまう傾向に有ったのが残念。それでも「殺意の家」などは、さらに長編化できそうなプロットだ。如何にも星新一的でもある。そこら辺のさじ加減は流石と言うしか無い。


たくさんのタブー

一言

途中でネタばらし的な要素が有って残念。

目次

解決策
重要な部分
おかしな青年
逃亡の部屋
勧誘
車の客
うけついだ仕事
ひとつのタブー
死ぬほど
知人たち
あれ
親子の関係
背中のやつ
少年期
きょうという日
海岸のさわぎ
頭のいい子
悲哀
きつねの小僧
タロベエの紹介

梗概

大病院にやってきた、自分のことを幽霊だと主張するおかしな青年、背中に白いひげの老人をせおっている若い娘、夏の日の海岸に突然あらわれたオールヌードの女の幽霊……。
幽霊にささやかれ、自分が自分でなくなって、あの世とこの世がつながる不思議な世界。常識を超越した発想と卓抜なユーモアで、日常生活の背後にひそむ異次元の空間を描くショートショート20編を収録。
   ――裏表紙より

感想

「ひとつのタブー」についてのみ。
果たしてこの結末は悲劇なのだろうか? いや、悲劇には違いないが、しかしそれでも大したものではない気がしてならない。そもそも主人公が相手もスパイかも知れない事には気付いていただけに、首を傾げざるを得なかった。


なりそこない王子

一言

新しいタイプのショートショート。

目次

死体ばんざい
ものぐさ太郎
合法
なりそこない王子
エスカレーション
ミドンさん
魅惑の城
善良な市民同盟
新しい政策
そして、だれも……
収容
流行の鞄

梗概

乞食王子、白雪姫と七人の小人、はだかの王さま、赤頭巾ちゃん、シンデレラ、そしてピーターパン……。
おとぎ話の主人公たち総出演の愉快なパロディ「なりそこない王子」をはじめ、深夜の道路を走る霊柩車が拾った死体をめぐるてんやわんやの騒動を描く「死体ばんざい」など、時間と空間を超えて、現実と非現実のはざまでくりひろげられる12編の不思議なショートショートを収録。
   ――裏表紙より

感想

表題作についてのみ。
全く異なる昔話を繋げてしまうという斬新な試み。エピソードとして目新しいだけでなく、登場人物たちの新たな人物像が浮かび上がって来るのが面白い。


どこかの事件

一言

物語の展開のさせ方が面白いが、一部に非現実さを感じた。

目次

上役の家
入会
公園の男
消えた大金
あいつが来る
味覚
となりの住人
カード
ポケットの妖精
職業
経路
うるさい上役
ビジネス
運命
お願い
企業の秘密
特殊な能力
先輩にならって
その女
どこかの事件
林の人かげ

梗概

平凡なサラリーマンが、ねごとで妻にもらした見知らぬ男への殺意。ねごとでの殺人計画はしだいに具体化していく。はたして、夢の中の出来事なのか、それとも本当は……。
他人には信じてもらえない、不思議な事件はいつもどこかで起きている。日常的な時間や空間を越えて展開する非現実的現実世界をウイットあうれる語り口で描く、夢とサスペンスにみちたショートショート21編。
   ――裏表紙より

感想

表題作についてのみ。
15頁の中に推理小説的なサスペンスを押し込めた作品。オチは弱いものの、途中の展開が面白い。
ただ、主人公である男性が、自分の寝言に対してあまりにも楽観的過ぎるように感じた。作品が書かれた時期を考えても、妻が“カセットテープに録音する”くらいの発想をしても良かったのではないか。


安全のカード

一言

結末が不明瞭。何処まで深読みしたら良いのか謎。

目次

頭痛
親友のたのみ
過去の人生
人員配置
めぐまれた人生
出勤
会員になって
幸運な占い師
雷鳴
安全のカード
あの女
ポケットのなかに
業務命令
問題の部屋
メモ
声が……

梗概

休日に青年の部屋をおとずれたセールスマン。その男がカバンからとりだしたのは、名刺くらいの大きさの金属製のカードだった。なんとこのカード、絶対的な安全を保障するという不思議なカードだった……。
平凡に過ぎてゆく日々。何となくつまらない毎日。そんな時、ショートショートの扉を開いてみませんか。表題作をはじめ、悪夢とロマンの交錯する奇妙な味の16の物語を収録。
   ――裏表紙より

感想

表題作についてのみ。
どんな危険からも身を守ってくれるという安全のカード。その設定自体は有り触れたものだが、それを活用させていく発想が面白い。ただし結末は少しはっきりしない部分が有り、違和感が残る結果となってしまっている。


ご依頼の件

一言

細かい点に配慮が足りないのが残念。

目次

タブー
ご依頼の件
れいの女
夜の会話
真相
初夏のある日
防止対策
くしゃみ
アリバイ
外郭団体
出現したやつ
ある休日の午後
待遇
たのみごと
気の迷い
静かな生活
才能
話し声
あるシステム
新しい車
こころよい相手
むこうの世界
組み合せ
都市化現象
金銭と悩み
出張
退院
マドラー
バーであった男
ひと仕事
文字が……
おととい
もらった薬
西風
輝く星
やつらのボス
依頼はOK
結晶
窓の奥

