タイトル | 出版社 | 初版日 | 勝手な採点 | 通販 |
---|---|---|---|---|
ロードス島戦記 灰色の魔女 | 角川スニーカー文庫 | 1988年04月10日 | ★★★☆ | 購入 |
ロードス島戦記2 炎の魔神 | 1989年02月25日 | ★★★ | 購入 | |
ロードス島戦記3 火竜山の魔竜 上巻 | 1990年02月01日 | ★★★☆ | 購入 | |
ロードス島戦記4 火竜山の魔竜 下巻 | 1990年07月01日 | 購入 | ||
ロードス島戦記5 王たちの聖戦 | 1991年03月01日 | ★★★☆ | 購入 | |
ロードス島戦記6 ロードスの聖騎士 上巻 | 1991年12月01日 | ★★★★ | 購入 | |
ロードス島戦記7 ロードスの聖騎士 下巻 | 1993年04月01日 | 購入 | ||
ハイエルフの森 ディードリット物語 | 1995年03月01日 | ★★☆ | 購入 | |
黒衣の騎士 | 1998年10月01日 | ★★☆ | 購入 | |
ロードス島伝説 亡国の王子 | 1994年09月01日 | ★★★☆ | 購入 | |
ロードス島伝説2 天空の騎士 | 1996年07月01日 | ★★★☆ | 購入 | |
ロードス島伝説3 栄光の勇者 | 1997年04月01日 | ★★★★ | 購入 | |
ロードス島伝説4 伝説の英雄 | 1998年04月01日 | ★★★★☆ | 購入 | |
ロードス島伝説5 至高神の聖女 | 2002年11月01日 | ★★★★ | 購入 | |
ロードス島伝説 永遠の帰還者 | 2000年01月01日 | ★★★ | 購入 | |
新ロードス島戦記 序章 炎を継ぐ者 | 1999年05月15日 | ★★☆ | 購入 | |
新ロードス島戦記1 闇の森の魔獣 | 1998年09月01日 | ★★☆ | 購入 | |
新ロードス島戦記2 新生の魔帝国 | 2001年04月01日 | ★★☆ | 購入 | |
新ロードス島戦記3 黒翼の邪竜 | 2001年12月01日 | ★★★ | 購入 | |
新ロードス島戦記4 運命の魔船 | 2004年11月01日 | ★★☆ | 購入 | |
新ロードス島戦記5 終末の邪教(上) | 2005年11月01日 | 購入 | ||
新ロードス島戦記6 終末の邪教(下) | ||||
魔法戦士リウイ0 | 富士見ファンタジア文庫 | 2003年03月25日 | ★★★☆ | 購入 |
魔法戦士リウイ1 | 1998年10月25日 | ★★ | 購入 | |
魔法戦士リウイ2 | 1999年02月25日 | ★☆ | 購入 | |
魔法戦士リウイ3 | 1999年06月25日 | ★★★ | 購入 | |
魔法戦士リウイ4 | 1999年12月25日 | ★★☆ | 購入 | |
魔法戦士リウイ5 | 2000年04月25日 | ★★☆ | 購入 | |
魔法戦士リウイ6 | 2000年08月30日 | ★★★☆ | 購入 | |
魔法戦士リウイ7 | 2001年03月25日 | ★★★ | 購入 | |
魔法戦士リウイ8 | 2001年07月25日 | ★★☆ | 購入 | |
魔法戦士リウイ9 | 2002年02月25日 | ★★★☆ | 購入 | |
剣の国の魔法戦士 | 1993年02月15日 | ★★☆ | 購入 | |
湖岸の国の魔法戦士 | 1997年08月25日 | ★★★☆ | 購入 | |
砂塵の国の魔法戦士 | 2003年09月25日 | ★★★☆ | 購入 | |
賢者の国の魔法戦士 | 2004年08月25日 | ★★☆ | 購入 | |
呪縛の島の魔法戦士 | 2005年03月25日 | ★★★ | 購入 | |
牧歌の国の魔法戦士 | 2005年02月25日 | 購入 | ||
漂流伝説クリスタニア1 | 電撃文庫 | 1993年06月10日 | ★★★★ | 購入 |
漂流伝説クリスタニア2 | 1993年12月10日 | ★★★☆ | 購入 | |
漂流伝説クリスタニア3 | 1994年12月25日 | ★★★ | 購入 | |
漂流伝説クリスタニア4 | 1996年02月25日 | ★★★☆ | 購入 | |
はじまりの冒険者たち レジェンド・オブ・クリスタニア | 1995年07月25日 | ★★★ | 購入 | |
クリスタニア 封印伝説序章 | 1995年08月25日 | ★★☆ | 購入 | |
封印伝説クリスタニア | 2000年08月25日 | ★★ | 購入 | |
神王伝説クリスタニア<上> | 1996年01月25日 | ★★★☆ | 購入 | |
神王伝説クリスタニア<下> | 1996年06月25日 | 購入 | ||
クリスタニア 傭兵伝説序章 | 1997年04月25日 | ★★★ | 購入 | |
傭兵伝説クリスタニア 暗雲の予兆 | 2001年03月25日 | ★★★★ | 購入 | |
傭兵伝説クリスタニア 過去からの来訪者 | 2001年06月25日 | 購入 | ||
傭兵伝説クリスタニア 異界の決戦 | 2002年03月25日 | 購入 | ||
英雄伝説クリスタニア 赤き剣の戦士 | 1997年11月25日 | ★★★ | 購入 | |
蟻帝伝説クリスタニア | 1998年08月25日 | ★★★ | 購入 | |
黄金伝説クリスタニア | 1999年04月25日 | ★★★ | 購入 | |
暗黒伝説クリスタニア | 2000年12月25日 | ★★★ | 購入 | |
スターシップ・オペレーターズ1 | 2001年03月25日 | ★★ | 購入 | |
スターシップ・オペレーターズ2 | 2001年11月25日 | ★★ | 購入 | |
スターシップ・オペレーターズ3 | 2002年06月25日 | ★★☆ | 購入 | |
スターシップ・オペレーターズ4 | 2003年06月25日 | ★★☆ | 購入 | |
スターシップ・オペレーターズ5 | 2004年11月25日 | ★★☆ | 購入 | |
スターシップ・オペレーターズ6 | 2005年05月25日 | ★★★ | 購入 | |
スターシップ・オペレーターズ7 | ||||
ギャラクシーエンジェル1 | 富士見ファンタジア文庫 | 2002年11月25日 | ★★★ | 購入 |
ギャラクシーエンジェルEX | 2003年07月25日 | ★★☆ | 購入 |
丁寧に作られていて好感が持てる。
第T章 冒険者たち 第U章 アラニアの黒い影 第V章 救出 第W章 大賢者 第X章 決戦!! 第Y章 マーファの娘
30年前の魔神との戦いの傷も癒え、平和の続くロードス島に、新たなる戦乱の兆しが現れた。暗黒の島マーモの皇帝ベルドが、カノン王国に進攻したのだ。しかも、彼の背後には謎の魔女、カーラの姿があった!
その頃、辺境の村ザクソンの青年パーンは、己の正義感の赴くまま、神官のエト、ドワーフの戦士ギム、魔術師スレインらとともに旅立とうとしていた。自分の前に立ちはだかる、大いなる運命も知らずに……。 ――裏表紙より
非常に丁寧に作られた上質な中世世界風ファンタジー小説。ライトノベルの基本形の一つと言える作品である。
ストーリーもキャラクターも図抜けている訳ではないが、確かな文章力でストレス無く読む事が出来る。ライトノベルとしては堅めの文章なので、寧ろ一般的な小説を読んでいる人の方が初読時の違和感が少ないかも知れない。
敵役カーラの存在が印象的である。
相変わらずの丁寧さ。
プロローグ 第T章 砂漠の王国で 第U章 ヒルトの戦い 第V章 救出! 第W章 アラニアの賢者 第X章 砂塵の塔 第Y章 そして、解放されるもの
あの忌しいカーラとの戦いから二年。カーラのサークレットを奪い去っていったウッド・チャックを求める、パーンとディードリットの旅は続いていた。
炎の魔法を操るという謎の魔法使いの噂を聞き、砂漠の国フレイムにやってきたパーンたちに、砂漠の蛮族と、恐るべき力を秘めた炎の魔神が襲いかかった!
不毛の地、「風と炎の砂漠」を舞台にパーンたちの新たな戦いが始まる…… ――裏表紙より
前作同様に丁寧に作り込まれた中世風ファンタジー。やや堅めの文章が作中の雰囲気に見事にマッチしている。
物語としての面白さは飛躍的に上がったが、敵役が定型的過ぎて魅力が無いのが残念。味方のキャラクターは巧く描いていると思うのだが。発売当時に読んでいたら印象が違ったのだろうけれども。
感情の無いキャラクターに対する考察が深い。
プロローグ 第T章 狂戦士 第U章 傭兵王 第V章 火竜の狩猟場 第W章 盗賊ギルド 第X章 敗北 第Y章 水竜エイブラ 第Z章 火竜山の戦い
戦乱の収まらぬロードス島。アラニアの地は、王弟ラスター公派とノービス伯アモスン卿派に分かれての内戦の真っ只中にあった。
その内戦を嫌い、ザクソンをはじめアラニア北部の村々は王国から独立しようとしていた。そして、その中心にパーンやスレインたちの姿があった。
一方、暗黒の島マーモの騎士アシュラムは、絶対的な権力を与えるという魔法の宝物“支配の王錫”を求める旅に出ていた。その宝物は、世界最強の種族である古竜が守っているのだ。
アシュラムの野望を阻止するため、パーンたちの新しい冒険の旅が始まる。 ――上巻表紙裏より
支配の王錫をめぐる旅は続く。水竜エイブラの棲む青竜の島へと渡るべく、オルソンたち一行は自由都市ライデンへとたどり着いた。そこで小さな草原の妖精、グラスランナーの吟遊詩人と出会った一行は、味方になるはずの盗賊ギルドを相手に大騒動へ。
一方、火竜の狩猟場でシューティングスターとの戦いに敗れたパーンたちは、復讐に燃えるフレイム王カシューと共に、ライデンまで早馬を走らせていた―― ――下巻裏表紙より
ストーリー的には2体のドラゴンを倒すだけなのだが、感情が無いオルソンというキャラクターの成長も合わせて描かれており、そこが見所となっている。
前半部ではドラゴンを圧倒的な存在として認識させつつも、それをどうやって攻略するのだろうかと読者に考えさせるように仕向けているのも巧い。
中編集だが、どれもが良作。
プロローグ 第T章 ハイランドの竜公子 第U章 ヴァリスの神官王 第V章 カノン王の帰還 エピローグ
アラニア王として立て!
