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高畑京一郎

HOBBY MAIN

タイトル 出版社 初版日 勝手な採点 通販
クリス・クロス 混沌の魔王 電撃文庫 1997年02月25日 ★★★★☆ 購入
タイム・リープ あしたはきのう 上巻 1997年01月25日 ★★★★★ 購入
タイム・リープ あしたはきのう 下巻 購入
ダブル・キャスト メディアワークス 1999年04月20日 ★★★★☆ 購入
ダブル・キャスト 上巻 電撃文庫 2000年02月25日 購入
ダブル・キャスト 下巻 購入
Hyper Hybrid Organization 00-01 訪問者 2004年06月25日 ★★★★ 購入
Hyper Hybrid Organization 00-02 襲撃者 2004年10月25日 ★★★★ 購入
Hyper Hybrid Organization 00-03 組織誕生 2005年11月25日 ★★★☆ 購入
Hyper Hybrid Organization 01-01 運命の日 2001年05月25日 ★★★☆ 購入
Hyper Hybrid Organization 01-02 突破 2002年11月25日 ★★★★ 購入
Hyper Hybrid Organization 01-03 通過儀礼 2003年11月25日 ★★★☆ 購入
Hyper Hybrid Organization 01-04 謀略      

クリス・クロス 混沌の魔王

一言

小説内虚構にすら現実感を持たせ、しかし目指している場所は全く別の処に在る。

目次

第1章 地下1階
第2章 地下2階
第3章 地下3階
第4章 地下4階
第5章 地下5階
第6章 魔王の間
第7章 幻影の呪縛

梗概

MDB9000。コードネーム“ギガント”。日本が総力を結集して造り上げたスーパーコンピュータである。世界最高の機能を誇るこの巨大電子頭脳は、256人の同時プレイが可能な仮想現実型RPG「ダンジョントライアル」に投入された。その一般試写で現実さながらの仮想世界を堪能する参加者たち。しかし、彼らを待っていたのは華やかなエンディングではなく、身も凍るような恐怖だった……。
第1回電撃ゲーム小説大賞で<金賞>を受賞した高畑京一郎が描き出す驚愕の仮想現実世界。日本初のバーチャルRPGノベルが、今、文庫で起動する――
   ――表紙裏より

感想

単純なシステムのRPGを基礎に、複雑なストーリーを展開して見せた手腕は見事だ。ただし、そのトリック自体は比較的広く使われているものなので、意外に新鮮味は少ない。やはりこの作品の魅力は、簡潔だが薄っぺらでない文章と、多彩で人間味のあるキャラクターだろう。この作品が高畑京一郎のデビュー作だが、確かに『それらしい』造りである。
ただ後半になると、ストーリー展開が急ぎ過ぎた感があるのが残念だ。前半がかなりどっしりと書き込まれているだけに、それが鮮明になってしまっている。内容の要素を考えれば、分冊しても良い位のボリュームがある筈なのに、250頁に収まっているのは、明らかに後半が足りないためだ。
この作者の作品としては、これだけがはっきりとした結末を与えていないが、『タイム・リープ』を読む事によって、ある程度の推察が可能となっている。


タイム・リープ あしたはきのう

一言

妥協を許さぬ構成力には感嘆するしかない。

目次

序章 はじまりとおわり
第一章 最初は火曜日
第二章 水曜から木曜
第三章 二度目の水曜
第四章 金曜から木曜
第五章 月曜への往復
第六章 再び月曜日へ
第七章 最後は土曜日
第八章 そして日曜日
終章 おわりははじめに
おまけ
あとがきがわりに

梗概

鹿島翔香。高校2年生の平凡な少女。ある日、彼女は昨日の記憶を喪失している事に気づく。そして、彼女の日記には、自分の筆跡で書かれた見覚えの無い文章があった。“あなたは今、混乱している。若松くんに相談なさい……”
若松和彦。校内でもトップクラスの秀才。半信半疑ながらも、彼は翔香の記憶を分析する。そして、彼が導き出したのは、謎めいた時間移動現象であった。“タイム・リープ――今の君は、意識と体が一致した時間の流れの中にいない……”
第1回電撃ゲーム小説大賞で<金賞>を受賞した高畑京一郎が組み上げる時間パズル。遂に、文庫に跳躍!!
   ――上巻表紙裏より