梗概

若いころの事件をたねに、金をゆすられているあなた! 殺してもあきたらないほど、憎らしい人がいるきみ! おもいきって、“殺し”はいかがですか? ご依頼の件は必ずやりとげ、絶対安全。あなたには決してお迷惑をおかけいたしません。
常識的で、ありふれた世界に安住している人々の意識を痛撃し、人間の心の奥にひそむ願望をユーモアと諷刺で描いたショートショート40編。
   ――裏表紙より

感想

表題作についてのみ。
非常に短く纏まったオーソドックスなショートショートだが、殺人方法にかなり無理が有るような気がしてならない。最後も主人公が気付いて良さそうなものだ。


ありふれた手法

一言

父権について考えさせられる。

目次

総合診断所
捨てる神
風と海
石柱
あの星
吉と凶
天使
名前
山道
数学の才能
夜の山道で
監視員
職業
振興策
レラン王
ある土地で
異端
サイドビジネス
てがかり
仲間
ふりむいた顔
湖で
交錯
決断
波長
あるいは
忘れ物
一流のカジノ
ありふれた手法
現象

梗概

気が弱く、口べたで、ぱっとしない中年の男。ひとりバーで飲んでいた、この男に声をかけてきたのは、アワン開発サービスというよろず相談所の青年だった。この青年が男に提案した、かくされた能力を引き出すための計画。それはよくある、ありふれた手法のものだったが……。
ユニークな発想が縦横無尽にかけめぐる、さわやかにして強烈なパンチのショートショート30編を収録。
   ――裏表紙より

感想

表題作についてのみ。
題名通り“ありふれた”二重のオチと言える。主人公男性が持つ悩みは、現在の日本でも相当数の父親が抱えていると思われる。
人間は簡単に変わる事が出来ないが、一度変わってしまえば案外、劇的な変化が待っている物なのかも知れない。


凶夢など30

一言

そこはかとない不気味さを漂わせる。

目次

ウエスタン・ゲーム
王さまの服
暗示療法
深い仲
たねの効用
ひどい世の中
指示
ある夜の客
好奇心
鬼が
体験
夜と酒と
マイナス
ある一日
書斎の効用
夏の女
妖怪
才能を
手さげバッグ
川の水
退屈
病名
多角経営
甘口の酒
宿直
凶夢
目がさめて
印象
生きていれば
捕獲した生物

梗概

都会からはなれた小さな入り江で出会った老人と新婚の夫婦。その夜、老人が見たのは、新婚の二人が殺しあう夢だった。一年後、老人はまた同じ夢を見た。不思議な夢を気にした老人は、名産品を二人に送って様子をみる。礼状が届き、何事もなかったかと、安心する老人。この繰り返しが何度も続いたのだが……。
夢想と幻想の交錯する不思議な世界にあなたを誘う夢のプリズム30編。
   ――裏表紙より

感想

「凶夢」についてのみ。
老人の予知夢を除けば全てが有りそうな話であり、そこが恐怖である。しかし結果として二人の殺し合いを先延ばしに出来たのか、それとも老人が贈り物をしなければ軽い喧嘩で済んだのかは、謎である。
どちらにせよ、老人にとっては関係無い事だ、という辺りも重要か。


どんぐり民話館

一言

遂に1000編を超えた記念碑的作品。

目次

親切
お寺の伝説
王さま
事件の発生
こころよい人生
小さなお堂
酒の上の会話
秘密
なにか異様な
ふしぎな犬
出現
双眼鏡
音色
永遠の青春
影絵
さもないと
指紋の方程式
来訪者たち
ある人生
領主の館
征服の方法
旅の人
手段
青年とお城
ケヤキの木
神殿
行事
つきあい
応対
どんぐり民話館

梗概

引き抜かれたカカシのあとに生えた草の葉っぱ、雲母のようにキラキラする竜のウロコ、字の書かれた小さな石ころ――そんな奇妙なものばかりがあるというどんぐり民話館。そのどんぐり民話館を探しに、都会から一人の青年がやってきたが……。
いつまでも語りつがれる民話のような味わいで、さまざまな人生の喜怒哀楽を描いた31編。ショートショート1001編を達成した記念の作品集。
   ――裏表紙より

感想

表題作についてのみ。
不思議な感触が残る作品である。民話のようで怪奇のようで、しかしショートショートだ。星新一の後期らしい作品と言える。
オチ以外の何かを模索する作者の苦労が偲ばれる。それが報われるか否かは読者の手に掛かっていると言っても過言ではない。


これからの出来事

一言

自己の存在を否定された男の話。

目次

気ままな生活
ひとつのドア
想像のなか
山の出来事
ある古風な物語
交渉
安全な生活
小さな家
森での出来事
男と王妃さま
これからの出来事
支配について
会議のパターン
なにかの縁
能力と仕事
満開の季節
救いの声
木の下での修行
小さなバーでの会話
ひとつの段階