パーンはカシュー王やスレインらからそう説得を受ける。しかし、パーンの心の中には、拭うことのできないわだかまりがあった。
王の資質、王となる意義を追い求めて、パーンたちは混乱の極みにあるロードス島南部に向かって、苦難の旅を再開する。モスへ、ヴァリスへ、そしてカノンへ。
戦乱の渦中にある三つの王国で、パーンたちを待ち受ける新たなる戦いとは……。 ――裏表紙より
各章毎に一人ずつ王族のゲストキャラを登場させ、王としての様々な生き方や考え方を提示している。そのどれもが異なる困難さを抱え、そして異なる対応をしているのが非常に面白い。中編3つという構成だが、そのどれもが甲乙つけ難く、さらにしっかりと全体としてのストーリーを進行させているのは素晴らしい。
個人的にはシーリスの身の振り方が好きではないのだが。
あまりにも見事な大団円。
プロローグ 第T章 邪悪の胎動 第U章 盗まれた祭器 第V章 黒い影を追って 第W章 生命の杖 第X章 魔境への船出 第Y章 扉は開かれて 第Z章 決戦前夜 第[章 カノン解放 最終章 ロードスの聖騎士 エピローグ
マーモ帝国の宮廷魔術師バグナードは、破壊の女神カーディスを復活させんとフレイムの王城の宝物庫で守られていた「魂の水晶球」を奪いさる。
フレイムの若き騎士見習いスパークは、賊の侵入を発見しながら、みすみす取り逃がしてしまう。カシュー王は、この若者に賊の追及という使命を与えた。そして、フレイムを訪れていた自由騎士パーンは、スパークに助言を与え、「道」を示した…… ――上巻表紙裏より
邪心復活の扉たる宿命をおった少女ニースは、黒の導師と対決するためカノンの地へ向かう決意をする。フレイムの騎士見習いスパークも、五人の仲間たちとともに少女に同行を申し出る。
一方、ロードス全土を揺るがした大戦は最終局面を迎えていた。
はたして勝利はいずれの手に。そして、邪心復活の野望の行方は……!?
感動のシリーズ完結編! ――下巻表紙裏より
スパークを新主人公に据えたシリーズ最終エピソード。これには多少の違和感が有ったが、何の事は無い、実質的な主人公はパーンのままである。
「全てのキャラクターにきっちり結末を付ける」という作者の姿勢は非常に好感が持て、それでいて作品の一貫性が失われる事が無かったのが素晴らしい。『ロードス島戦記』シリーズに、これ以上無い程のラストとなったと思う。
『ロードス島戦記』シリーズを補完する作品。
妖精界からの旅人 開かれた森 復讐の霧 帰らずの森の妖精
“帰らずの森”――そこはエルフたちにとって森の精霊王に守護された美しい故郷。だが人間にとっては、足を踏み入れたら最後、二度と戻ることのできないロードス最大の魔境であった……。ここ帰らずの森を舞台に、若きディードリットの旅立ちを描いた「帰らずの森の妖精」をはじめ、パーンら人間と、ディードリット、エスタスらエルフの交流を綴った「妖精界からの旅人」他、超人気シリーズ「ロードス島戦記」の知られざる物語を一挙公開!! ――表紙裏より
本編である『ロードス島戦記』シリーズが省略していたエピソードを補完する役割の今作。その意味では役割は十分に果たしたと言える。少なくとも大きな矛盾は発生していないし、また一つ一つの物語作りも丁寧だ。
ただ各エピソードに“エルフ”という共通項が有ったにせよ、それ以上の一貫した何かが感じられなかったのが残念。ディードリットの為の物語な筈なのに、いつの間にかエスタスが主役となってしまったような印象もある。
悪くはないが、インパクトが足りず。
船出 暗黒の覇者 海魔 永遠のはじまり 上陸
ロードス統一を唱えたマーモ暗黒皇帝ベルド。その覇業のために、生涯を捧げた一人の男がいた。その名はアシュラム。人々は彼を黒衣の騎士と呼び、畏怖した――。英雄戦争終結後、亡きベルドの遺志を継ぎ、最後まで自由騎士パーンの好敵手であり続けた男の哀しき過去。運命を変えたベルドとの邂逅。そして、美しきダークエルフ、ピロテースと共に新天地を目指す苦難の旅。いま、ここに世界の架け橋となる物語の幕が開く! ――裏表紙より
『ハイエルフの森 ディードリット物語』に続き、『ロードス島戦記』シリーズの補完エピソード短編集第2弾。今作はシリーズを通じての敵役アシュラムが主人公である。『ディードリット物語』と異なるのは、これが水野良の別シリーズへ直接的に繋がって行く処だろう。
内容的にはベルドとの出会いを描いた「暗黒の覇者」、ピロテースとの出会いを描いた「永遠のはじまり」の2本が中心で、『ロードス島戦記』シリーズを読んでいた時にこの辺りが気になった人は買い。
全体としては悪くはないものの、今ひとつ衝撃度が小さかった。既に終結したシリーズだけに、仕方の無い所か。
意外な人物を主人公とした新シリーズ。
プロローグ 第T章 たちこめる暗雲 第U章 王子の決断 第V章 蠢動する魔神 第W章 帰還せし者
英雄戦争から遡ること30年。呪われた島・ロードスは、未曾有の危機に瀕していた――。
それは、島の南西部・モス地方から始まった。大地の妖精族ドワーフが築いた石の王国から出現した魔神の大群は、国を亡し姿を消した。彼らとの友好で独立を守っていたスカードは、不在の国王に替り若き王子ナシェルが全権を掌握する。そして、運命の時を迎えた……。
ベルド、ウォートを始め英雄たちの若き姿が甦る! 待望の書下し新シリーズ、感動の開幕! ――裏表紙より
『ロードス島戦記』シリーズで度々語られていた30年前の魔神戦争を舞台にした物語。ところが主人公は伝説の6英雄ではなく、後世に名が伝わっていない小国の王子だった。
なにしろ重要人物が多いが『ロードス島戦記』シリーズで下地がしっかりと出来ているので、話がどっちつかずになっていない。とにかく多彩な英雄達の、人物関係を含めた今後が気になる。
英雄とはどのようなものかを考えさせてくれる。
第T章 盟約破棄 第U章 運命の出会い 第V章 百の勇者 第W章 激動の中で
魔神を率いるのがスカード王ブルークと判明し、モス諸国は大混乱に陥った。“竜の盟約”が破棄され、ナシェルの立場は益々苦しいものに。だが、己の運命を切り拓くため、ナシェルは勇気ある決断を下した! 一方、フラウスはファーンらと共にライデンを訪れ、ベルドと衝撃の出会いを果たす。この瞬間、ロードスの未来が大きく変わろうとしていた――。
未曾有の危機に立ち向かう英雄たちの勇姿を壮大なスケールで描く待望の第2弾!! ――裏表紙より
物語の終着点が分かっているだけに、着実にストーリーが進んでいるという事が良い意味で実感し易い。
興味深い主要人物と多彩な脇役達の描き分けが見事。英雄という存在の行動を、よくここまで考えられるものだと思う。
あまり長いシリーズにはならないようだが、主人公に対してどのような結末を与えるのかが非常に気になる。
終わりに向けての舞台は整ったが、次で本当に終われるのか?
第T章 遠き平和 第U章 大湿原の古城 第V章 魔王の領域 第W章 英雄終結
竜騎士となったナシェルの活躍で、モス諸国は再び結束、魔神に対する反撃体制は整ったかにみえた。だが、ロードス各地は益々混迷を極めていた。ヴァリスでは鏡像魔神の暗躍のために、ファーンが聖騎士隊長の地位を追われ、ベルドの武勇によって決起したはずの“百の勇者”にも不穏な空気が…。闇が大地を覆うなか、荒野の賢者ウォートはついに魔神殲滅の切り札を放つ!
若き勇者たちが、ロードスの平和を目指して躍動する英雄叙事詩、いよいよ佳境へ――。 ――裏表紙より
物語も佳境。とにかく英雄たちの言動に重みが感じられる。「この人物だったらどう考える?」という事をかなり念入りに考察しているのだろう。
次巻でラストなようだ。まだまだ残されている部分が多いが、本当に1冊で終結出来るのだろうか?