若松和彦。校内でもトップクラスの秀才。半信半疑ながらも、彼は翔香の記憶を分析する。そして、彼が導き出したのは、謎めいた時間移動現象であった。“タイム・リープ――今の君は、意識と体が一致した時間の流れの中にいない……”
タイム・リープ。意識だけの時間移動現象。正常な時から“剥がれて”しまった翔香の『意識時間』。その謎に和彦は迫る。だが、浮かび上がった事実は、翔香を震撼させた。“そ、んな……嘘よ……”
第1回電撃ゲーム小説大賞で<金賞>を受賞した高畑京一郎が組み上げる時間パズル。最後のピースが嵌る時、運命の秒針が動き出す――。
   ――下巻表紙裏より

感想

一読しただけだと鹿島翔香は極めて難解な仕組みの時間旅行(若松和彦なら“時間間旅行”と言うかも知れない)をしているように感じるのだが、和彦が作中で示しているように実はそこには簡単な法則が存在しているに過ぎない。しかしそこから派生する事象は登場人物たちにとっては難物であることに変わりは無く、それに対して“無理の無い天才ぶり”を発揮する和彦の活躍は、読んでいてとても気持ちが良い。
この作品の凄い所は、作中で発生するトラブルのほとんどが“論理の破綻の可能性”である事だ。つまり、アクション性が全く無いのである。それだけに、トラブル解決には僅かな強引さも用いてはならない。無論、論理学を使えばそのようなストーリーを作る事は難しくないが、そんな話を“エンターテイメント”として成立させるには並々ならぬ構成の緻密さが要求される。この本はそれをかなり高いレベルでクリアしている。
このストーリーの骨子が“時間旅行という『非日常』に対して、『日常』に属する主人公たちがどうやって立ち向かうか”であるのは明らかだが、実は“和彦の女嫌い”というエピソードが物語に厚みを持たせているように思う。それによって、限定された時間内のストーリーに“時間の幅”が生まれているし、“関鷹志というキャラクター”も生きている。
ただ、この作品にも弱点はある。それはこの話の根本に関わる点で、恐らく誰しもが不満に感じるのではないか。これについてはネタバレになってしまうので書く事はしない。
文庫化されたのは『タイム・リープ』が先だが、作品としては『クリス・クロス』の方が先に書かれている。全く異なるストーリーだが、最後の“あとがきがわりに”は『クリス・クロス』を読んでから見る事を強くお勧めする。


ダブル・キャスト

一言

傑作『タイム・リープ』に自ら挑戦した作品。しかしその壁は高かったと言える。

目次

序章
第1章 月曜日
第2章 火曜日
第3章 水曜日
第4章 木曜日
第5章 金曜日
第6章 土曜日
第7章 日曜日
第8章 そして月曜日
終章

梗概

Ryosuke Urawa was a high school student who lived an ordinary life.
One day, Ryosuke encounters an incident.
He witnesses a boy falling from a ruined building.
His name was Ryosuke Kawasaki.
This unexpected meeting was just the beginning.
The beginning of DOUBLE CAST……
   ――ハードカバー版裏表紙より

川崎涼介は、廃墟となったビルの屋上から転落し、意識を失った。見知らぬ家で目覚めた涼介は自宅へと向かう。だがそこで目にしたのは、自分の葬式だった――。
浦和涼介は、帰宅途中に見知らぬ若者の転落事故に遭遇する。惨事に直面し、気を失う涼介。不可解な記憶喪失の、それが始まりであった――。
川崎亜季は、まるで亡き兄のように振る舞う見知らぬ少年に困惑していた。だが彼女は知る事になる、自分に迫る危機と、自分を護ろうとする“心”を――。
名作『タイム・リープ』から二年。高畑京一郎の新作が、遂にベールを脱ぐ。
   ――ハードカバー版表紙裏より

川崎涼介は、ビルの屋上から転落し意識を失った。見知らぬ家で目覚め自宅へと向かうが、そこで目にしたものは、自分の葬式だった。
浦和涼介は、帰宅途中に見知らぬ若者の転落事故に遭遇する。惨事に直面し気を失う涼介。不可解な記憶喪失の、それが始まりであった。
川崎亜季は、まるで亡き兄のように振る舞う見知らぬ少年に困惑していた。だが彼女は知ることになる。自分に迫る危機と、自分を守ろうとする心を……。
『タイム・リープ』に次ぐ高畑京一郎の名作、ここに文庫化!!
   ――文庫版上巻表紙裏より

