タイトル | 出版社 | 初版日 | 勝手な採点 | 通販 |
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蕎麦ときしめん | 講談社文庫 | 1989年10月15日 | ★★☆ | 購入 |
国語入試問題必勝法 | 1990年10月15日 | ★★★☆ | 購入 | |
今どきの教育を考えるヒント | 2002年10月15日 | ★★★ | 購入 | |
ゴミの定理 | 2004年02月15日 | ★★ | 購入 |
パスティーシュの幕開け
蕎麦ときしめん 商道をゆく 序文 猿蟹の賦 三人の雀鬼 きしめんの逆襲
読者はパスティーシュという言葉を知っているか? これはフランス語で模倣作品という意味である。じつは作者清水義範はこの言葉を知らなかった。知らずにパスティーシュしてしまったのだ。鬼才野坂昭如をして「とんでもない小説」と言わしめた、とんでもないパスティーシュ作品の数々、じっくりとお楽しみを。 ――裏表紙より
人によっては「は? これで終わり」と思ってしまうような話が多いだろう。この本の多くの作品の問題点は“パスティーシュ”と分かっていないと楽しめないモノが多い事だ。
そんな中で、比較的万人受けしそうなのは表題作の「蕎麦ときしめん」と「猿蟹の賦」だろうか。個人的には「序文」がお薦めである。
普通の小説として読んでも面白い。
猿蟹合戦とは何か 国語入試問題必勝法 時代食堂の特別料理 靄の中の終章 ブガロンチョのルノワール風マルケロ酒煮 いわゆるひとつのトータル的な長嶋節 人間の風景
ピントが外れている文章こそ正解! 問題を読まないでも答はわかる!? 国語が苦手な受験生に家庭教師が伝授する解答術は意表を突く秘技。国語教育と受験技術に対する鋭い諷刺を優しい心で包み、知的な爆笑を引き起こすアイデアにあふれたとてつもない小説集。吉川英治文学新人賞受賞作。 ――裏表紙より
なかなか傑作揃いの短編集。「時代食堂の特別料理」は星新一のショートショートを思わせる世界観。その他の作品も基本的に面白い。何を模倣しているのか不明な作も有るが、あまり“パスティーシュ”という事を意識しないで読んだ方が良いかも知れない。
清水流教育論。
教育を大きな視点で考える 教育業界という奇妙な世界 若者の問いに大人として答える 新聞の教育談義をながめれば 荒れる子供達の原因 消費文明につかった日本人へ 生徒の自主性の尊重とは 教育の背負う宿命 教育論の原点に立つ 校長先生という職業 教育、そして日本の危機 教育の根本原理 若者の問いに再び答える 名先生の思い出 ほめる教育のすすめ 学級崩壊を考える 今どきの子供たちの実像 親と子の逃れられない関係 教育現場の不文律 文部省の教育方針をチェック
名先生に学ぶ上手な教育とは? ホメる教育が子供を育てる? 学級崩壊はなぜ起きた? 生徒の自主性の尊重とは? 新聞の教育談義の摩訶不思議? 教育業界は奇妙な世界だった? 親も子供も、先生も生徒も、もう一度みんなで教育を考え直しませんか? ユニークな視点でとらえた清水流教育論エッセイ。 ――裏表紙より
思わず「なるほど!」と思ってしまう部分も有れば、首を傾げてしまう部分も有る。一長一短なエッセイ集だが、テーマを教育に絞っている割には、それなりに面白い。この辺りは流石、作家だ。
ただ、この作者の書く事は、何処までが本気なのか、時々分からなくなるのが難点だ。多分、今作では全て真面目に書いているのだろうが。
取り合えず表題作を読むべき短編集。
他小説 ニュース・ヴァリュー ドラマチック・ハイスクール 鄙根村の歩き方 ケータイ星人 楽しい家族旅行 夢の話 ガイドの話 ビデオを見る 泥江龍彦のイラン旅行 鮫島村のデナーショー ゴミの定理
人口二〇七四人の村をあてどもなく旅するためのガイドブックとは――「鄙根村の歩き方」。学園ドラマの常識をはるかに超える衝撃的な「ドラマチック・ハイスクール」。深刻なゴミ問題に対して数学者があみだした驚くべき公式の数々を明かす表題作などなど、独走するセンスがきらめく一ダースのユーモア小説集。 ――裏表紙より
始まりの「他小説」から「楽しい家族旅行」くらいまでは面白く読める。作家の虚栄心を描いた「ニュース・ヴァリュー」は秀逸だと感じた。が、それ以降は意図が掴めない作品がチラホラ。僕の読み方が悪いのかも知れない。この辺りがパスティーシュ文学の難しい所か。
表題作であるラストの「ゴミの定理」には流石に作者のポテンシャルの高さを感じさせられた。こういう内容の日記を書きたいものだ。