結局は六英雄ではなく、ナシェルを軸としたのが良かった。
第T章 新たなる予感 第U章 聖女の奇跡 第V章 伝説の彼方へ
ついに魔神との戦いは最終局面をむかえた。ナシェルは“勇者隊”を統べる者として、モス連合騎士団と共にリュッセン・そしてマスケト解放をめざす。ベルド・ファーンら希代の英雄たちの活躍、ウォートの魔術、フラウス、ニースの加護。ナシェルの旗のもと、戦いの趨勢は決まったかにみえたのだが……。
伝説の英雄たちが躍動する大叙事詩、かつてない感動と愛の奇跡を謳いあげ、ここに完結。 ――裏表紙より
『ロードス島伝説』シリーズ最終巻。結末の付け方は相変わらず巧い。
伝説の六英雄以上の器を持っていた主人公が何故歴史に残らなかったのか――シリーズ開始当初には考えもしなかった疑問に対して非常に納得出来る解答を与えている。
“最も深き迷宮”での戦いの詳細は気になるが、それを描いていたらどっちつかずのシリーズになってしまっていただろう。聖者の存在など、その他の幾つかの疑問点が残ったままだった事は少し残念だったが。
主人公が交代せざるを得なくなった異例のシリーズ。しかしこれで本当に「完結した」と言える。
第T章 スカード解放 第U章 大隧道を抜けて 第V章 最も深き迷宮 エピローグ 伝説の終焉 聖女の誕生 幻影の王子
甦った魔神と人間との戦いは、大詰めを迎えつつあった。モス連合騎士団と“百の勇者”によって、魔神はその生まれ出た地スカードに追いつめられていたのだ。だが、ロードスの力を一つにできたはずのナシェルは逝き、魔神王を倒す希望は、七人に委ねられる――聖騎士ファーン、戦士ベルド、鉄の王フレーベ、司祭ニース、魔術師ウォート、謎の魔法戦士、そして聖女フラウス。彼らはロードス存亡をかけた戦いに向かっていった! 伝説完結!! ――裏表紙より
主人公を交代しての続編。しかし内容は紛れもなく『ロードス島伝説』だ。
前作までに残っていた謎を回収しようという試みは良かった。少々哀しい結末だが、『ロードス島戦記』への橋渡しとしての役割も十分に担っている。
新主人公として据えられたフラウスはあまり主人公らしさを発揮出来ずに終わった感が有るが、これは流石に物語終盤に来て、六英雄が本来の重要性を見せ始めた為だろう。となると、その中でも魅力を失わなかった旧主人公のナシェルは、それだけ特異なキャラクターだったという事か。
曖昧な結末と明確な結末――どちらが適していたのか。
ロードス島伝説 序章 太陽の王子、月の姫 血の絆 ロードス島伝説 終章 竜の心、魂の魔神
呪われた島ロードス。その南西部に位置するスカードの王ブルークは、自らの余命がいくばくもないと知った時、一つの決断を下した――魔神戦争の始まりを告げる「ロードス島伝説 序章」2編に加えて、最も深き迷宮をめぐる最後の戦いを前に、舞台を去ったナシェルの行く末を描いた、書き下ろし「ロードス島伝説 終章」を収録。亡国の王子にして伝説の英雄こと、ナシェルの物語、ここに大団円を迎える。 ――裏表紙より
今作は『ロードス島伝説4』で曖昧なままに終わったナシェルの最後を明確にして終わらせる為の作品と言える。どちらの結末でも良いとは思ったが、同一シリーズで両方の結末を描いてしまう事には違和感を覚えた。単純に残された謎を解き明かすだけの短編集という位置付けの方が印象が良かったかも知れない。
本編の補完の為の作品。このシリーズでは最早、定番か。
第T章 炎を継ぐ者 第U章 魔獣の森 第V章 暗黒の島の領主 第W章 生命なき者の王 はじまり 〜戴冠式〜
ロードスの平和を願い、スパークとニースは邪心戦争終結後も、“暗黒の島”マーモに留まった。二人の心には、愛と正義のために戦った人々の想いが刻みこまれていた――。
十数年前、幼少のスパークを救うために身を挺した従姉のナルディア。ニースが三歳の時、“魔獣の森”の混乱を察知した父スレインと友人のパーン、セシル。その知られざる活躍と志を受け継ぎ、スパークとニースは仲間と共にマーモの災厄に挑む! 「戦記」から「新戦記」の架け橋となる新たな物語、誕生!! ――裏表紙より
既に第1巻が発売されている『新ロードス島戦記』シリーズの導入的な話。時代的には『ロードス島戦記』の初期から終了直後までの物語が収録されており、幅はかなり広い。
『新ロードス島戦記』シリーズを読む為に必須という訳ではないが、それなりにバックグラウンドが描かれているので、読めばシリーズをより楽しむ事が出来るだろう。特にバグナードが『ロードス島戦記』シリーズの後にどうなったのかが描いてあるので、そちらの補完としても楽しめる。
作り込まれているが故に冗長さを感じた。
プロローグ 第T章 祝福なき始まり 第U章 妖魔の銀 第V章 魔獣来襲 第W章 アラニアの魔獣使い 第X章 九つ首の大蛇
忌まわしき邪神戦争から一年。“呪われた島”ロードスにもようやく平和が訪れようとしていた。だが、その南に浮かぶマーモ島だけは、未だ邪悪な炎が……。若き騎士スパークはこの闇を払うために、マーモ公王に即位した。だが、彼の前には数多の困難がたちはだかる。内紛の兆し、魔獣の出現、旧帝国軍の暗躍。聖女ニースらと共に、スパークはこの危機をどう切り抜けるのか? 壮大なスケールで贈る愛と冒険の物語! 待望の新シリーズ、ここに堂々の開幕! ――裏表紙より
相変わらず丁寧過ぎるくらいに作り込まれている。今シリーズも相当な準備の下に書き始められたのだろう。
ただ用意周到過ぎて、やや冗長な展開になっている事は否めない。魔獣使いのエピソードは、ひょっとしたら今後重要になって来るのかも知れないが、もっともっとサラッと描いても良かったのではないだろうか。もう少しレギュラー陣の活躍を見たかった気がする。
恋愛小説風味を増した第2巻。
第T章 暗黒騎士団 第U章 風と炎の砂漠 第V章 襲いくる妖魔 第W章 暗黒神殿の廃墟で
暗黒の島マーモ――若くして新公王となったスパークは、島を支配する“闇”に、秩序の“光”をもたらすべく、跳梁する魔獣との戦いを続けていた。だが、マーモの闇は深い。ベルド皇帝時代の復活を望む新生マーモ帝国は、その闇の中で、ひそかに新たな戦力を整えていたのだ。そして、今しもスパークがロードス探訪の旅に出発しようとした時、魔帝国はその真の姿を現わした! 圧倒的なスケールとパワーでおくる、ファンタジー巨編。 ――裏表紙より
まずはカバーイラストに驚き。イラストレーターが替わったらしい。
本の薄さの割にはストーリーはよく動いている。しかし終わり方がイマイチ。主人公側が完全な敗北で終わる、というのは有りそうであまり無い例だと思う。後味が悪くなってしまうからだろう。このエピソードは次巻の初めに持ち越した方が良かったのではないだろうか。
前作とで上下巻的な位置付け。
第T章 始源の巨人の鱗 第U章 闇を統べる者 第V章 黒翼の邪竜 第W章 幼竜解放
突然、マーモ公国を襲う不治の病“竜熱”。それは、赤毛の少年の皇帝レイエスを戴く、新生マーモ帝国が張りめぐらせた狡猾な罠だった。公国を揺さぶる竜熱の恐怖。公王スパークは、竜を追って来島したリザードマンとともに、帝国の力の源たる邪竜ナースを見つけだそうとするが……そこには帝国最強の戦士が待ち受けていたのだ! 暗黒の島マーモを舞台に、熱い希望と昏きたくらみが激しく交錯する、ファンタジー巨編、感動の第3巻。 ――裏表紙より
序盤でのエレーナの事件は「やっぱり端役に過ぎなかったのか」という思いだったが、真相を知って納得。まだまだ活躍の場は有るという事か。
前作『新生の魔帝国』は歯痒い終わり方をしたが、今作は見事に問題を解決。次作からの展開に期待出来るようになった。
“期待に応えぬ”意外な展開。
第T章 孤立 第U章 ルード砦の賓客 第V章 漆黒の軍船
海峡封鎖!? ロードス本島とマーモ島を行き来する交易船が、次々と謎の軍船に沈められる。軍船は帝国の新たな攻撃なのか? 深刻な食糧不足が公国を再び危機に陥れる前に、スパークは仲間とともに海上に乗り出した。だが、古代王国の強力な魔法装置である軍船は、近付く船全てに火球を浴びせかけ、ついにはスパークたちの船もその餌食に。ようやく対岸に流れ着いた彼らを待っていたのは意外な人物だった! 新展開ファンタジー巨編。 ――裏表紙より
パーンの登場や敵側の反乱など、予想外の展開が多かったが、その割には満足感が得られない内容だった。
まずは、せっかくパーンが満を持して登場したのに、彼の活躍が殆ど見られない。主人公スパークの精神的支柱としての役割を担っているのかも知れないが、それでは『ロードス島戦記』シリーズからのファンは納得しないのではないか?
敵将ネータの反乱は意外性は高かったが、その代わりに話が萎んでしまった感も強い。ヴェイルは、もっともっと主人公側を苦しめるものだとばかり思っていた。
しかしエレーナの例が有るように、一度は読者に不満を抱かせておいて、次巻で一気に解消する、という構図かも知れない。作者の力量を考えれば充分有り得る事であり、やはり油断は出来ない。
それにしても3年振りの新作の割には、本が薄い。少なくとも4つのシリーズを抱えているだけに無理は言えないのかも知れないが。
第T章 闇の森の妖魔 第U章 同盟 第V章 終末の門 第W章 公国滅亡
暗黒の島の覇権を握ろうとした新生マーモ帝国も、ついに滅んだ。だが、それはつかの間の勝利にすぎなかったのである。スパークたちの前に、帝国の陰で暗躍してきた、破壊の女神の教団が、その真の姿を現したからだ。教団の狙いは亡者の女王の魂を持つニース。かつての支配者を覚醒させ、マーモのみならず、世界を滅ぼそうというのだ。ロードスの未来を守るため、スパークは最大の敵に挑む! 大河ファンタジー、いよいよクライマックス。 ――上巻裏表紙より
――
見事なまでにシリーズを彩った、理想的なプレリュード。
第1章 ガールズ・ミーツ・ガールズ 第2章 プリーステス・オブ・ウォーゴッド 第3章 レディ・マースナリー 第4章 アイ・オブ・ザ・キャット 第5章 クエスト・フォー・ブレイブ
剣の国を訪れた女傭兵ジーニは、人混みの中で金髪の戦神の女性神官の懐から財布をスル黒髪の盗賊少女を目撃する。ジーニは少女から財布を取り戻し、持ち主に返しにいくが、女性神官――メリッサは浮かない顔。
事情を聞くと、盗賊少女の名はミレルといい、盗賊ギルドに多額の借金をしているのだという。それを知り同情したメリッサは、彼女にワザと財布を盗ませているのだという。
しかし、その事実はミレルの知るところとなり、事態はメリッサとミレルの決闘に発展してしまう――。
ミレル、メリッサ、ジーニの出会いを描いた「ガールズ・ミーツ・ガールズ」他四本、リウイに出会う前の三人娘それぞれのエピソードを収録した、アレクラスト・サーガ外伝。 ――表紙裏より
『魔法戦士リウイ』シリーズの原点とも言えるストーリー。発刊されたのは最期だが、ストーリーの時代は最も初期のものである。
一つ一つの短編が全てシリーズの伏線となっており、それが素晴らしい。最初にこの作品を読んでいたら、シリーズの評価も大きく違ったように思う。特にシリーズ序盤はヒロイン達に全く感情移入出来なかったから、残念でならない。
登場人物たちに魅力が足りない。
第T章 魔術師ギルドの異端児 第U章 閉ざされた扉の向こう 第V章 折れた杖 第W章 争いの森 第X章 それは愛ゆえに
英雄王リジャールが納める“剣の王国”オーファン。その国で新たな物語が始まろうとしていた。
「神の啓示がありました。不本意ですが、あなたは私が仕えるべき勇者です」
そう声をかけられたのは、魔術師の見習いを卒業したばかりの青年リウイ。声をかけたのは、三人の女性冒険者。盗賊のミレル、戦士のジーニ、そして戦の神の神官メリッサだった。
突然降ってわいた「冒険者」へのお誘い。それは、有り余る体力と己の内にたぎる正体不明の感情に、日々モンモンとしていたリウイにとって、願ってもないチャンスでだった。
こうして始まった冒険者としての生活。それは同時に、地獄の試練の始まりでもあった。
水野良が描くフォーセリア・ワールド、待望の新シリーズ第一弾!! ――表紙裏より
リウイという青年魔術師である主人公と、3人の女性冒険者がパーティーを組んで冒険を繰り広げるファンタジー。
ストーリー展開はマズマズ悪くないが、しかし主役の4人に魅力が感じられないのが問題だ。作者としては、それなりの長編シリーズにするつもりらしいのだが、あまり面白くなりそうな要素が見付からない。というか、これよりも少し後の時代を描いた『剣の国の魔法戦士』と、あまりに登場人物の性格が変わり過ぎていると思うのだが……。これは良いのか?