浦和涼介は、革のジャケットに身を包み、携帯電話のボタンを押す。確信はない。だが、ただ一度しかないチャンスを無にせぬために。
川崎亜季は、手の甲で目のあたりを拭ってから顔を上げた。涙に濡れたその顔で、だが確かに亜季は微笑んだ。
川崎涼介は、目の前で繰り広げられる乱闘に、戸惑い、そして歓喜する。涼介は口元に笑みを浮かべ歩き出す。一度は諦めたことを果たすために。
第1回電撃ゲーム小説大賞<金賞>受賞作家高畑京一郎が贈る、スーパーSF推理小説。物語が終わるとき、すべての謎は感動にかわる!
   ――文庫版下巻表紙裏より

感想

面白い。間違いなく面白い。が、全ての面に於いて前作『タイム・リープ』に及んでいない。
例えば導入部の主人公たちの混乱振りやそれに対するヒロインの不信は、二重人格物としては定型的過ぎて読む方は飽きてしまう。高畑京一郎に期待するのはパズルチックな構成やストレス感の無いストーリー展開であり、このような“お約束”な展開は他の作家がやる以上に読者を落胆させてしまうだろう。
トリックの解決も今回は終盤で一気に説明される事になっており、少しずつ謎を解決していった前作よりも唐突な印象を受ける。ヒロインの川崎亜季に(少なくとも中盤までは)魅力が無さ過ぎるのも気になる処だ。
対して浦和涼介はかなり巧く描かれている。第5章の最後の一文などは読者を混乱させつつも、その感情はすんなりと納得できる。そして第8章の活躍は爽快である。……が、この作品を楽しめるかどうかはラストの川崎涼介の葛藤に共感できるかどうかに係っているだろう。
『ダブル・キャスト』が『タイム・リープ』に唯一勝っている部分が在るとすれば、それは読後感だ。悲壮的な結末を終章で非常に巧くカバーしている。


Hyper Hybrid Organization 00-01 訪問者

一言

これ以上無い程の安定感を感じる一作。

目次

第一章 銃弾
第二章 訪問
第三章 病院
第四章 銀杏
第五章 推参

梗概

日本の裏社会にその名を轟かせる斜道組。その組織内部における勢力争いの中で、幹部のひとり速水敬介は窮地に立たされていた。そんな速水の前に現れたのは、初代組長の息子、宮内志郎だった。宮内はアメリカから極秘裡に帰国させたという三人の科学者、天本、藤岡、佐々木をかくまい、彼らに研究施設を提供することを速水に求め、その見返りに速水の苦境を打開すると約束する……。
「電撃hp」に好評連載『Hyper Hybrid Organization』外伝シリーズ第1弾!!
   ――表紙裏より

感想

『Hyper Hybrid Organization』シリーズ本編よりも前の時代を描く外伝シリーズ。本編は既に第3巻まで発行されているが、この外伝シリーズは第1巻との関わりが大きいようだ。
秘密組織“ユニコーン”がどのように結成されたのかが焦点のようだが、今の所はまだまだヤクザ同士の抗争が主で、寧ろ主要キャラクター達がどのように出逢っていったのかが中心に描かれている。
驚きなのは銀杏を食べるシーンだ。なんと40ページにも渡って、銀杏を食べるというシーンが描写されているのである。こんな小説が今までにあっただろうか。
全体的な展開はゆっくりだが、個々の人物の人柄が巧みに表現されているシーンが数多くあり、作者の力量を感じる。残る問題はやはり執筆速度か。年に2冊は書いて欲しいのだが……。


Hyper Hybrid Organization 00-02 襲撃者

一言

異例の速さで出版された外伝シリーズ第2巻。

目次

第六章 変身
第七章 波紋
第八章 会談

梗概

速水敬介の窮地を救うため、単身辰巳組の本家へと殴り込んだ宮内志郎。襲撃は成功し、速水の問題も一時的に棚上げされたかに思われた。しかし、面子を潰された辰巳組は、なりふり構わず宮内が訪れた病院を強襲。不意をつかれた宮内たちは絶体絶命の危機に陥った。銃弾を浴び崩れ落ちた宮内。と、その時、ついに彼らがその姿を現す……。
高畑京一郎が贈る男たちのドラマ。『Hyper Hybrid Organization』外伝シリーズ第2弾!!
   ――表紙裏より