梗概

悪夢だと思いたい、信じられないような出来事。特殊な能力をもった青年の巧妙なビジネス。絶体絶命の危機から目覚めさせてくれる救いの声。満開の桜の季節に出会った秘密好きの美しい女――想像もつかないことが現実となってしまう未来社会を、あなたものぞいてみませんか?
技術と文明がもたらす21世紀社会のゆがみを見通して、痛烈な風刺で描きだしたショートショート21編。
   ――裏表紙より

感想

表題作についてのみ。
もしも自分が生きている世界が夢のようなものだったとしたら、自分はどうすれば良いのだろうか。絶望するか、何とか希望を見出すか――或いは現実を受け入れるか。
我々が住んでいるココが現実などという保証は何処にも存在しなく、有るのはただ自身の意志のような感情だけ。そんな中で何を為すのか、それを常に念頭に置いておけ、という教訓だろうと思う。


つねならぬ話

一言

ショートショートではないショートショート。

目次

はじまりの物語
風の神話
表紙の神話
天空の神話
海の神話
やじうま神話
さざれ神話
ブガン神話
しらけ神話
もしかしての物語
花も嵐も
旅情
海の若大将
お寺の昔話
天狗
宿屋
古戦場
満月
門前町
夢20夜
旅館
夜空
背中
老人
スパイ
ヨウカン
古い家
社会
花の女
災厄
夜の話
白い粉
風景
ネズミ
営業
昔の話
部屋
ささやかれた物語

梗概

海の下の、奥の奥で眠っている神の夢。大地をうごめき、すべてを食い尽くす不快なブガン。アステカの怪しげな薬草に酔って義経がみる昔日の幻。満月の夜にとらえた人魚を食べてしまった男たちのゆくえ――。
天地の創造、人類の誕生など語りつがれてきた物語が、いま奇抜な着想で生れかわる。あなたを空想の小宇宙へ誘う、幻想的で奇妙な味わいの52編のワンダーランド。
   ――裏表紙より

感想

なんとも評価のし難い作品である。形式としてはショートショートだが、別にオチを狙っている訳ではない。強いて言えば星新一独自のワールドが広がっている、とでも言おうか。全くの初読者だったら何を読み取れば良いのか、全く理解出来ないに違いない。
このような作品群をサラッと書いてしまう所に、星新一のショートショート作家として以外の一面を垣間見る事が出来る気がする。


きまぐれ遊歩道

一言

一筋縄ではなかった作者の人生が垣間見える。

目次

T 人びと、雑学的な
歴史と人びと
U 生活、エピソード風の
ロマンス
人生
アスピリン
日付
天才たち
タバコ
コースター
近所のネコ
落語
コペルニクス
歯あれこれ
会話とお茶
V 回想、断片的な
学校
やっと、いま……
音楽との出会い
アナトール・フランスの短編
農芸化学科を出た私
はじめての酒
高輪
空想の楽しさ
一〇〇一編
W 金銭問題、たまには
悪魔
小説作法
発想のもと
経済問題
ひまへの対策
流行とは
すべてインフレのせい
香港
演出
ネパール銀座
X 世の中、あれこれ
テディ・ベアとの長いつきあい
イスラムとは
思考の泡*
思考の泡**
鴎外の作品について
懐古の流行
隣席の少年
友人
ある明治の女
マンローをめぐって
遍路

梗概

空想は、ぽかりとは出てこない。空想を生みだすものは、まず関心。好奇心をもって、ものを見ること――。悪魔を題材に話を作り、昔の東京を懐かしんだ後に、ネパール銀座に思いをはせる。
好奇心のおもむくまま奔放に広がる一話一話が、意外性に満ちた新発見をもたらす。「疑うことは美徳である」と考える著者の創作の秘密がかいま見えるカルチャーエッセイ集。
   ――裏表紙より

感想

ショートショート作家である星新一のエッセイ集。大量の豆知識、人生の回顧録、小説の自らの書き方、世相の移り変わりというバラエティに富んだ内容が楽しめる。小説から受けるスマートな印象とは裏腹に、何処か歪んだ、それでいて真っ当な道を歩んだ作家の半生は、重厚長大なモノだったに違いない。この本から読み取れるのは、そのホンの一端でしかないハズだ。


明治の人物誌

一言

大昔と言うには近代的過ぎ、現代と言うには大雑把過ぎる時代。

目次

中村正直
野口英世
岩下清周
伊藤博文
新渡戸稲造
エジソン
後藤猛太郎
花井卓蔵
後藤新平
杉山茂丸

梗概

星新一の父・星一は、苦学しながらアメリカの大学を卒業し、帰国して製薬会社をおこした。事業は成功したが、たがて政争に巻き込まれ衰退していく。それでも常にエネルギッシュで近代人的な生き方を貫いた生涯だった。彼の夢と理想に手をかした野口英世・伊藤博文・エジソン・後藤新平など、近代国家の形成期に活躍した明治人たちとの交流の中から、星一の生涯を辿った異色の伝記。   ――裏表紙より

