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『蜂』シリーズ11 〜人間以上に権力に固執するミツバチ

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ミツバチは自分が女王になる為なら自分の姉妹を殺す。

女王蜂が1日1500個もの卵を産む事は既に説明した。これだけの卵を産み続ければ、その巣に住むミツバチの数は増大する一方である。当然、巣は手狭になる。この時、ミツバチ達は巣分かれ、所謂“分蜂”を行う。分蜂は旧女王蜂が新女王蜂に元の巣を譲り、その巣の半分の働き蜂とオス蜂を一緒に連れて出て行く事で行われる。では、新女王蜂はどのようにして決定されるのだろうか?

後継用の王台は数個から十数個作られ、その中の1匹が新女王蜂になるのだが、その決定されるまでの過程が凄い。

ここで或る女王蜂候補が最初に羽化したとしよう。すると彼女は早速、他の女王蜂候補(少なくとも母親は同じなので自分の姉妹)を抹殺しようとする。その手口はこうだ。まずは1時間ほど掛けて王台に直径4.5ミリ程の穴を空け、中を確認する。そしてその女王蜂候補が既に羽化していた場合は自分の刺針で毒液を注入するのだ。もしも羽化していなければ、その女王蜂候補の抹殺は後回しになる。その間に他の候補が産まれて来てしまうかも知れないからだ。

驚きなのは働き蜂がこの女王蜂候補同士の争いに積極的に加担している事だ。というのも、働き蜂にとっては自分にとって血縁的に近い女王蜂候補に新女王になって貰いたいからである。彼女たちは基本的に母親は同じだが、父親は異なる。従って、父親が同じである女王蜂候補に、働き蜂たちは協力するのである。具体的には、自分が指示する女王蜂候補が他の候補を抹殺している間に、さらに他の候補が羽化してしまわないかの見張りや、自分が指示する女王蜂候補が羽化する前に王台を壊しに来た他の女王蜂候補への妨害工作、そして運悪く王台が壊されてしまった場合は、その修理などを行う。

この時期の働き蜂は派閥を形成している。

タイミングの問題で2匹の女王蜂候補が同時に生まれて来る事も有る。この時は一方的な殺戮が行えないので、女王蜂候補同士が1対1で決闘をする事になる。これはどちらかが死ぬまで続けられる。

ここで一つ疑問が出て来る。ミツバチの巣は限りなく密閉状態に近い為に中は真っ暗なのだが、女王蜂候補はどうやって相手の位置を知る事が出来るのだろうか? 『女王蜂の非道な行い』で紹介した女王物質は、働き蜂が女王蜂を識別するのには有効だが、女王蜂候補にとっては自身も分泌する物質な為、他の候補を見分けるのには有効ではない。

実は女王蜂候補は互いの存在を、触覚で相手の体毛を読み取る事によって判断している。通常、女王蜂候補同士を閉鎖的な空間に入れておくと殺し合いが始まるのだが、その際に彼女達の体毛を剃っておくと争いをしなくなる事が実験によって確かめられている。

ちなみに女王蜂は2〜3年で新しい女王蜂にその座を明け渡さねばならない。元の女王蜂は分蜂によって移住し、また女王として君臨するが、最終的に卵が産めなくなると働き蜂から“用済み”と判断されて、すぐに殺されてしまう。これは、それまでの女王蜂の非道な行いに対する働き蜂の恨みの深さを物語っているように感じる。


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