感想

前作から僅か4ヶ月で発売される事となった『Hyper Hybrid Organization』外伝シリーズ第2弾。高畑京一郎としては過去最速のスピードである。
序盤では外伝第1巻の後始末的な展開が多くて退屈さを感じなくもないが、しかし確実にストーリーは進んでいく。物語の進行が加速するのは第八章からで、ここに来てようやく秘密組織“ユニコーン”結成の布石が見え始める。
登場人物達それぞれの個性もよく表されており、やはり作品の安定度は抜群。このまま順調に行けば、外伝シリーズはあと1,2冊で終わる事になるだろうか。本編シリーズも待ち遠しい。


Hyper Hybrid Organization 00-03 組織誕生

一言

意外にも予定調和的に終了してしまった外伝シリーズ最終巻。

目次

第九章 決断
第十章 変転
第十一章 攪乱
第十二章 撃沈
第十三章 結団

梗概

日本の裏社会にその名を轟かせる斜道組。この巨大組織の内紛に乗じて、動き出した佐々木隼人。佐々木は、斜道組の将来を左右する新組織の頂点に君臨すべく、親友である藤岡武士さえも切り捨てることに……。一方、速水敬介は、佐々木への協力を続けながらも、この新組織を己のものとするために、自身がハイブリッド手術を受けることを決意――。
策謀、決断、そして対決……。様々な思いと野望が渦まくなか、いまその組織が生まれる!
高畑京一郎が贈る男達のドラマ。『Hyper Hybrid Organization』00シリーズついに完結!!
   ――表紙裏より

感想

秘密結社「ユニコーン」の設立過程の様子や、佐々木と藤岡との決別、そして村上玲奈の重大な決心が描かれる。特に村上玲奈の立場がキーポイントで、本編シリーズ第1巻の最大の謎の答が、これであるような気さえする。
となると本編シリーズに於いても「ユニコーン」の中枢は、見た目ほどは結束が固い訳ではなさそうだ。その辺りは本編第3巻の予告でも仄めかされていたので、間違い無い所だろう。
いよいよ物語も佳境に入る資格を得られた。外伝シリーズそのものは、やや無難な所に落ち着いてしまった印象が有るが、本編が楽しくなる事は確実。後は執筆ペースだが、来年は3冊出すとの事なので、その言葉を信じて待つ事にしよう。


Hyper Hybrid Organization 01-01 運命の日

一言

高畑京一郎初の長編シリーズは、何と現代版『仮面ライダー』だった。

目次

序章
第一章 田崎研究所
第二章 パルメール
第三章 料亭
第四章 キッチン
第五章 大学図書館
第六章 リッジウェイ

梗概

それは楽しいデートのはずであった。しかし突然現れた黒い覆面集団とガーディアンの戦いに巻き込まれ、山口貴久の恋人緑川百合子の命はあっけなく奪われた。正義の味方とされるガーディアンの不可抗力ともいえるミス。世間の誰もがそれを責めることはなかった。ただひとり、貴久を除いて……。底無しの絶望の中で貴久は決意する。百合子を殺した「奴」を倒すと。超人的な力を持ち、まったく正体のつかめない謎の改造人間に復讐を果たすと……。
高畑京一郎初の長編シリーズ第1弾!!
   ――表紙裏より

感想

「仮面ライダー=ガーディアン」と「ショッカー=黒い覆面集団」という2つの公式が成り立った世界――それが今回の作品の舞台である。『仮面ライダー』と異なるのは、主人公が仮面ライダーでも悪の組織のボスでもなく、彼らの戦いの巻き添えを喰って恋人を亡くした大学院生だという処である。そして主人公が正義の味方であるガーディアンに復讐を誓う、という点も変わっている。
復習をする為には自らも改造人間(これを作中では『ハイブリッド』と呼んでいる)になるしかなく、その為には黒い覆面集団『ユニコーン』に加入しなくてはならない。しかし『ユニコーン』は正に神出鬼没であり、彼らと接触するだけでも一苦労である――というわけで、第1巻では『ユニコーン』と接触する場面まで描かれている。ストーリー展開はゆっくりだが比較的色々なイベントを織り交ぜているので飽きる事はないだろう。登坂秋芳や国府田警視正など、前作の『ダブル・キャスト』とは違い、見ていて気持ち良いサブキャラクターが多いのも安心できる。
しかし物語はまだまだこれからで、しかも概略は明らかなだけに、これからどのようにして面白さを出していくのかが大きなポイントだろう。