行き当たりバッタリな展開には残念。
プロローグ 第T章 真夏に訪れしもの 第U章 狂える精霊 第V章 四大魔術師の塔 エピローグ
剣の国オーファンは異常気象に見舞われていた。そんなある日、リウイの同僚の女性魔術師アイラの元に、かつての師匠バーナルから手紙が届く。手紙には「約束どおり研究の成果をすべて譲る」とあった。ここ数日の天気の異常が、バーナルの研究にあると気がついたアイラは、リウイに調査を依頼する。
一方リウイの冒険仲間であるメリッサは、不本意ながらもリウイを勇者と認め、勇者に見合った試練をこなしてもらおうと思うということを、ミレルとジーニに告白した。そんな三人の前にエルフの娘セルシアが現れ「仲間にしてくれ」と言ってくる。
試練がむこうから歩いてやってくる状況に驚愕する三人。これも勇者の資質がなせる技なのか? ともあれ、リウイの試練が始まるのであった。
水野良が描くフォーセリア・サーガ・シリーズ待望の第二弾!! ――表紙裏より
相変わらず登場人物たちの魅力が少ないように思う。読み易く、それなりに構成も巧いのだが、それを生かし切る設定が為されていない感じがする。主人公の活躍も偶然の要素が大き過ぎ、盛り上がりに欠ける。
これからどうやって『剣の国の魔法戦士』に繋げて行くのかだけが、興味を繋ぐ。
シリーズとして持ち直しの兆しを見せ始めたのは流石。
第T章 女戦士の休日に 第U章 遥かなる呼び声 第V章 復習の代理人
「わたしは家を出る決心をしたのです」リウイが繁華街で盗賊たちから助けた少女ミュリエルは、嬉しそうに言った。彼女は親の決めた縁談に悩み、戦の神の女性侍祭に相談したところ、「断固戦うべきです」とそそのかされたらしい。
『メリッサの奴……』頭を抱えながらも、少女を助けるために、彼女の実家に乗り込んだリウイ。しかし、下手な小細工をしたばっかりに、リウイはミュリエルと婚約する事になってしまった。そう、彼は自ら人生の墓場に、足を踏み入れてしまったのだった。
着々と事は運ばれ、リウイの周囲もなかばあきらめ気味。人生最大のピンチをどう乗り切るのか?
「不本意です!」メリッサの嘆きがオーファンの空に、今日も空しく響きわたる。
大好評のシリーズ第3弾!! ――表紙裏より
低調だった前2作に対して、今作は割と良い感じ。ようやくヒロイン達の魅力も出て来始め、ストレス無く読む事が出来るようになって来た。
好感触だったのは、やや短編集的特長が強かったのも一つの原因か。
全体的には悪くないが、こじんまりとしたストーリーは残念。
プロローグ 第T章 来訪者 第U章 冒険者 第V章 蠢く者 第W章 裁く者、裁かれる者 エピローグ
「あの野郎のせいだ!」
人間関係の変化に着いて行けず、落ち込む盗賊少女ミレルは、ある雨上がりに一人の少年と出会った。何者かに追われ、行く当てもないその少年の面倒を、ほんの気まぐれでみることにするミレル。
一方、あの野郎ことリウイは、最高導師カーウェスに呼び出され、一人の少女を紹介されていた。彼女の名はエリスティア。魔法王国ラムリアースからの留学生だという。しかし彼女は、ラムリアースの魔術師ギルドからある蜜命を受け、オーファンにやって来た魔法戦士だった。
翌日、役者が揃うのを待っていたように事件が起こる。街を流れる川の土手で、一人の男が他殺体で発見されたのだ。
水野良が完全書き下ろしで贈る、フォーセリア・サーガ・シリーズ第4弾!! ――表紙裏より
そこそこ読めるようになってきたシリーズ第4巻。ただ如何せん1冊の内容が薄い。それなりに構成に気を配っているのだろうが、もう少し大きな事件を扱えないものか。あまりにもストーリーが、こじんまりとし過ぎている。
そろそろ何か転機となるような作品を書いて貰いたいものだ。
人物関係を正規に修復する役割を担った中間的存在。
第T章 告白の理由 第U章 魔術師ギルドの地下水道 第V章 甘くない罠 エピローグ
言葉にできない不安が、盗賊少女ミレルの胸を締めつけていた。メリッサに次いで、ジーニまでもが、リウイを認めたのだ。だが彼女には、自称魔法戦士のことを認めるべき理由は何もない。
いつの間にか、自分一人だけが浮いている事に気づき悩むミレル。そんな彼女に盗賊ギルドから呼び出しがかかった。
出頭したミレルを待っていたのは、副頭領マズルの「俺の情婦になれ」という、思いもかけぬ言葉。動揺したミレルは思わず、自分は冒険者仲間であるリウイの恋人だと答えてしまうのだった。
その夜、自分の言葉を事実にするため、リウイの部屋に押しかけるミレル。
「本物の恋人にしてほしいんだ……」
夏とはいえ夜は長い。どうするリウイ?
大好評アレクトラスト・サーガ第5弾!! ――表紙裏より
確かに読めるのだが、何となくご都合主義な感じが強くなってしまっている。時代的には後になる『剣の国の魔法戦士』の人物関係に何とか繋げようと必死になっているように思える。
事件は途中までサスペンス調を含んでいて良い流れだったのに、終わり方には残念。しかしそれでもラストシーンでの次巻以降への伏線に期待させられる“何か”は存在する。
シリーズの転換点と成り得る重要な位置を占める。
第T章 ふたたび、それは愛ゆえに 第U章 時の指輪 第V章 亡霊の告白
自称魔法戦士の立場は、今日も最悪だった。三人の仲間メリッサ、ミレル、ジーニの冷たい視線が、容赦なくリウイに突き刺さる。原因は彼が連れてきた青年アーヴィンにあった。名門貴族シュレイダー家の二男であり、騎士への叙勲を間近に控えた彼は、メリッサを妻に迎えるべく、リウイに決闘を申し込んだのだった。だが、戦う理由のない彼は、直接青年をメリッサに会わせたのだ。
すげなく申し込みを断るメリッサにリウイは、彼にも猶予を与えてやれと言う。
「ご命令ならば、仕方がありません」
メリッサは怒りのオーラを吹き出しながらも、アーヴィンの冒険への参加を承諾する。この判断が、自分の心を変化させることになるとは知りもしないで……。
オーファンに再び愛の風が吹き荒れる。
絶好調アレクラスト・サーガ、第6弾!! ――表紙裏より
今作は章毎に展開が全く異なる。そういう意味では3つの短編集と言っても構わないだろう。
「ふたたび、それは愛ゆえに」は以前の作と同様な展開だが、「時の指輪」は異色作。それでいて3人のヒロインの主人公に対する心情を変化させるには充分な説得力の有るエピソードで、秀逸である。そして「亡霊の告白」で、それを決定的付けた。
少なくとも後者の2作は短編ながらシリーズの重要な部分を担っていると考えられ、これからの展開にもようやく希望的なモノが見え始めた。
早い展開の為に、戦闘描写が犠牲に。
第T章 竜の棲む祠 第U章 酒場にて 第V章 世界でもっとも美しき―― 第W章 人形の家
結婚。それは男にとって「人生の墓場」という――。そこに足を踏み込もうとする男がいた。勇気ある彼の名はバーブ。ジーニの傭兵仲間で、現在はオーファンの近衛騎士を務める男だ。
そんな彼が領主に任命された。バーブからの依頼で、彼の領地視察に同行することになった、自称魔法戦士リウイ一行。そこでリウイたちが見たものは、野党団に襲われ燃える村だった。
早速、野党討伐のため、彼等が根城とする祠へ偵察に出たジーニとバーブ。しかし偵察は失敗し、負傷したバーブを庇ったジーニは、野等に捕らわれてしまうのだった。
仲間のピンチにリウイはどうする?
大好評アレクラスト・サーガ、第7弾!! ――表紙裏より
前巻同様、章毎に内容の異なる短編集的作品。短編ながら、それぞれに読み応えが有り、全体の構成も悪くない。強いて言えば第T章だけが何やら不完全燃焼で終わってしまった感が有るが、ページ数の都合も考えると仕方ないのだろう。今作は全体的に戦闘の描写がカットされている傾向が有る。
その分、ストーリーの進みはなかなかのもので、ようやく本来の物語(『魔法戦士』シリーズ)への兆しも見え始めて来た。残りは2冊という事だが、登場人物たちへの感情移入も何とか出来るようになって来たので、楽しみにして待てる。
「これで本当に既刊に続くの?」という懐疑は未だ拭えず。
第T章 侍女の一日 第U章 授けられた試練 第V章 夢のなかへ
アイラのリウイに対する“想い”を知ってしまった、ミレル、メリッサ、ジーニは、動揺の色を隠せなかった。リウイに対し、どこかよそよそしい三人。
若者たちの変化にいち早く気がついたマイリー最高司祭ジェニは、彼らにひとつの試練を与える。それはかつて彼女自身が果たせなかった――古代魔法時代の都市に赴き、そこへ駆け落ちした一組の男女を連れ帰る――というモノであった。
幻覚都市に挑んだリウイたち5人は、そこで意外な人物と出会うこととなる。
理想が何でも現実のモノとなる夢の都市で、彼らが見たものは……!?
