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再び激化する中学受験

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中学受験熱は1990年代前半をピークに下落傾向だったのですが、ここ数年で再び急激な上昇を見せています。

首都圏小学生の中学受験率は1992年に14%近い数値を記録し、これがピークだと言われていました。その後、1999年には受験率は11.8%にまで落ち込んでいます。意外に思われるかも知れませんが、この間は中学受験熱は冷える一方でした。長い不況の影響であると言われています。

ところが2000年から再び増加に転じ、今年(2004年)には14.7%という史上最高の数値を記録しました。ピークだった1992年を超えてしまった訳です。受験率だけを見るなら、僅か5年で1.25倍にもなってしまった事になります。最初に中学受験が注目され始めた時代ならともかく、ある程度成熟した時代でここまでの伸びを見せるのは異常と言えると思います。

しかも今年は首都圏に限ってみれば、小学6年生の総数が増加に転じる、珍しい年でした。現在では、かなりの速度で少子化が進んでいますから、これは珍しい事です。が、とにかく母集団が増えた上に受験率も大幅増(2003年は14.0%)で、今年の中学受験は相当に厳しかった筈です。

これに拍車を掛けているのが、一人当たりの受験校数(併願校数)の増加です。1998年の併願校数は4.65校、1999年の併願校数は4.84校でしたが、2004年の併願校数は5.97校まで増加しました。こちらは6年で30%近い伸びです。

結果的に、首都圏中学受験の応募者総数(のべ)は、1999年の179000人から2004年には258000人まで増加しました。5年間で40%以上も伸びている訳です。先程も言いましたが、既に広く認知されていた市場が短期間にここまで拡大するのは異常な事です。

取り合えず、ここまでの結論。

中学受験が再び激化しているのは、受験率と共に併願校数も大幅に伸びている為。


中学受験に於ける最近の併願校数の増加には、受験生側の“強気志向”が大きく関係しているようです。

僕は以前、「受験校の決め方」というテキストで、概して皆さん、第一志望校のレベルが高過ぎると思いますと書きましたが、同様の見解を大手学習塾の四谷大塚がしています。『2004年度首都圏中学入試分析』に以下のような記述があります。

また、このところ男女ともに実力以上の学校を志望するチャレンジ志向が強く、難関校の応募者増の割合からすると、かなり強気な学校選択がなされた模様です。

実際に首都圏難関校の代表として、男女の“御三家”及び男子の“新御三家”中学の入試応募者数を調べてみました。

開成 昨年:925人 今年:977人(5.6%増)
麻布 昨年:917人 今年:891人(3.8%減)
武蔵 昨年:470人 今年:482人(2.6%増)
駒場東邦 昨年:728人 今年:752人(3.3%増)
海城(1回目) 昨年:445人 今年:499人(12.1%増)
海城(2回目) 昨年:1123人 今年:1216人(8.3%増)
巣鴨(1回目) 昨年:346人 今年:427人(23.4%増)
巣鴨(2回目) 昨年:758人 今年:762人(0.5%増)
桜蔭 昨年:553人 今年:797人(44.1%増)
女子学院 昨年:695人 今年:1133人(63.0%増)
雙葉 昨年:392人 今年:606人(54.6%増)
(海城・巣鴨は帰国子女枠との合算)

麻布が減少している以外は、全ての中学で応募者(願書提出者)が増加しています。特に男子御三家と駒場東邦以外は10%以上の高い伸びを見せており、確かに受験生の“強気志向”というものは存在しているように感じます。

一方でこれだけ受験者数が伸びても、合格者数が増える訳では有りません。となれば受験者数が伸びた分だけ不合格者数は増えていると言えます。しかしながら、わざわざ長い期間を掛けて中学受験に備えて勉強をして来た訳ですから、「何処かには合格して入学させたい」と(主に親が)思うのは自然な流れです。従って、確実に合格出来るような中学(所謂“滑り止め”)を受験する事も依然として続けられているようです。

つまり、以前から受験していたレベルの中学に加えて、“強気志向”によりさらに上位の中学を受験する傾向が加わった事で併願校数が増加し、それが中学受験を激化させる一因となっていると言う事が出来ます。

という事で、ここまでの結論。

中学受験に於ける“強気志向”は確かに存在している。


さて、先程のデータからはもう一つ気付いた事が在るのではないでしょうか? 即ち、「いくらなんでも女子校の伸び率が凄まじ過ぎる」と。これは“サンデーショック”の影響です。

東京都の私立中学は協定により、原則として2月1日〜3日に入試を行わなければならなく、殆どの中学では少しでも早い2月1日に試験を行っています。しかしプロテスタント系中学校(所謂ミッションスクール)の場合、日曜日は礼拝を行わなければならない為、2月1日が日曜日だと試験日を移動する(殆どは翌日の2日に行う)中学が増える事になります。これがサンデーショックです。

男子校の場合は殆どミッションスクール自体が存在しませんが、女子校の場合は女子学院を筆頭に、超難関校であるミッションスクールが数多く存在します。これにより、サンデーショックは女子の中学受験に多大な影響を与えています。