感想

明治時代に活躍した人物達の伝記的エッセイ。部分的に面白いエピソードも多いものの、時系列的な描かれ方が希薄で、偉人達の相互間の繋がりがスッキリと頭に入って来なかった。
それにしても明治という時代は、大昔と言うには近代的過ぎ、現代と言うには大雑把過ぎる。そういう混沌とした時代を巧く生き抜いた彼らの経験は、今の時代に何処まで通用するだろうか。そのような空論を想像できるのが星新一を初めとした、狭間の世代なのかも知れない。


ショートショートの広場1

一言

素人作品とは思えない質の高さに驚き。

目次

できすぎ
改造モデルガン
情報過多時代
バス停のあのグループ
三時五分前
あるかもしれない
キャベツ
最高の喜び
或る夜の出来事
人魚の日
階段
花火
可愛い誤算
念力
不条理な夜にしどけなき猫
いまに分る
DOY(ドゥーイ)
ある日突然
あなた
成就
いたい
幸せ色の空
コンピューター・エイジ
愚か者の願い
前足をなくした犬の話
魔法の薬
端午の幟
手袋
読むな
雨美濃
最後の神だのみ
ホームシック・ホームシック
帰郷
びん
平和な時代
猫に卵
ちょっとしたコツ
十時五十六分
危険がいっぱい
お迎え
擬似イベントビデオ
塑性
はっはっはっ
よけいなものが
アルファ商会
角の店
おとぎ噺
二重人格
写真
完全犯罪
ムラサキの鍵
会話
奇数
“海”

梗概

星新一ショートショートコンテスト(一九七九年〜一九八三年)に応募の二万五六二〇編の中から、最優秀作、優秀作の五八編を収録。どこにでもありそうな話から、空前絶後の空想の産物まで、プロも驚くアイデアの妙、そして文章の冴えをご満喫ください。編者による全作品への選評も同時収録!   ――裏表紙より

感想

最優秀作「できすぎ」、「バス停のあのグループ」、「或る夜の出来事」、「花火」、「DOY(ドゥーイ)」、「幸せ色の空」、「愚か者の願い」、「読むな」、「“海”」についてのみ。
「できすぎ」はショートショートの見本のような作品。文句無く素晴らしい。「幸せ色の空」、「愚か者の願い」も傾向は異なるが、正統派。
「バス停のあのグループ」、「DOY(ドゥーイ)」は何となく似た雰囲気を感じた。良い意味で“変”な作品である。
「或る夜の出来事」は星新一の後期のような空気を持つ。星新一は自信で「このような作品は書けない」と言っているが、根底に流れている物は同じではないか?
「花火」は面白さがイマイチ理解出来ず。感性が合わなかったのかも知れない。
「読むな」は一発ネタとしては面白い。ただ、既に似たような作品が有るような気がしないでもない。
「“海”」は、「バス停のあのグループ」、「DOY(ドゥーイ)」と奇妙な雰囲気が似ているが、それだけでは語り尽くせない“何か”が有る。大袈裟に言えば、人類全ての“何か”を表しているような、そんな感覚を覚える。


ショートショートの広場2

一言

多種多様な素人作品集の第2弾。

目次

懺悔
右腕そして……
親愛なるジョージへ
私は誰でしょう
クリスマス・プレゼント
突発性疾走症候群
朝ごはんが食べたい
レストラン
吸血鬼志願
よく似た女
僕の父ちゃん
殺人テレフォンショッピング
乗り越し街道
ぽん!
病の果て
自動幸福販売機
倦怠期
阿美がはこんだ不思議な寓話
名人芸
丸窓の女
ふられ薬
河童
選ばれざる者
禁断症状
ハッピー・ドッペルゲンガー
今年の夢
宇宙ぐうたら大賞
空想ゲーム
命の洗濯
こんまんた
心のすべて
変身
白馬の騎士
盲点
た・ま・ご
道路掃除夫
待ちぼうけ
サンタクロースの身代金
初恋
迷路の家
しゃべるな
旅と顔
心残り
妻はテレパス
最後のギャンブル
もったいない
ラスト・コール
名付け親
ご近所のピアノ
過去覗き鏡
踏切
電話
命の電話
確率予測
卒業
生命保険
約分

梗概

何げない一瞬に、ふと垣間見える、人生の機微、喜びと哀しみ、素晴らしいアイデア、底知れぬ闇、ブラック・ユーモアなど、人とこの世の種々相をミニミニのスタイルで描く、ショートショート。全国から寄せられた厖大なその作品群から、星新一氏が選び抜いた、傑作六十編に、その全作品評を付す。   ――裏表紙より

感想

最優秀作「よく似た女」、「ふられ薬」、「空想ゲーム」と、8点以上の「迷路の家」、「しゃべるな」、「最後のギャンブル」、「命の電話」についてのみ。
「よく似た女」は、何時の間にか主従が逆転しているとでも言おうか。表面上にもそれなりの面白さがあるが、裏の構成を読み解くとさらに奇妙な感覚に陥る事が出来る。
「ふられ薬」は、やや平凡な印象。オチは文句無いが、それだけと言えなくもない。「迷路の家」も同様に凡庸さが残る。途中までの不可思議な雰囲気は良かったが。
「空想ゲーム」は虚構が持つリアリティを、これでもかというくらいに見せ付けてくれる作品。そもそも自分とは何なのか、という哲学的な問題にも繋がっていきそうだ。
「しゃべるな」は不気味。そして毒の強いラストは、なかなか。よく読むと「命の電話」も同様に思える。内容は全く異なるが。
「最後のギャンブル」は少しオチが説明的過ぎる感が有る。ちょっと設定も残酷。