三人娘とアイラ。四つの女心がいま激しく震える。クライマックス目前、急展開のアレクラスト・サーガ第8弾! ――表紙裏より
第T章は大した事も無い短編だが、第U章と第V章は物語の中核を為すようなエピソードだ。しかし今作では事件が未解決のままエンディングを迎えてしまうので、少々残念な処だ。登場人物たちに物事を考えさせるだけで終える、というのは新しい試みなのかも知れないが、水野良にしては珍しく、結論から逃げた描き方だ。
あと1巻で『魔法戦士』シリーズのプレリュードは終わってしまう訳で、早かったような長かったような……。取り敢えずここまで8巻というボリュームが有る訳だが、そこまでの大作感は無いのは確かである。短編が多かったのが原因だろう。最終巻では一つの事件に絞ってストーリーを組み立てて欲しい気がする。
見事に物語の橋渡しの役割を担った最終巻。
第1章 夢の彼方に 第2章 運命の決断 第3章 最後の頁 第4章 死闘の果てに エピローグ
ミレルとアイラ、二人の女性に愛を告白されたリウイ。彼はその答として、同僚の女性魔術師に指輪を贈った。
「本気にするわよ」「ああ、いいぜ」
たとえそれが、リウイが冒険者であることを一番に考え、出した結論でもアイラは嬉しかった。そして彼女にとって、これからが幸せの日々になるはずだった。その指輪が普通の指輪であったなら――。だが、その指輪は古代魔法王国時代に造られた、魔法の指輪だったのだ。それと知りながらも、アイラは指輪を左手の薬指にはめていく。
それが魔法戦士の新たな試練になるとも知らずに――
リウイ序章シリーズ、クライマックス。怒濤のアレクラスト・サーガ第1部完結。 ――表紙裏より
今までどうも好きになり切れなかったこのシリーズだが、見事な終わり方を提示してくれた。ここに至るまでが長過ぎた感は有るが、懸念されていた『魔法戦士』シリーズとのリンクもちゃんと為され、これで心置きなく先のストーリーを楽しむ事が出来るというものだ。
何しろシリーズを通してのテーマが“愛”だっただけに、かなり読んでいて閉口するような場面も少なくなかったが、ラストでキッチリ締めてくれた。『ロードス島』シリーズもそうだったが、やはり水野良は物語の終わらせ方が巧い。
欠点は多いが、文章の安定感がそれを補う。
プロローグ 第T章 魔女の弟子 第U章 国境不穏 第V章 謀略の魔手 第W章 錯綜の一夜 第X章 古の塔の決戦 エピローグ
古代王国の遺跡から発見された一冊の古代書。“剣の国”の風雲は、そこから始まった――。
リウイはオーファンの魔術師ギルドに所属する若い魔法使いだった。だが研究よりも冒険を好み、ミレル、メリッサ、ジーニという女性ばかりの仲間とともに、運と腕まかせの日々に明け暮れていた。
そんなある日、魔術師ギルドのラヴェルナ導師から呼びだしを受けたリウイは、そこでギルドの後継者フォルテスの密謀を知る。
独力で解決をはかるリウイをよそに、事件は思わぬ展開を見せはじめた……。
切望に応えてついに登場! 水野良のソード・ワールド長編第一作!! ――表紙裏より
良い意味でオーソドックスな英雄成功譚と言える。敵役に魅力が無さ過ぎたり、登場人物の一部が巧く機能していないなどの欠点は有るが、全体的には安定感の有る仕上がり。
これがシリーズとして成功するか否かは、これからの敵役ルキアルに掛かっていると言えるかも知れない。
多元中継ドラマを見ているかのような錯覚を覚える。
第一章 囚われた女戦士 第二章 冒険者たち 第三章 オーファンの魔女 第四章 蘇る伝説 第五章 苦悩の騎士 第六章 暴かれた謀略 第七章 邪竜再誕 第八章 ザイン大同盟 第九章 争乱の終焉 エピローグ
“剣の王国”オーファンの妾腹の王子リウイ。彼は精悍な肉体を持つ戦士でありながら、同時に魔術師として古代語魔法をも修得した魔法戦士である。
彼と行動をともにするのは、美しき三人の冒険者たち。男勝りの体格の女戦士ジーニ、戦の神の神官戦士メリッサ、盗賊の少女メリル。
オーファン王リジャールの密命を受けて“賢者の国”オランへ向かっていた彼らは、その旅の途中、情勢不安定な“湖岸の国”ザインへと立ち寄る。
身分を隠しての旅ゆえに、無用な騒動を避けるため選んだルートだったのだが、運命の神は、リウイをより深い混乱と陰謀の渦の中に導いてゆく……。
これも彼が持つ“勇者の資質”ゆえなのか? 水野良が描くアレクラスト・サーガ決定版! ――表紙裏より
頻繁に視点を切り替える事で多元中継のような味わいを出す事に成功している。最後の大団円に向かって多少、御都合主義的な流れが無い訳ではないが、全体としては良い出来だ。前作よりもサブキャラクターに魅力が有るのも好印象。
強いて言えば、作中で主人公自身が言及している通り、主人公の活躍が少ないのが微妙な所か。これは視点切り替えの構成を持った時点で仕方ない事なのかも知れない。
2つのシリーズを繋げる見事な決着。
第1章 皇太子の後宮 第2章 エレミア王家の秘宝 第3章 奪われた秘宝 第4章 悪意の砂漠 第5章 内通者 第6章 襲撃! 第7章 破局への砂時計 第8章 最後の願い
父王リジャールの密命を受け“賢者の国”オランへ向かうリウイたち一行は、途中“砂塵の国”エレミアに立ち寄る。補給の為の逗留だったが、運命の女神はまたもや彼を放ってはおかなかった。
ミレルたちが皇太子シュメールの後宮にスカウトされたのがきっかけで、リウイの正体がばれてしまい、仕方なく招待を受けることに……。
その夜、皇太子が所有するエレミアの秘宝<黄金の洋燈>が、強奪されるという事件が起こってしまったのだ。その洋燈は魔法の宝具で、中には魔神が封じられ主の3つの願いを叶えてくれる代物だった。しかも最後の願いが叶えられたとき、魔神は解放され世界は破滅へ導かれるという。残る願いは後ひとつ――。世界の危機に、魔法戦士が三度立ち上がる。
アレクラスト・サーガ、セカンドシーズン最終章! ――表紙裏より
実に6年振りの「魔法戦士」シリーズ。プレストーリーである『リウイ』シリーズが長引いた為だが、見事に両方のシリーズと交錯する物語を完成させた。
「なんでも願いを叶えてくれる魔法のランプ」というご都合主義的な展開は有るものの、全体としてはバランスの良い良作であるという印象を受ける。
次巻からは、いよいよ最後のストーリーに突入するらしい。今作では全く現れなかったルキアルがどのように関わって来るのか、その辺りにも期待したい。
ボリューム不足で喰い足りない。
第1章 旅の仲間? 第2章 堕ちた都市 第3章 鍛冶師の館
魔精霊アトンが復活し、死の砂漠をゆっくりと移動している。――世界滅亡のカウントダウンは密かに始まっていた。
リジャール王からの親書を手に、ようやくオランの国に到着したリウイ一行。オランの国王と謁見したリウイは、そこでアトンを倒すための唯一の武器、魔法王の鍛冶師ヴァンの打った<ファーラムの剣>の存在を知らされる。存在すら不確かなその聖剣を、オラン王国の選抜した冒険者パーティーと協力して探索するよう依頼されたリウイたち。二つ返事でひき受けた彼らだったが、その場に現われたのは、オランの城下でリウイたちに絡み、あわや決闘騒ぎにまでなった女騎士シヴィル率いる冒険者たちだった。
大きな不安材料を抱えながら、リウイの更なる冒険が始まった。
世界の存続をかけた、壮大なるリウイ・サーガ。最終章のスタート! ――表紙裏より
ラストエピソードのプロローグ、といった位置付けの作品。その意図は分かるが、いくらなんでも1冊の本としてはボリュームが少な過ぎる。200ページ足らずの分量なのに、それでも水増しされたような印象を受ける。
せっかく主役の3人娘の魅力を『リウイ』シリーズで確立させたのに、ここで新たに主役級キャラを大量に追加したのには疑問。これで各キャラクターの過去のエピソードなんかが本編で描かれるとしたら、冗長過ぎて嫌だなぁ。この作者なら短編集の外伝くらいは書きそうな気がするが。
豪華なキャスティングの所為で主眼点が定まらず。
第1章 大いなる船出 第2章 大航海の果てに…… 第3章 自由騎士、永遠の乙女 第4章 決闘! 第5章 火竜の呪い 第6章 人魚の涙 第7章 魔竜ふたたび
魔法王の鍛冶師ヴァンが造った聖剣を求め、海を越え未知なる世界へと足を踏み入れたリウイ一行。未知なる世界の名は<ロードス島>――、激しい戦乱が打ち続き、怪物どもが跳梁する魔境が各地に存在する「呪われた島」!!
そこでリウイを出迎えたのは、フレイムの王カシュー、ロードスの自由騎士パーン、そして彼に寄り添うハイエルフのディードリットだった。
「オレは今……この世でもっとも美しい者と……出会った」
運命の邂逅。そしてリウイたちの求めるモノも、確かにそこにあった!!
