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野矢茂樹

HOBBY MAIN

タイトル 出版社 初版日 勝手な採点 通販
哲学の謎 講談社現代新書 1996年01月20日 ★★★★☆ 購入
無限論の教室 1998年09月20日 ★★★ 購入

哲学の謎

一言

“答え”を与えない哲学入門書

目次

意識・実在・他者
生物が絶滅しても夕焼けは赤いか
死と他者
実在の世界はどこにあるのか
実在が視野から消える
他人の意識も視野から消える
死んでも世界は終わらないか
他人の意識
純粋に内面的な世界
夢中の死
記憶と過去
五分前世界創造仮説
何が「正しい」記憶なのか
神の視点と人間の視点
記憶される過去・語り出される過去
時の流れ
時間の中断
時間の流れの早さ
時の川岸
永遠の「いま」
複視点的世界了解
意味変貌・自己認識・時の流れ
私的体験
逆転スペクトル
君が「赤」と呼ぶ色は何色なのか
知覚世界の自閉
意味の自閉
私的言語
経験と知
経験の一般化
斉一性の原理
知の本能と習慣
何を一般化してもよいのか
室内鳥類学
経験の意味
規範の生成
正常と異常
狂気・病気
「異常」ということ
孤独な規律
見本・手本
規範の学習
意味の在りか
意味への問い
個と一般
一般観念
意味理解
言語の構造
語と文
ものの名前
行為と意志
猫の顔洗いは行為なのか
意志という動力
未知の惑星にて
アニミズム
意志から意味へ
意図の探求
馬と乗り手
自由
人間もまた物の塊にすぎない
自然という観点・実践という観点
随意筋と不随意筋
「しないでもいられた」
決定された世界
非決定の世界
虚構の介入

梗概

――あのさ、君は、自分が死ぬことによって何が終わるんだと思う?
少なくとも世界が終わるわけではない。しかし、確かに何かが終わる。
ときには、自分が死ぬといっさいが無に帰すような感じさえ抱く。
――そうそう。そういう感じって、確かにある。でも世界はほとんど無傷のままあり続ける。これ、どうも、なんか妙な気分だよね。
実在の世界はあり続けるが、ひとつの意識の世界が終わるとは言えないだろうか。
――意識の世界?
死は、身体の物質的組織の変化であると同時に、いま感じているこの温かさ、この明るさ、これらの物音の意識、そしてもろもろの記憶の喪失にほかならない。世界そのものは終わらないが、私が五官で受け取っているこの意識の世界は消失する。
――うーん、何かしっくりこないな。何だろう。
   ――表紙裏より

感想

哲学という枠組みの中では比較的理解し易いトピックを、非常に分かり易い文章の対話篇で纏めている。
しかし書かれ方のスタンスは変わっている。本書では何らかの哲学的問いに対して、何の解答も与えてくれない。「正解なんて無い」という結論すら無い。
つまり、これは思考のキッカケに過ぎない。そう意図して書かれた本であると考えられる。ココから哲学の様々な地方へ旅立て、というのが筆者の真に言いたかった事だろう。


無限論の教室

一言

無限に関する対立した考え方を平易に紹介している。

目次

第一週 学生が二人しかいなかったこと・教室変更
第二週 気まずい時間・アキレスと亀・自然数は数えつくせない
第三週 チョコレートケーキ・パラドクスへの解答・可能無限と実無限
第四週 全体と部分・キリンとカバ・次元の崩壊
第五週 実数・独身製作器としての対角線論法・喫茶店のネコ進法講義
第六週 実数とは何か・ピタゴラスと豆大福・余興
第七週 マジタ・ベキ集合と概念実在論・羊羹の思い出
第八週 一般対角線論法・無限の無限系列・カントールのパラドクス
第九週 土手の散歩・ラッセルのパラドクス・嘘つき・自己意識の幻想
第十週 直観主義・パラドクス断罪・虚構と排中律・ブラウアーの手袋
第十一週 暑い部屋・形式主義はいかにして排中律を取り戻そうとしたか
第十二週 ゲーデルの不完全性定理・G・インドのとら狩り

梗概

第一週──「無限について講義するのですが、(略)無限ということで、どういうイメージをもっていますか。ええと、あなた、あの、お名前は何というのですか」
「タカムラです」
ふーん。彼女はタカムラさんっていうのか。
「タカムラさん。うん。無限について何かイメージ、おありですか?」
「とくには……」
「『無限』という日本語は知っていますか」
「ええ、まあ」
「じゃ、何か言えるでしょう」
「一番大きい量のことでしょうか」
なぜか、この答えを聞いてタジマ先生はとてもうれしそうな表情をした。
「それ、それはですね、いちばん愚劣な答えです」
   ――表紙裏より

感想

“無限”という物の細かな概念について、丁寧に解説している。後半はかなり難しい議論になるが、途中までは特に予備知識が無くても簡単に読み進められるだろう。
不必要に難しい証明を用いているように感じる箇所も無くはないが、やはり“何かを考えるキッカケ”を与えてくれるという意味では、貴重な1冊である。


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