ショートショートの広場3

一言

コンテストの形式変更で、少し駄作の比率が高かったか。

目次

小人
おとうさん
眠りの町
特設電話
新薬
ありきたりな……
悪事の報いは?
選挙騒動
ロシアン・ルーレット
趣味人
精神感応剤
ロマンチスト
正しいスパイの見分け方
結婚指輪
愛子より
超巨大迷路殺人事件
ガス漏れ報知器
知能犯
妖怪談義
透視眼
ダーツ
お見合い
隠れ家
調教
埋蔵金
シートベルト
犯罪パーフェクト
バッハの時間
善意の嘘
偽造屋マック
すっぽん坊や
悪い口癖
親切
職業柄
丘の上の紳士
殺人志願
結婚記念日
夢のなかで
やっぱり
後継ぎ
ためらい
搾取
ためらわれる理由
透明人間
眼には眼を
慢心の陥穽
生きている箱
願望
手作り
特効薬
最後の一文
紅白ストライプの鉛筆
仮装舞踏会
カメレオンたち
なんとなく
性格改造
あるボランティア活動
期限切れ
撮影会
握手
表のトラック

梗概

アマチュアであっても、ショートショートの傑作は書ける!? プロとの差は、秀でた作品をたくさん生み出せるか否かなのです。――『小説現代』誌上で毎月行われている“星新一ショートショート・コンテスト”入選作二年間分の中から選び抜かれた六十一編と、選者による全作品への選評も一括して収録。   ――裏表紙より

感想

「特設電話」、「ロシアン・ルーレット」、「知能犯」、「透視眼」、「後継ぎ」、「ためらい」、「搾取」、「なんとなく」についてのみ。
「特設電話」は現代人なら引っ掛からないんだろうな、という気がする。多分、当時としては珍しかったのだろうが。何の事かはネタバレになるので書かないが。
「ロシアン・ルーレット」は、ちょっとしたドラマだ。悲劇でもある。どうせなら結婚届も出てくれば面白かった。
「知能犯」は巧い。タイトルに偽り無し。最後の台詞は蛇足な気もするが。
「透視眼」は男性ならば誰しもが空想する事だろうな。でもこんなオチとは。予想外。
「後継ぎ」は純粋に面白い。しかし子供を1人しか産めない問題はどうするのか。それが女児だったら、やはり乗り移るのだろうか。その辺りの問題が気になる。
「ためらい」は素人っぽい文章だが、狙いが良い。こういうオチらしくないオチも良いものだ。逆に「搾取」は本家の星新一の作品を思わせる。当然、良い出来だ。
「なんとなく」は、なんとなく奇妙な気分にさせられるのが良い。


ショートショートの広場4

一言

選者と評価が一致しない作品が多い。

目次

失恋
夫婦
テレビ
女心
味噌汁の味
観察日記
スパイ
神出鬼没
制服
代わりに
アフォリズム
愛妻弁当
列車旅行
霧の立つ時
恵子
完全な自白
奇病
金太郎侍
万能符
動く看板
みんなのデジャ・ヴ
霧の中
りっぱな息子
人助け
傘をさしたら
十三枚のオレンジカード
拷問くらべ
輪廻天才
一時五十分
状況信用
まったく、最近の……
三度目の正直
十分の六
悲しげな死神
ハッピーエンド
告白は羊たちに
白昼堂々
4分の1以下
なんでも屋
命がけ
嫁と姑のいる風景
死後の世界
不幸
尻とり病
交通事情
銀行強盗
働き者だったお父さん
賢者の贈り者PARTU
意思の疎通
奇跡よ起きろ、ガンに冒された息子に残された日々はわずか――
よい環境
出世株
正直者のレストラン
テレビゲーム
拾った犬
探す
ことばのゴミ捨て場
公務員が辞めるとき
賭け

梗概

プロの作家も顔負けの、すばらしいアイデアと生きのいい文章の、極上のショートショート六十編。
人生の喜怒哀楽、森羅万象を、一瞬のうちに照し出し、読者をアッと驚かせてくれるショートショートを読む醍醐味を満喫させてくれる好評シリーズ第四巻。選者星新一氏による全作品への選評つき。
   ――裏表紙より

感想

8.5点以上の「味噌汁の味」、「悲しげな死神」、「尻とり病」についてのみ。
「味噌汁の味」は悪くは無いが、結末が読めてしまうのが痛い。もう一捻りした方が良かった。
「悲しげな死神」は巧さを感じると共に、何処と無く洗練されていない印象も受けてしまう。少しオチが込み入り過ぎている所為だろうか。
「尻とり病」はシュールながら、終わりでのアクセントも程好く効いている。殺伐とした独自の世界観も構築できており、好感触。