夢のコラボレーションで贈るリウイ・サーガ、最終章第2弾! ――表紙裏より
『魔法戦士』シリーズに『ロードス島戦記』シリーズの主人公達を登場させてしまおう、という大胆な試み。ただ文庫本1冊という制限の中では、描ける事が限られてしまったようだ。
既に英雄化してしまった2人の主人公の前では、殆どの事件が危機として感じられない奇妙な安心感を与えられてしまう。これは読む上で大きなマイナスだ。その上に物語の主眼点が、ヴァンの武具→独自の剣技の取得→火山噴火の防止と、ころころ変化してしまって一定しない。その所為で締まりの悪い印象が拭えなかった。
リウイの性格も、三人娘に嫌われていた初期の方が硬派だった気がする。このままで良いのか疑問。
魔精霊アトンを倒すため、聖剣ファーラムの剣を求めて、リウイたち一行はグリフ族の村を訪れる。アレクラストの南東のその村では、かつてアトンを倒すために作られた巨神像を民達があがめる信仰があった――。 ――公式ホームページより
これからライバルをどのように描いて行くかが肝。
プロローグ 第一章 神の城壁 第二章 神の国へ 第三章 銀狼の娘 第四章 剣の牙の公爵
ダナーン半島は、神の城壁と呼ばれる巨大な断崖によって大陸から切り離された陸の孤島であった。その半島の住人たちは崖の上に広がっているであろう巨大な大陸を“神の国クリスタニア”と呼んでいた――。
王都から遠く離れた辺境の村ハークに、ひとつの事件が巻き起こった。王城に侵入した賊を捕らえるべく、王都から騎士がやってきたのだ。冒険者になる夢を捨て、騎士になる決意をしたばかりの青年レイルズは、偶然にもその賊と出会い、戦うことになる。
危機一髪! そのとき、突如、村を襲った大地震は、レイルズのみならず、彼の仲間である魔術師のサイア、精霊使いのビーンの運命までも、大きく揺れ動かすことになる……
RPG感覚あふれる冒険ファンタジー、ここに開幕! ――表紙裏より
『ロードス島戦記』が背景に横たわっている新シリーズ第1弾。既に確立された世界設定を持っているだけに、既読者には読み易い。
まずはレイルズという主人公が一人の戦士として自立していく様をじっくりと描いている。単調になりがちなプロットのように感じるが、そうは思わせない処が凄い。
ただシリーズを通してのライバルとなりそうな剣の牙の公爵が、それほど絶対的に強いとは思えないのが難点。
早々と明かされ始めるクリスタニアの全貌。
第一章 獣人 第二章 獣の牙 第三章 予兆 第四章 周期の神獣王
かつて“神々の大戦”により生き残りし神々は、人の姿から獣の姿に身を変え神獣となった。そして神獣たちは周期という規律を定め、クリスタニアの地で平和な時を刻んでいた。それから何百年もの時が過ぎ、神王バルバス率いるベルディア軍の野望でこの地は混沌の時を迎えていた――。
ダナーンの地からクリスタニアの大地に来た騎士見習いのレイルズら5人は、銀狼の娘マリスと知り合い、この地の混沌を知る。そして牙の候爵グレイルとの闘いで、死の恐怖に直面したレイルズは葛藤の末、ベルディア軍との戦いを決意する。その直後、仲間になった神獣の民の傭兵集団・獣の牙の戦士たちとの前に、サーベルタイガーを引き連れたゴブリンが襲ってきたのだ。闘いに躊躇するレイルズを尻目に、神獣の戦士たちは顔を獣の姿に変え敵を次々と倒していく……。
ロードス島戦記を超える壮大なファンタジー巨編、第2弾待望の登場!! ――表紙裏より
主人公レイルズの戦士としての成長が描かれた今作。その為に物語全体としての盛り上がりには欠ける面が強いが、それはこれからに期待する事にしよう。
2巻目にして少しずつクリスタニアの全貌が見え始めた。全くの異文化をココまで分かり易く描いているのは素晴らしい。
次巻では獣の牙を巡る一つのクライマックスが盛り込まれるのは間違い無いだろう。ライバルである剣の牙の公爵との決着が付くのかどうかにも注目したい。
イベントが1つしかないのでボリュームに不満。
第一章 前夜 第二章 決戦 第三章 折れた牙
神王バルバスによって周期が失われた“神々の住まう地クリスタニア”。その地に住まう、神獣の民たちは神王バルバス率いるベルディア軍の野望のため、戦いを強いられることになった。そして、この世はまさに混沌の時を迎えていた…。
ダナーンの地からクリスタニアに上ってきて、1年が経とうとしているレイルズら一行は、神獣の民の傭兵集団“獣の牙”の砦にたてこもり、レイルズの指揮の下、ベルディア軍の襲撃に備えることになる。そして、前回の戦いで傷つきながらも痛手を負わせた剣の牙の候爵グレイルに復讐の名を借りた、死をかけた戦いを挑まれる。銀狼の娘マリスとともに、神王バルバス率いるベルディア軍からこのクリスタニアを守ることができるのか…。 ――表紙裏より
一つの大きな戦争を丁寧に描いた。その分、ストーリーの展開は遅くなってしまったが、それは仕方ない所か。もう少しボリュームが有れば良かった。
『漂流伝説』としては結末が見えて来てしまった印象が有るが、他のエピソードを読みたいとは思わせるのが救いか。
見所満載の最終巻。
第一章 世界見の者 第二章 それぞれの再会 最終章 会合のとき エピローグ
神々の住まう地クリスタニアは神王バルバス率いるベルディア軍の侵攻のため、まさに混沌の時を迎えていた。
レイルズの指揮の下、善戦していた“獣の牙”の砦だったが神王バルバスの奇跡の絶対的な力により大打撃を受け崩壊した。ビーンの勇気ある行動で奇跡的に助かったレイルズたちの一行は復讐に燃える“剣の牙の公爵”グレイルの影に怯えながらも“会合の地”へと向かう。そして、マリスとレイルズは聖地へ足を踏み入れるが……。 ――表紙裏より
『漂流伝説』シリーズ完結編。クリスタニアの物語はまだまだ続くが、一応の区切りが付いた事は間違い無い。
最終巻だけに見所は満載。ただライバルであるグレイルとの決着を引き延ばし過ぎた感は否めず、少し呆気無い幕切れとなった。やや偶然に頼った展開も気になる。
が、ラストシーンとなった神々の会合のシーンはインパクト充分。なるほど、と思わせる内容だった。
幾らでも気になるエピソードは残っている。これから何処まで明かされるのか、注目したい。
“はじまりの物語”という位置付け。
序章 プロローグ 第一章 神々の大地へ 第二章 異邦の民 第三章 道 第四章 はじまりの冒険者たち 終章 エピローグ
クリスタニアから巨大な断崖と厚い雲により、遮断されている「神々に忘れられた地」ダナーン。その地に住む王族の末裔レードンら6人の冒険者たちは大地震によってできた断崖の裂け目から、まるで神に導かれるようにして、クリスタニアに上っていった。そこは獣の肉体に魂を封じた神「神獣」を崇める「神獣の民」が住む大地であった。そこで6人を待ち受けていたものは……。 ――表紙裏より
『漂流伝説』シリーズでは殆ど明かされなかった、レイルズ達の先人であるレードン一行の物語。それはそれで嬉しいのだが、多くの点で『漂流伝説』の相似縮小版になってしまっているのが残念だ。
『はじまりの冒険者たち』は、これ単体としてではなく、これから発表されていく様々なエピソードを含めた評価を与えないと、正しいものにならないのかも知れない。
タイトル通り“序章”に過ぎないのか?
若き承認者 泉は目覚める 声なき声 狂える獣人
……かつて、神々の肉体を滅ぼした、竜王・ドラゴンロードは「礎の神獣王」ウルスの能力によって封印されていた。しかし、周期の失われた世界に変革は求められる。
竜王は解放され、共に封じられていた混沌と邪悪も解き放たれる。それは世界が再び混乱に向かう事を意味していた。
動き始めた刻の中で、神獣の民はそれぞれの運命を切り開くために、己の信ずるもののために闘う。そこは神々の住まう大陸、クリスタニア……。
『封印伝説』を中心に、それまで語られることのなかった四篇の物語が、いまここに繰り広げられる! ――表紙裏より
“封印”という共通テーマが有るが、今の時点ではそれぞれの短編に繋がりは殆ど感じられない。これが本編とどう関係していくのか、注目である。
4人の作家による4つの短編という事だが、やはり水野良の文章は頭一つ分抜け出ている印象だ。しかしこれからのクリスタニア物語の多くは、水野良以外の3人が書いていく事になるようなので、その辺りが心配でもあり楽しみでもある。
演出が下手で台無し。
プロローグ 第一章 フィンガル砦 第二章 解放されし混沌 第三章 封印の洞窟 第四章 鐘を鳴らすもの 第五章 神獣の目覚め エピローグ
神獣の支配する地クリスタニアに、鐘の音が鳴り響く。覚醒の鐘――それは、封印の部族が己の使命にかけて封印した混沌を、この世界に解き放つ目覚めの鐘。
フィンガル地方の森の中では、ひとりの少女が息絶えんとしていた。だが少女は、その目を見開いた。憑依する肉体を求めていた混沌を、その身に宿して。獣の牙フィンガル砦の新米傭兵リュースは、少女を連れて封印の部族の集落へと旅立つ。この子は封印すべきか、否か……。
やがて、レードンをはじめとするはじまりの冒険者たちも、かつて封印された罪なき女性を救うため集結しはじめる。
決断の時は迫る。果たしてリュースは何を信じ、何を承認すべきなのか――。 ――表紙裏より
それなりに盛り上げ所は有るのだが、その全てが何処かで見たような展開ばかりなのが気になる。またレードンが関わっている事が中盤で明かされてしまうが、それによって読者の危機感を煽れなくなってしまったという致命的な欠陥も有った。
つまり粗筋だけなら悪くは無いのだが、その演出方法に問題が有ったという訳だ。クリスタニア小説は演出が命だと思うので、そこは最善の注意を払って貰いたい。
回りくどさ無く、一直線に物語を描く。
プロローグ 第一章 神王覚醒 第二章 六人の来訪者 第三章 宴の終わり 第四章 あるじのために 第五章 破滅の予兆 第六章 闇に舞う蝶 最終章 いつの日か エピローグ
いまを遡ること300年、北の島から「漂流王」とよばれる指導者率いる船団がクリスタニアに漂着した。しかし、神々の大陸“クリスタニア”は高くそびえる断崖――神の城壁――によって彼らの侵入を許さなかった。絶望の淵にたった漂流王は自らの肉体と引き替えに支配の神獣王バルバスの統治する大地を得たのだった。
そして、いま300年にわたる精神闘争にピリオドがうたれた。人間の肉体を得てバルバスが神王として復活したのだ。漂流王の側近、ダークエルフのシェールは愛しの王を取り戻すべく復活のカギ「混沌輪」を盗み、バルバス打倒に向かうが……。 ――上巻表紙裏より
シェールたちによって神王バルバスは永き眠りについたかに見えた。バルバスの支配力のなくなったベルディアでは、暗黒の民と猛虎の民による内戦の火蓋が切られていた。暗黒の民のマイリー神殿に身を寄せていたシェールと合流したボークスら一行は、唯一残っていた獣の牙の砦「ロマ」に向かった。一行がそこで見たものは、倒したはずのバルバスの奇跡によって壊滅した砦の無惨な姿だった。
バルバスは復活していたのだった。シェールとボークスら一行は神王バルバスを倒し、漂流王の魂を救うため、胡蝶の民のキサラの案内で混沌界に向かうが……。 ――下巻表紙裏より
バルバスとの対決を描いた物語。意外にも直接対決が語られるので、主だった不満感は無い。
それどころかシェールの切なさが上手く表現されており、心に激しく訴えかけて来る。
この『神王伝説』を以て、ようやく戦力の均衡が保たれる事となった。これからのクリスタニアでの闘いは、益々混迷を極める事になるのだろう。
実質的なラストエピソードか。
傭兵伝説序章 ベルディア砦の承認者 傭兵伝説外伝 決意の毒 傭兵伝説外伝 我が身、地にありて 傭兵伝説外伝 新しき使命
ながらく対立していた暗黒の民と神獣の民という二大勢力が同盟を結び、ベルディア地方には新たな王国が誕生していた。が、大陸の完全支配を目論む猛虎の民の活動は、その孤立化によりむしろ激化していた。
クリスタニアの自衛のために結成された傭兵組織「獣の牙」。猛虎の民との戦闘が続くここベルディアに新設された砦にも、クリスタニア全土からさまざまな部族の戦士たちが集結しつつあった。砦の若き団長・リュース率いる傭兵たちが、幾多の戦いの中で見い出していくそれぞれの、そしてクリスタニアの未来とは?