Hyper Hybrid Organization 01-02 突破

一言

何を狙っているのか、朧げながら見えてきた物は――

目次

第七章 手続き
第八章 移送
第九章 訓練
第一〇章 村雨省吾
第一一章 射撃
第一二章 卒業試験
第一三章 突破

梗概

恋人緑川百合子を失った絶望の縁に立ち、百合子を殺したガーディアンを倒すことだけを生きる目的と決意した山口貴久は、改造人間であるガーディアンと闘う力を得るために、悪の組織ユニコーンへと身を投じる。これまでの平穏な日常と決別した貴久。しかし、組織の歯車でさえもない彼を待ち受けていたのは、戦闘員となるための過酷な訓練だった。限界を超えた肉体の酷使を強いられ、戦闘のための知識と技術を叩き込まれる日々。怪我に倒れ脱落していく訓練生たち……。果たして貴久は、この地獄の訓練を乗り越え、さらには生死をかけた「卒業試験」を突破することができるのか!? 高畑京一郎が初めて挑む長編シリーズ第2弾!!   ――表紙裏より

感想

第1巻では設定の奇抜さが目立ったものの、単巻としては面白さが今一つであった。が、この第2巻では何となく作者の意図が見えてきたような気がする。
高畑京一郎という作家は良くも悪くも「構成力」がウリの作家である。その為にストーリー自体は読者にストレス無く頭に入れてもらう必要が在り、彼の外連味の無い文章などは、それに一役買っているのは間違い無い処だろう。しかも『タイム・リープ』や『ダブル・キャスト』といった従来の作品は、ストーリー自体にパズル的な要素を含ませており、作者としては自らの構成力を比較的示しやすかったのではないか、と思う。
しかし今回の『Hyper Hybrid Organization』は“ドラマ”である。対立する人間同士の葛藤を描いたドラマなのだ。つまり、もうストーリー上のパズルチックな展開は作者を守ってくれない。さぁどうする――!?
これに対して高畑京一郎は「パズル的な要素が無くても(そして派手さが全く無くても)、それでも構成力だけで突き進んでみせる」という答を示した。この第2巻はそれをはっきりと体現している。
次巻以降はいよいよ主人公の戦闘員としての日々が始まる筈だが、恐らくは今作の様な地味な展開を少しずつ積み重ねていくんだろう、と思う。登場人物の数が少し膨らみ過ぎる傾向にあるのが気になるが、ゆっくりと丁寧にストーリーを進めて行くつもりなのだろう。それは大いに結構だが、執筆スピードはどうにかしてもらいたいものだ。


Hyper Hybrid Organization 01-03 通過儀礼

一言

期待通りの緻密な展開。だが物足りなさが残る部分も有る。

目次

第一四章 一時帰宅
第一五章 再会
第一六章 再招集
第一七章 遭遇
第一八章 通過儀礼
第一九章 境界線

梗概

「……いいんですか? このままじゃ、あいつ、本当に死にますよ」
「この程度で死ぬようなら、山口もそこまでの男だ。いなくなったところで別におしくもない」
地獄の訓練所を卒業し、悪の組織ユニコーンの正式な一員となった貴久を待ち受けていたのは、さらに過酷な現実であった。予想外の激しい銃撃戦へと巻き込まれた貴久たち。銃を構えた敵と退治したその時貴久は……!?
高畑京一郎が描く男たちのドラマ。待望のシリーズ第3弾!!
   ――表紙裏より

感想

これまでと同様、多くの細かなイベントを織り交ぜつつストーリーを丁寧に展開させていて、好感の持てる作品に仕上がっている。物語も本筋になって来たようで、ユニコーンの上層部の人間関係なども少しずつ明らかにされている。ただそれだけに、やはり登場人物数の肥大化は気になる所で、村雨省吾レベルのキャラクターですらきちんと最後まで描き切れないのではないか、という疑問が付いて回る。(次回予告を見る限り、彼については大丈夫なようだが)
今作で残念だったのは終盤での中国マフィアとの銃撃戦シーンである。これは第2巻で言えば「卒業試験」に相当する場面だが、それと比べるとどうにも緊迫感が足りないように思える(危険度は今回の方が上なのに、である)し、窮地からの逆転劇も少し強引さが目立つように感じる。
ユニコーン総司令の佐々木の人物像も何となく“浅い”気がする。彼については、まだまだ隠された要素が有るだろうから結論は下せないが。
次巻ではユニコーン内部で何か対立が在る様である。起承転結の「転」と言った所だろうか? このシリーズ、超長編になると思っていたのだが、意外と6巻くらいで終わるのかも知れない。


Hyper Hybrid Organization 01-04 謀略

一言

目次

梗概

   ――

感想


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