ショートショートの広場5

一言

相変わらず面白い素人作品集シリーズ。

目次

唯一の楽しみ
神の恥辱
因果
言えよ
薄命
フクロウと渋茶
第二十七夜(画廊)
目測名人
美人の嘆き
座禅
金属探知機
君の願いを
笑いを噛み殺す
つけられている女
招待状
一週間
再会
巧妙な手口
忘れられた人
究極の抹殺弾
狭まる
アイドル誕生
夫の秘密
超高齢社会
高杉晋作の悪戯
医学の世界
言葉にできない
しめ切り
理由
主婦業
階段
素直な彼女
天国か地獄か
どうしたら、死ぬ?
取材のイロハ
役場にて
殺意
シンポジウム
殺人
……殺人事件
孤独の叫び
銀行振り込み
運気予報
おかえりなさい
幽霊 到来
?理!?
鶴の『恩返しは御免だ!』
こどもの相談室
最近のロボット
手荷物
座席
懺悔
前科
銀河見栄張り人
世のために
新しい差別
占い確率
気にくわない強盗
究極の試験問題

梗概

アッと驚く結末に思わず感嘆、そしてしんみり……。簡潔な文体とわずか数ページの活字世界に展開する日常の不可思議と人生の悲喜こもごも。プロも顔負けのアイデアと、ストーリー構成の妙が冴えわたる奇想天外のショートショート61編を収録した超人気シリーズの第5集。選者星新一による全作品への選評つき。   ――裏表紙より

感想

8点以上の「唯一の楽しみ」、「つけられている女」、「一週間」、「再会」、「蟻」、「しめ切り」、「天国か地獄か」、「……殺人事件」、「運気予報」、「幽霊 到来」、「?理!?」、「こどもの相談室」、「座席」、「懺悔」、「世のために」、「新しい差別」、「薬」についてのみ。
「唯一の楽しみ」、「再会」は何となくオチが読めてしまう。「蟻」も同じくオチは読めるが、話の運びが巧い。
「つけられている女」は悪くはないが、ストンと納得できない。「天国か地獄か」も同様。オチが読めない代わりに文章にくどさが残っている。
「一週間」は秀逸。こんな生活方法が有ったとは。現実にも有りそうで良い。「こどもの相談室」も同様。これは悲劇なのかハッピーエンドなのかは考えさせられる処だが……。
「しめ切り」、「幽霊 到来」は思いも寄らぬ終わり方。しかしちゃんと伏線が張られている処が素晴らしい。
「……殺人事件」、「世のために」、「新しい差別」は現実世界への皮肉だろうか。
「運気予報」は途中の展開までは凄く良かったのだが、オチが詰まらなかった。あの世界観をもう少し広げて見せて欲しかった。
「?理!?」は短さが取り得か。しかしタイトルの意味が分からない。「懺悔」も短いが、こちらは逆にオチが弱い。
「座席」は文句無く面白い。現実に有りそうで無い設定に予想も付かない終わり方。ショートショートの見本と言える。
「薬」は悪くないが、全てに於いて平凡。もう少し秀でた部分が欲しい。


ショートショートの広場6

一言

相変わらず楽しい素人作品集。しかし良悪の差が拡大している気がしなくも無い。

目次

セールスレディ
動機
呑人壺
過去
究極の合理主義者
エミコのバス
健康法
優しい泥棒
自然の肉
突然変異
心霊手術
白昼夢
団欒
エレベーター
訪問恐怖症
不況
密かな楽しみ
虚言
執行人
不眠症の薬
失業
ねじ
あっかんべぇ
地獄
仮面の時代
月下のユング
大変だ!
決心
道徳の国
くよくよ
喫茶店「二重人格」のマスター
真夏のサンタクロース
番犬
ケン太君
もしもシマウマがこんなことを考えていたら……
値札の女
別離
植物人間
テレフォン人生相談
コンピューターお見合い
水増し出張
スペシャリスト
宇宙人の応答
侵略
切捨て御免
神のご意思
待っていたこの日
犬の散歩
不倫のにおい
一枚上手
薬効
ある変身
手紋
人員削減禁煙作戦
希望の扉

梗概

奇想天外の発想や意外や意外の結末に思わず頬がゆるむ、魅惑のショートショートワールドへようこそ! 甘味で、ちょっぴり苦いひとときの夢に酔いしれて、疲れた頭もきりりとリフレッシュ! 選び抜かれた極上のショートショート57編を収録した超人気シリーズの第6集。選者星新一による全作品への選評つき。   ――裏表紙より