新たなる壮大なストーリーの幕開けを感じさせる、珠玉の短編集! ――表紙裏より
暗黒の民と神獣の民とが和解しており、かなり後期の時代のクリスタニアが描かれているようだ。『傭兵伝説』は実質的なラストエピソードなのだろうか。
4つの短編は、どれも独自の魅力を持っており、充分に及第点。やや作家毎の個性の違いが小さい気もするが、1冊の本としてはこの方が読み易いかも知れない。
獣の牙は局地的には負けても、大勢的には優勢なように思える。この状況から『神王伝説』のような壮大なストーリーが展開できるのか、気になる所である。
新たなる強大な敵の出現には虚を突かれた。
序章 暗雲の予兆 いつか、牙となりて…… 時の迷宮 忘却の果てに 虎は放たれた 混沌の娘 見えざる明日 過去からの来訪者 獅子の涙 王都騒乱 妄執の果てに 異界の決戦
新設された獣の牙ベルディア砦の団長に就任した、鬣の民の承認者リュース。彼のもとに、配下の傭兵たちからある報告がもたらされる。手練の傭兵たちの無残で不可解な死。そして、おぼろげに浮かび上がる驚愕すべき事実――。
ベルディアの密林に広がる、不吉な暗雲の予兆。それは同時に、変わりつつあるクリスタニアの未来をも揺るがしかねない重大事。砦の運営という重責を担う者として、リュースや幹部連が砦を空けることはままならぬ。歯がみしつつ聞く、信ずべき仲間たちのもたらす情報は、いったいどんな結論を導きだすのか……。
気鋭の作家陣が織りなす、『傭兵伝説クリスタニア』連作の導入章。 ――上巻表紙裏より
獣の牙ベルディア砦に忍び寄る、姿の見えぬ敵。かねてからの仇敵である猛虎の民の心中にも、ある迷いが生じている。強大な魔力を秘めたその侵略者に素直に与すべきか、否か――。
ある猛虎の民の戦士は獣の牙に潜入、その内なる葛藤が壮絶な結末を導きだす。また、密林に向かったある傭兵パーティは、2人のホムンクルスの少女に出会い、侵略者の貴重な情報をもたらすことになる。そして、ベルディア帝国の王都で見え隠れする、宮廷魔術師団の叛心。王国、そして砦を覆う暗雲の核心が、次第にリュースたちの前で明かされていく――。
気鋭の作家陣が綴る『傭兵伝説クリスタニア』連作、波乱の中盤へ! ――中巻表紙裏より
先の混沌解放によりベルディアの地に解き放たれた古代カストゥール王国の軍勢は、再びクリスタニア全土を征服せんと画策し、猛虎の民と共闘を張りつつ帝国軍や獣の牙と敵対、同時に魔力の塔の建造をも開始する。ベルディア宮廷魔術師団の叛乱にも助けられ、行き場なき亡国の軍勢は着実に、かの地を蝕んでいく。
獣の牙ベルディア砦の面々は、ジェイナスなるカストゥールの民を味方として必死の抵抗を試みるものの、砦は陥落の危機にさらされる。未曾有の強敵、そして傭兵の代表としての重責に、若き承認者リュースはどう立ち向かうのか?
「傭兵伝説」連作、ここに完結!! ――下巻表紙裏より
上巻・中巻が短編集、下巻が長編という変わった構成で贈られた『傭兵伝説クリスタニア』。登場人物達にダナーン出身者がバッソーしか出て来ないのが残念だが、クリスタニア最大の危機とも言える事態を見事に描いた。
珍しく全体的に後味の悪いエピソードが多かったが、これは予定通りなのだろう。この辺りは賛否両論有りそうだ。
残念なのは復讐者であるイムェルの存在が、『漂流伝説クリスタニア』のグレイルのように“引っ張り過ぎ”た感が否めない事だ。やはり何処か他のエピソードの相似形的な感覚がしてしまうのも、その所為だろう。
予定調和というクリスタニア小説の枷からは逃れられず。
プロローグ 第一章 己の中にある牙 第二章 忘却の地の民 第三章 砂塵の都 エピローグ
復活した神王バルバスの奇蹟の力により、獣の牙はその砦と傭兵の多くを失い、事実上壊滅した。大陸の完全支配を目指すベルディア軍の進撃を阻む勢力は、もはやクリスタニアには存在しなかった。
敗残の兵レードンは獣の牙再興のため、クリスタニア全土に共闘を呼びかける旅に出る。
戦乱の世に必死に生きる人々、絶望の淵にありながら、それでも部族の、そして自身の理想のために戦う者たち……。各地を巡り、クリスタニアに生を受けた人々の真摯な生き様に向き合ったレードンは、今、真に自分が何をなすべきかを悟る! ――表紙裏より
時期的には『神王伝説』の後。レードンの意外な行動の軌跡が描かれる。
レードンの行動は大局的には不可解な所も有るが、確かに『英雄伝説』という名に相応しい場面は満載。そして虚を突かれる結末。クリスタニアの歴史で既に明かされている事ではあるが、それを知らない方が楽しめると思われる。
個人的にはフォレースルの民が、ロードス島の人間達と酷似している事に興味を覚えた。何か裏設定が有るのだろうか?
意外な演出を含ませつつも、やや安直な終結。
プロローグ 第1章 北からの使者 第2章 スループの和約 第3章 反逆の萌芽 第4章 革命 第5章 さらば真紅の大地 エピローグ
不毛の大砂漠地帯・ラブラドル大地峡。その灼熱の大地から、赤き剣を持つ男はやってきた――。北クリスタニアの中央部、フォレースル地方の首都スループを目指し、男とその配下である蟻人族の屈強の戦士たちは北上する。神獣クロイセの名代たるその男の名は、レードン。
その頃、ケレンスなる小村の護民兵・カルーアは、テューレやフィランヌら北の王国ダナーンからの使者と出会い、スループを目指すというそのパーティとともに旅立つことになる。臆病で、己に自信の持てぬ自分自身を、変えるために。
戦乱の予感の中、それぞれの思惑を秘めて、彼らは出逢い、すれ違う。
そして、レードンの真の目的とは? ――表紙裏より
『英雄伝説クリスタニア』から直結しているエピソード。時代背景的には、この後に『封印伝説クリスタニア』へと続いて行くようだ。
物語序盤〜中盤では、レードンの行動の不可解さに違和感を覚え、ナーセルの登場により物語の謎が解き明かされて行く。しかしそこで終わらず、最後にレードンとナーセルの決闘が行われるので、イベントとしては申し分無い。
最終的には安直傾向の見られる終わり方をしてしまったが、全体としては充分に楽しめるレベルだろう。
やや番外的なエピソード。
第1章 スループの冒険者たち 第2章 試練を越えて 第3章 生きる目的 第4章 解き明かされた謎 第5章 黄金峡
新しき民の騎士テューレは、皇帝戦争に巻き込まれ落命するが、古の神々の奇蹟により蘇生した。だが、未だ何らの使命も果たせ得ぬ彼に、既に行き場はない。胸を張って故郷へ凱旋するために、名声を得たい。だが、どうやって?
