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殊能将之

HOBBY MAIN

タイトル 出版社 初版日 勝手な採点 通販
ハサミ男 講談社文庫 2002年08月15日 ★★★★☆ 購入
美濃牛 2003年04月15日 ★★★★ 購入
黒い仏 2004年01月15日 ★★☆ 購入
鏡の中は日曜日 2005年06月15日 ★★★★ 購入

ハサミ男

一言

奇を衒いつつも、重厚長大なミステリー。

目次

第一章
第二章
第三章
第四章
第五章
第六章
第七章
第八章
第九章
第十章
第十一章
第十二章
第十三章
第十四章

梗概

美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。三番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作!   ――裏表紙より

感想

前半部分の退屈さ、真犯人の分かり易さなどの欠点は有るものの、それを補って余り有る程の、読者へ向けてのトリックの数々には脱帽。我孫子武丸の『殺戮にいたる病』を彷彿とさせるが、無駄な凄惨さを描いていない分、嫌悪感を和らげている。
作中で至る所に散りばめられた心理的知識や推察も面白く、中盤からは全く読者を飽きさせない。個人的には“医師”の描き方に、もう一工夫欲しかった感が有る。
人物描写や情景描写は、これでもかというほど丁寧で、非常に好感の持てる文体。一見、「脇道に逸れ過ぎではないか?」と思えるような場面も有るが、それは決して無駄ではなく、作中の世界により確かなリアル感を醸し出す事に成功している。


美濃牛

一言

まるで一つの村全てを描いたかのような壮大なスケール。

目次

プロローグ
第一章 鬼の頭を切り落とし
第二章 牛の角もつ鬼を追ひ
第三章 めぐり逢ふたは橋の上
第四章 鬼の岩屋で朽ち果てり
エピローグ

梗概

病を癒す力を持つ「奇跡の泉」があるという亀恩洞は、別名を<鬼隠れの穴>といい、高賀童子という牛鬼が棲むと伝えられていた。運命の夜、その鍾乳洞前で発見された無惨な遺体は、やがて起こる惨劇の始まりに過ぎなかった。古今東西の物語の意匠と作家へのオマージュが散りばめられた、精密で豊潤な傑作推理小説。   ――裏表紙より

感想

本の厚さに見合うだけの登場人物数に複雑な人間関係。まるで村一つ丸ごとを描いたかのような物量は圧巻。ストーリーも細かい荒さは有るものの、それを勢いで跳ね飛ばすだけの力を感じる。
ただプロローグが必要だったのかどうか。他の書き方は無かったのか。僕には作品の魅力を2割ほど損なっているように感じられた。そしてプロローグに辻褄を合わせる為のエピローグ。これは第四章の終盤から違和感が続く。読者に対するミスディレクションが、少しアンフェアな方法で行われている。
密室も不可能犯罪も出て来ない本作は、本格ミステリとは言い難い体裁をしている。これ自体は問題無いが、デビュー作『ハサミ男』で魅せられた読者には、物足りなく感じられるかも知れない。


黒い仏

一言

驚愕の展開は果たして一般読者に受け入れられるのか?

目次

序章
第一章 蒼い月
第二章 朱い虫
第三章 黄の印
第四章 藍の気
終章

梗概

九世紀の天台僧・円載にまつわる唐の秘宝探しと、一つの指紋も残されていない部屋で発見された身元不明死体。無関係に見える二つの事柄の接点とは? 日本シリーズに沸く福岡、その裏で跋扈する二つの力。複雑怪奇な事件の解を、名探偵・石動戯作は、導き出せるのか? 賛否両論、前代未聞、超絶技巧の問題作。   ――裏表紙より

感想

中盤まで「あれ? あれ?」という違和感を抱かせ、それが不安感に変わり、その後は……。何にせよ、売り文句の「賛否両論、前代未聞」というのは間違い無い。一方で「超絶技巧」というのは首を捻らざるを得ない感じがする。
この傾向は『美濃牛』から始まっており、作者が本当に書きたいのはミステリーではないのではないか、という気さえする。何しろ人類の存亡を賭けた戦いが始まってしまったりしてしまうのだ。
そんな中でミステリー部分だけを抽出すると、それはそれで薄っぺらいという印象だ。とても及第点は与えられるものではなく、それが『ハサミ男』の作者となれば尚更だ。ある意味で次作がどうなるのかが気になる。


鏡の中は日曜日

一言

もう一つの『暗黒館の殺人』。

目次

鏡の中は日曜日
第一章 鏡の中は日曜日
第二章 夢の中は眠っている
第三章 口は真実を語る
樒/榁

梗概

梵貝荘と呼ばれる法螺貝様の異形の館。マラルメを研究する館の主・瑞門龍司郎が主催する「火曜会」の夜、奇妙な殺人事件が発生する。事件は、名探偵の活躍により解決するが、年を経た後、再調査が現代の名探偵・石動戯作に持ち込まれる。時間を超え交錯する謎。まさに完璧な本格ミステリ。続編「樒/榁」を同時収録。   ――裏表紙より

感想

まずは「鏡の中は日曜日」について。これは綾辻行人の『館』シリーズを構成のみに特化して抽出し再構成したという、ちょっと他では見る事が出来ない珍品だ。或る意味で『館』シリーズの総決算であり、作品の傾向こそ全く異なるものの、これは『暗黒館の殺人』と同じ側面を持つ事は否定できない。
すると自然に本作品と『暗黒館の殺人』との対比が行われる事になるが、そうなると少し分の悪い勝負と言わざるを得ない。構成だけなら決して負けてはいないものの、雰囲気や人物設定や殺人トリックなどは全てに於いて弱い。
そして「樒/榁」だが、これも構成ありきで他の面が疎かになっている。非常に残念な事だ。
全体を総括すると「構成だけなら100点を付けられる」という所か。帯の言葉にまで気を使った演出は見事だった。


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