感想

8点以上の「セールスレディ」、「呑人壺」、「過去」、「エミコのバス」、「健康法」、「突然変異」、「団欒」、「エレベーター」、「密かな楽しみ」、「虚言」、「不眠症の薬」、「失業」、「地獄」、「決心」、「道徳の国」、「喫茶店「二重人格」のマスター」、「真夏のサンタクロース」、「番犬」、「ケン太君」、「もしもシマウマがこんなことを考えていたら……」、「値札の女」、「別離」、「水増し出張」、「侵略」、「待っていたこの日」、「犬の散歩」、「一枚上手」、「薬効」についてのみ。
「セールスレディ」、「虚言」、「待っていたこの日」はよく出来ている。アリガチな出だしだが、結末は予想外。「健康法」、「失業」も同様。前者は現代批判と宇宙人が何処まで考えていたか、という事まで考えさせる。後者は死神の真意が気になる。「エレベーター」、「水増し出張」も現実に有り得ると思わせるのが良い。「真夏のサンタクロース」はサンタクロースと殺人という全く異なるファクターを結び付けたのが秀逸。「一枚上手」は、どちらが上手だったのだろうか。
「呑人壺」は少し期待外れ。星氏の評価は高いが、イマイチこういうラストは好きではない。さらっとしている処は評価出来るが。「侵略」は宇宙人の思考過程に無理が有る。
「過去」はユニーク。名前が50音順になってるのも巧い。「突然変異」も変わっている。「もしもシマウマがこんなことを考えていたら……」は素直に笑える。笑ってしまって良いのか、と一瞬思うが。
「エミコのバス」は奇妙なのがウリ。しかし少し奇妙さが足りないか。「喫茶店「二重人格」のマスター」も奇妙な話だが、随分と方向性は違う。「別離」は少し感動する。
「団欒」、「密かな楽しみ」、「不眠症の薬」、「地獄」、「値札の女」は、やや平凡か。
「決心」、「道徳の国」、「犬の散歩」はダークな終わり方だ。「ケン太君」、「薬効」は、もっとブラック。たまには悪くない。「番犬」のような軽い話も同様。


ショートショートの広場7

一言

掲載作品の質が少し下がったような気がする。

目次

終末と発端
視線カッター
泥の船
指定席
ソレハ嘘デス
血の相似形
保証
拷問
ザ・ヤラセ
ベスト300
脱日常
眠りから覚めると
最後の叫び
哀れなシンデレラ
天罰
おじいちゃんの誕生パーティー
ぶちこわし
隠し味
バスジャックの人質
勧誘の掟
親の愛情
試験
健康維持食品
宇宙からの死者
安全買います
自動販売機
辞表
無言電話
中毒
生命保険
ああ幸せ
当選者
寄生虫
メンテナンス
いじめられるわけ
隣人
一日一笑
賭け
死臭
上へ……
ほぼ完璧な答案
変化
神々の最終決断
大人免許
風を呼ぶ男
失敗の原因
苦労
食物と美女
さわれぬ神
嘘をつける薬
失踪
手品
国家公務
タイムラグ
親孝行
質問
離婚理由
二度目の階段
ミステーク
家族愛
コンビニ・ウォーズ

梗概

人の心の機微を穿つ一瞬、意外なアイデア、ブラックなユーモア。予想外の結末につい頬もゆるんでしまう、これぞショートショートの真髄。疲れた頭をリフレッシュ、思わず唸る傑作ショートショートの玉手箱。星新一氏が選び抜いた傑作64編に、選者による全作品への評価つき。超人気シリーズ、待望の第7集。   ――裏表紙より

感想

8.5点以上の「脱日常」、「天罰」、「隠し味」、「上へ……」、「失敗の原因」、「苦労」、「嘘をつける薬」、「失踪」、「質問」、「離婚理由」についてのみ。
「脱日常」は伏線の張り方が巧妙。巧妙過ぎて気付かれない可能性も……。
「天罰」は微妙にハッキリしない。信心深い男が犯人だったのか否か。気になる。
「隠し味」は二重のどんでん返し。しかも軽い割には作りがしっかりしている。
「上へ……」、「苦労」は独自の世界観を作り上げている。奇妙な現実感。「失踪」も同様だが、オチが読めてしまうのが痛い。
「失敗の原因」は簡単なオチのようで、実は落差が激しい。普通なら思い付かない。「嘘をつける薬」も始まりは平凡ながら、なかなかの傑作。「離婚理由」もストンと納得出来る。
「質問」は評価が難しい。面白いのだが、少しコジツケが過ぎる気もする。


ショートショートの広場8

一言

今回は低調気味だったか。秀逸な作品が少ない。

目次

伝説の英雄
ウワサの岡本よう子
秘密
不安
私の自慢料理
三つのお願い
お告げ
死んでも離れない
旅先にて――仏像
予想写真
聞いても、いい?
決心
得心
命が五つ
常識
幸福販売会社
イミテーション
ごめんなさい
願いごと
ハッピーコール
美貌の人妻
最後の一日
滝壺
災いの杖
黒ずくめの医者
癒しの時
丈夫な身体?
みんなの願い
仙女の泉
中身
登校拒否
ずる休み
超能力
赤い糸
職業病
あの日に帰りたい
先祖
天才の赤ん坊
復活の薬
完璧な……
人の為になることを
家族募集
リアリティ
ドイツの石
カタログ
再会
スイッチ
おかしな仏像
条件
評判の良いバス