スループの街で無為の日々を送るテューレに「黄金峡を探してみませんか?」と謎の女性ラトーナが冒険話をもちかける。彼はその呼びかけに応じ、仲間を募って旅に出た。“幾多の試練を乗り越え、そこにたどり着いた選ばれし者は、いかなる望みでも叶えられる”という伝説の地・黄金峡を目指して――
果たして、一行は無事に黄金峡へたどり着き、願いを叶える事ができるのか? ――表紙裏より
新キャラを多く登場させた今作は、クリスタニアサーガという大きな物語を読んでいる身としては、少し寂しく感じられる。
主人公テューレは、これまでとは異なり成長途上の英雄といった感じ。レードンやリュース達と比較すると物足りなく思えてしまうが、このようなエピソードも時には必要だろう。
妖魔王の持つポテンシャルが伝わり切らない。
プロローグ 第一章 闇の彼方に 第二章 帝都の一番長い日 第三章 暁に走れ 第四章 暗黒神降臨 エピローグ
傭兵団・獣の牙のリュースは、封印の解法を継承し、神獣の支配する地クリスタニアに新たな時代の到来を導いた。
封印が解かれたことで、かつてこの地で覇を競いながらも浄化されつつあった妖魔を統べる王をも再び野に放つこととなった。還るべき場所もなく、かの妖魔王はベルディアの地に君臨すべく反乱を企てる。
同じ頃。リュース一行は、宿敵である暗黒の民が支配する、ベルディア帝国の王都に向かっていた。その役目も、その目的すらも知らず、彼らは再び大きな時代のうねりの中に巻き込まれていく。
神獣の民と暗黒の民、新しき民、そして妖魔。かの地に住まうすべての者の未来を、リュースらの決断が左右する――。 ――表紙裏より
後の時代である『傭兵伝説』への繋がりが見え隠れするが、基本的には単体として楽しめる造りになっている。しかし何と言っても驚いたのは、ダナーンからの使者の正体である。物語ではスポットライトが当てられないが、読者には嬉しい設定だ。長らくダナーンの内情は描かれていないと思うので、その辺りが気になる。
全体的には妖魔王との決着に物足り無さを感じる。確かに落とし所として妥当ではあるが、やはり想像を超えた演出を見せて欲しかった。
ノリが作者に合っていないように感じる。
オペレーション1 スリング・ストーン オペレーション2 カウント・ダウン オペレーション3 スペース・ラナウェイ オペレーション4 ショート・バケーション オペレーション5 トラファルガー・クライシス
西暦二三〇〇年、地球をはるか一五〇〇光年離れたヘンリエッタ星域、惑星国家間で戦闘状態にあった。
強大な軍事国家“王国”を打倒するため、惑星国家キビの防衛大学士官候補生たちは、降伏した政府に代わって、就航直前の宇宙戦闘艦を購入し、宇宙の大海へと乗り出してゆく。その購入代金と運用費用を捻出するため、彼らは、宇宙規模のTVネットワークと契約するのであった。かくして、宇宙空間での戦闘を全世界にライブ放送するという専門チャンネルが誕生する。前代未聞の出来事に、全世界の世論は大きく揺れはじめる……。
水野良が挑むスペースファンタジーの新境地、待望の新シリーズここに開幕! ――表紙裏より
『ロードス島』シリーズの硬派な印象が強い水野良だけに、この作品には驚いた。宇宙モノな上に女性がメインの物語だからである。
この作者らしい丁寧さは随所に見受けられるものの、幾らなんでもストーリー展開がゆっくり過ぎて物足りない。第1巻であるから仕方ないのかも知れないが、全体的な“軽さ”はどうにかならないものだろうか。水野良には合っていない作風な気がする。
未来なのに古い恋愛ドタバタを見せられる。
オペレーション6 デッドリー・ストーム オペレーション7 レッスル・マニアック オペレーション8 ザ・コール・フローム・ホーム オペレーション9 ファイナルアンサー
西暦二三〇〇年、地球をはるか一五〇〇光年離れたヘンリエッタ星域は、惑星国家間で戦闘状態にあった。
強大な軍事国家“王国”を打倒するために、惑星国家キビの防衛大学士官候補生たちは、降伏した政府に代わって就航直前の宇宙戦闘艦を購入し、宇宙の大海へと乗り出してゆく。
“王国”との幾度かの戦闘により、宇宙戦闘艦“アマテラス”は手痛いダメージを被った。王国からの圧力で真空ドックへの入港も拒否された“アマテラス”は、クルー自らが船外作業での補修を余儀なくされる。クルーの間に不安な空気が漂い始め、次第にその目に見えない圧力に支配されつつあったこの戦闘艦に、今また静かに忍び寄る不気味な黒い影があった…… ――表紙裏より
主人公の一人サンリの恋の行方と、敵艦との戦闘が1回――これが今作の全てで、前作同様物足りなさを感じる。
恋愛パートが古臭い。特に未来の物語だけに、それが顕著に現れてしまっている。やはり水野良には軽い話は合わないと思う。
乗務員の多さを考えると、今作のような話は再び書かれる事が有りそうだ。この辺りをどうにかしないと、これから面白くはなっていかないと思う。
今更ながらキャラクターの見分けが付くようになった。
オペレーション10 ファースト・コンサート オペレーション11 ザ・グレート・エスケープ オペレーション12 スターダスト・メモリー
西暦二三〇〇年、地球をはるか一五〇〇光年離れたヘンリエッタ星域は、惑星国家間で戦闘状態にあった。
強大な軍事国家“王国”を打倒するために、惑星国家キビの防衛大学士官候補生たちは、降伏した政府に代わって就航直前の宇宙戦闘艦を購入し、宇宙の大海へと乗り出してゆく。
宇宙戦闘艦“アマテラス”は、銀河ネットワークによる番組放送の効果もあって、一部民間人の支持を得ることができた。後方支援を持たない“アマテラス”の寄港を、惑星シュウVは受け入れ、熱狂的な歓迎を受けるクルーたち。だが、“王国”は静かに次なる一手を進めていた…… ――表紙裏より
ようやく膨大な数の女性キャラクター達の区別が付くようになった。今までは「やたらと没個性なキャラが多いな」と思っていたのだが、よく読めばそうでもないようだ。
ストーリー展開は相変わらずスローで、2冊分を1冊に纏めて貰いたいくらいである。出版ペースも遅い事だし。
ただ、これから面白くなって行く要素は多いと思う。次巻辺りが中盤の山場だろう。
極めて淡々とした第一部の終了。
オペレーション13 グラビティ・ウェル オペレーション14 ロスト・シップ オペレーション15 ファースト・キス
西暦二三〇〇年、地球をはるか一五〇〇光年離れた宙域にあるヘンリエッタ星団は、惑星国家間で戦闘状態にあった。
強大な軍事国家“王国”を打倒するために、惑星国家キビの防衛大学士官候補生たちは、降伏した政府に代わって就航直前の宇宙戦闘艦を購入し、宇宙の大海原へと乗り出してゆく。テロリストと王国に糾弾されつつも、銀河ネットによる番組放送で自由護衛艦“アマテラス”の人気は高まる一方。しかし、彼らを受け入れた惑星国家シュウは王国の侵略を受けて降伏し、アマテラスは高機動突撃艦“リサ”の猛攻にさらされる。絶体絶命の危機をまえに、アマテラスとった最後の手段とは…… ――表紙裏より
前作の感想で「次巻辺りが中盤の山場だろう」と書いたのだが、今作は全く山場が無かった。しかしこれで第一部は終了らしい。
全体的には今作が最もよく纏まっていたと思うが、ストーリーは遅々として進まず、流石に盛り上がりに欠ける。それでも読ませてしまう辺りは作者の文章力が為せる業か。
第二部が始まる次巻以降は、第一部とどのような点が異なるのかに注目したい。
初の戦死者。しかし、その悲しみは伝わらない。
オペレーション16 ウォー・ゲーム オペレーション17 ウェルカム・パーティー オペレーション18 バトル・ロイヤル
西暦二三〇〇年、地球をはるか一五〇〇光年離れた宙域にあるヘンリエッタ星団は、惑星国家間で戦闘状態にあった。
強大な軍事国家“王国”を打倒するために、惑星国家キビの防衛大学士官候補生たちは、降服した政府に代わって就航直前の宇宙戦闘艦を購入し、宇宙の大海原へと乗り出してゆく。
惑星シュウでの激闘に続く長い漂流の末、アマテラスは企業惑星インカにたどり着く。折しも新造戦闘艦が完成したばかりのインカ、でついに連合各国軍との合流を果たしたアマテラス。しかし、ここでも彼らの立場は微妙なものだった。
そんな中、なんと王国軍の特殊部隊が民間施設であるインカ宇宙港を急襲する…… ――表紙裏より
今回は殆ど舞台は地上で、そこで繰り広げられる連合国との知略戦と、王国の特殊部隊との戦闘が主である。そこで初めて味方に死者が出るが、元々個性が薄いキャラクターが多い為に、あまり凄惨さが伝わって来ない。
最期に初めて宇宙を舞台に戻るが、「本当の戦闘はここからだ」という処で終わってしまう。それなりに見せ場は作ってはいるが、前巻同様、どうも派手さに欠ける。
あまりにも物語を用意周到に作り過ぎていて、何となく先の読めるような展開なのも気になる。良い意味で裏切ってくれれば良いのだが。
前作とは打って変わって全編宇宙。
オペレーション19 イージス・シールド オペレーション20 エンパイア・ストライクス・バック オペレーション21 サード・マン
西暦二三〇〇年、地球をはるか一五〇〇光年離れた宙域にあるヘンリエッタ星団は、惑星国家間で戦闘状態にあった。強大な軍事国家“王国”を打倒するために、惑星国家キビの防衛大学士官候補生たちは、降伏した政府に代わって航行直前の宇宙戦闘艦を購入し、宇宙の大海原へと乗り出してゆく。
惑星インカを急襲した王国の次なる一手は、双胴遊撃艦ミュライでのアマテラス追撃。対するシノンがとった戦法は、またも意外なものだった。そして辛くも勝利を収めたアマテラスは母星キビを目指し、一方王国は世襲の若き指導者ミシェル・ペリエが実験を掌握。ヘンリエッタ紛争は一大局面を迎えつつあった――。 ――表紙裏より
今作で描かれたイベントは2つ。例によって、それぞれが丹念に描かれている。流石に登場キャラクターの紹介的エピソードは無くなって、その為か少し展開が重い気がした。
いよいよ物語も佳境で、作中のテレビ屋と同様、どうやって結末を着けるのかが焦点となって来たようだ。
――
別シリーズとの違いは明確に付けている。
プロローグ ラッキースター! カンフーファイター! 第1章 タクト・マイヤーズ 第2章 エルシオール 第3章 パニック・ピクニック 第4章 星に願いを…… 第5章 ブラマンシュ・ザ・バーゲン 第6章 強行突破
「おまえにこのエルシオールとエンジェル隊の指揮をとって欲しいんじゃ」
トランスパール皇国宇宙軍辺境星域駐留艦隊司令タクト・マイヤーズは、かつての恩師ルフト・ヴァイツェンの言葉に少しだけ驚いた。
クーデターにより追われる身となったシヴァ皇子を乗せた儀礼艦エルシオールと、それを護衛するエンジェル隊を指揮し、皇子を安全な場所まで脱出させるという、タクトの過酷な任務が始まる。さらに、紋章機の性能を最大限に引き出すために、天使たちと仲良くならなくてはならない。
しかし、個性派揃いの天使たちは、一筋縄ではいかなくて……
大人気お気楽スペース・オペラが、総監修を務める水野良自身の手で小説化! ――表紙裏より
一見して「『スターシップ・オペレーターズ』シリーズと何か違うのか?」という疑問が沸くだろうが、その心配は無用。確かに同ジャンルではあるが、ちゃんとお互いの領分は侵さずにストーリーが練ってある。個人的には人物数が絞られている、こちらのシリーズの方が好みだ。
それぞれのキャラクターの個性もそれなりに出ているし、ただの“美少女モノ”では終わらないだろう。問題は刊行速度だが、こればかりはどうしようもないのだろうなぁ……。
内容はバラエティに富むも、残念な部分が多い。
第1話 明日に向かって打て! 第2話 幸せの黄色いくちばし 第3話 ホンキートンク・ガールズ 第4話 ヴァニラはある朝突然に 第5話 月に歌えば 第6話 天使たちにララバイを 特別短編 虚空からの呼び声
「ヴァニラ、それ、アタシのグラス……」
「え……」
「中身、ワインよ。大丈夫?」
ゆっくりとグラスをテーブルに置くヴァニラ。頭に血が昇り、心臓がどくんと音をたて……。
結婚パーティーで、ワインにほろ酔いならぬ、二日酔いしてしまったヴァニラ。目覚めると、自分のベッドの上。しかし、いつものヘッドギアがなくなってしまっていて……。(ヴァニラはある朝突然に)
月刊ドラゴンマガジンに連載された、お気楽エンジェルたちのオリジナルストーリーがついに登場! 柘植めぐみ版書き下ろし短編、水野良特別短編も収録して幸福感なんと1000000…(以下略)%アップ! なんだかとってもいい感じ! ――表紙裏より
7つの短編の内、6つを柘植めぐみが書いているのだが、こちらにカテゴライズさせてもらった。
基本的にバラエティに富み、非常に読み易い文体には好感が持てる。が、完全に読み切りとしての体裁を取っているのと、やや設定が定型的なのが少し不満。完全にエンジェル隊が主役となってしまって、単なる美少女ゲームのノベライズっぽくなってしまったのが残念だ。
本編シリーズに期待したい。