梗概

思わず唸る傑作ショートショートの玉手箱。全国から寄せられた厖大な作品群から星新一氏が選び抜いた太鼓判傑作集。プロも驚く奇想天外なアイデアと冴えわたるブラック・ユーモア。思わずニンマリはたまたドキリ。これぞショートショートの醍醐味! 編者による全作品への選評つき。超人気シリーズ第8弾。   ――裏表紙より

感想

8点以上の「伝説の英雄」、「三つのお願い」、「お告げ」、「死んでも離れない」、「旅先にて――仏像」、「予想写真」、「聞いても、いい?」、「決心」、「丈夫な身体?」、「みんなの願い」、「仙女の泉」、「超能力」、「赤い糸」、「職業病」、「あの日に帰りたい」、「先祖」、「カタログ」、「再会」、「スイッチ」についてのみ。
「伝説の英雄」、「仙女の泉」、「再会」は軽い。その軽さが良い。しかし「超能力」も同じく軽いものの、こちらは余りにも説得力に欠ける。
「三つのお願い」、「死んでも離れない」は出足がオーソドックスなタイプで、その場合は予想外の結末を付けねばならない。しかし確かにこのオチは予想外ではあるが、あまりスッキリと納得は出来ない。惜しい。逆に「お告げ」、「旅先にて――仏像」はオチはそれほどでもないが、程度が良い。そこまで期待させないからだ。
「予想写真」は、これで商売が成り立つのか心配になってしまう。「職業病」も、それまでに成功して来た理由が謎。さらに「スイッチ」も、少し勘繰ってしまう。それまでに話題にならなかったのか?
「聞いても、いい?」は異色。文章のテンポの良さでグイグイ引き込まれるのも良い。
「決心」は良い話だ。こういうショートショートを書けるのは、貴重な才能だと思う。「先祖」も美談に入る、と言うと不謹慎か。
逆に「丈夫な身体?」、「みんなの願い」はブラックユーモア。世の中、裏で何を考えられてるか分かったもんじゃない。「あの日に帰りたい」は、喜劇なのか悲劇なのか……。
「赤い糸」は不運としか言い様が無いが、少しストーリーが飛躍し過ぎかな。
「カタログ」は秀逸。不可思議な世界観とオチとを見事に両立させている。


ショートショートの広場9

一言

オチが先読み出来てしまう作品が多い。

目次

玉手箱
過去と将来
滅びゆく日
愛情運
時間移動
最終面接
誘拐電話
一億円を手に入れた男たち
症候群
特急列車
拷問
幽霊保険
かぐや姫
言わずもがな
しゃべる犬
大男
出稼ぎ
労使関係
イエスの教え
さっぱりする機械
老の性
指定席
生きがい
どうやって?
天使と三つの願い事
自称の詐欺師
解雇の理由
不審人物
藪の中の二人
尊厳死
主人公
何杯食べても……
優秀な外科医
願いがたくさん
永遠の決闘
勝訴
電話ボックス
再会
変なんです。
優先順位
ペナルティー・キック

梗概

星新一氏が自信をもって太鼓判を押した傑作ショートショートが勢揃い。冴えわたる感性、ゾクッとくるブラック・ユーモア、キラリと光るアイデアの数々。どれをとっても粒揃い、ショートショートの第一人者が厳選した、思わず唸る珠玉の名作ばかりです。全作品への選評も同時収録。超人気シリーズ第9弾!   ――裏表紙より

感想

8.5点以上の「最終面接」、「誘拐電話」、「一億円を手に入れた男たち」、「症候群」、「客」、「特急列車」、「拷問」、「幽霊保険」、「かぐや姫」、「言わずもがな」、「しゃべる犬」、「闇」、「大男」、「出稼ぎ」、「どうやって?」についてのみ。
「最終面接」は合格か不合格か、どちらでもストーリーを作れる。もう一捻り欲しかった。「かぐや姫」はオチが読めてしまうのが弱い。やはり捻りが欲しい。
「誘拐電話」は、そのままでも楽しめるが、その後の少女の運命を考えるとダークな感じ。
「一億円を手に入れた男たち」はユニーク。誰でも似たような事を考えた事は有る筈だが、巧い。
「症候群」は奇妙さで勝負するのかと思いきや、意外な結末。やられた。
「客」は何らかの逸話を元に作られたと思われるが、それが何なのか分からない。百人分の料金を払ったなら、百個の頭を持つ妖怪だったというオチの方がスッキリするのではないか。「特急列車」も列車事故に結び付けない方が良いと思う。
「拷問」は、どうして拷問を受ける事になったのかが気になる。
「幽霊保険」は奇妙な話だ。それでいながら現実的な帰結。そのギャップが良い。
「言わずもがな」は欠点が少ないが、平凡な印象は拭えない。
「しゃべる犬」は主人公が実は犬だった、というオチかと思ったら、どうも腑に落ちない。よく読んでみると真相が分かった。なるほど、という感じ。
「闇」はアリガチなネタ。もう少し工夫しないといけないと思う。
「大男」はタイトルの付け方が不適切な気がしなくもない。「出稼ぎ」はタイトルの所為でオチが読めてしまう。
「どうやって?」は巧い。ショートショートの名作の類いに入るだろう。奇妙さも程が良く出ている。


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