サンデーショックの特徴としては、試験日を「2月1日のまま変更しなかった学校」と「2月1日から2日に移動した学校」の応募者が激増し、「2月2日のまま変更しなかった学校」の応募者が激減する、という現象があります。これは元々2月1日に有力校がひしめいている為、2月2日試験校は2月1日試験校と同日に試験を行われると対抗出来ない、という事情を端的に表しています。

今年の各女子校の受験者数前年比の数値を紹介してみます。

2月1日のまま変更しなかった学校
・大妻 186.4%
・桐朋女子 164.6%
・学習院女子 159.2%
・雙葉 155.3%
・桜蔭 141.4%
・普連土学園 135.3%
・日本女子大附属 133.1%

2月1日から2日に移動した学校
・立教女学院 153.6%
・女子学院 153.6%
・横浜共立A 126.6%
・横浜雙葉 122.8%
・フェリス女学院 110.8%

2月2日のまま変更しなかった学校
・晃華学園(2回目) 42.8%
・鴎友学園女子(2回目) 53.2%
・白百合学園 62.7%
・青山学院 67.7%
・渋谷教育渋谷(2回目) 77.7%

例年は2月1日に試験を行っている中学が軒並み受験者数を伸ばしており、以前から2月2日に試験を行っている中学は苦戦を強いられているのが一目瞭然です。

という訳で、ここまでの結論。

サンデーショックは女子中学受験に多大な影響を与えている。この時、2月2日に入試を行っている中学は2月1日に入試を行っていた中学にかなりの受験生を奪われている。


東京都の多くの私立中学は1月20日が出願初日であり、多くの受験生(の親)はこの日に出願を済ませてしまいます。しかし今年は1月20日が仏滅だった為に出願状況に異変が起こりました。



まずは男子校を見て下さい。今年は昨年に比べて初日の出願が鈍り、代わりに2日目の出願が大幅に増えています。これは明らかに出願初日が仏滅で、それを避けたからです。非常に基本的な縁起担ぎと言えます。大安や仏滅を気にする事は結婚式などでもよく行われています。

次に女子校ですが、こちらは寧ろ初日の出願者が増えています。ここ最近の“強気志向”に加えて今年は“サンデーショック”の影響の為、難関女子校の出願者数が激増したという状況は有るものの、全体に対しての割合を考えても決して今年は初日の出願は減っていません。しかしこれは女子校受験者が縁起を担がない、という事は意味しません。(“強気志向”や“サンデーショック”については昨日までの日記を参照。)

難関女子校の多くには面接が有るのだが、実は中学受験界の親達には「受験番号が大きな数字だと面接時に不利だ」という“迷信”(←敢えて言い切ろうと思います。)が広く伝わっている為、面接が有る中学を受験する家庭では「大安や仏滅を気にしてなどいられない」という心理が強く働きます。結果としてなるべく若い受験番号を取得しようとして、仏滅でも初日出願が減らないという状況が生み出されるのです。しかしこれも一種の縁起担ぎである事は間違いありません。

以上より、ここまでの結論。

中学受験では男子受験生は仏滅を避け、女子受験生は若い受験番号を求める。共に単なる縁起担ぎである事は言うまでも無い。


先日、当サイトで「中学受験をする事は、その人の人生に対して、メリットとデメリットのどちらが大きいと思いますか?」というアンケートを行いました。20人の方が回答してくれました。結果をコメントと合わせて紹介してみたいと思います。コメントは文字化けしているものや、個人的な部分は割愛させてもらいました。

自分は中学受験を経験したが、メリットの方が大きいと思う。……13票
・分からん。俺の場合は良かったけど、一般的に言うとどうなのかは、どうなんだろうねえ。
・自らの意思で受験校を決めた場合に限る。親に受けさせられているようではデメリットのほうが大きい気がする。
・やっぱり世間の目の見られ方が・・・
・ただ、高校受験っていかにも青春って感じで羨ましい。自分がやってないからかもしれないけど。

自分は中学受験を経験していないが、メリットの方が大きいと思う。……2票
・中学受験のために小学校の勉強をしっかりとすることで、一般常識程度の基本的なことをきちんと学べるので良いと思います。
・餓鬼の頃からストレス溜めなきゃならんほどメリットではないと思うけどね。

自分は中学受験を経験したが、デメリットの方が大きいと思う。……2票
・小学生くらいの年代は、勉強よりも遊んでいた方がいいんじゃないかと。

自分は中学受験を経験していないが、デメリットの方が大きいと思う。……3票
・どっちもどっちだけど、なんとなく。
・自分は公立中学でしたけど、私立中学に行ってもそんなにメリットはないと思います。

20人中15人が中学受験経験者でした。明らかに世間の平均(中学受験経験率は10%強)からは掛け離れていますが、これはある程度予想された事でした。回答をわざわざ中学受験経験の有無で分けたのは、この為です。

さて、まずは中学受験経験者の結果から見てみると、15人中13人が「中学受験はメリットが大きい」と考えています。これは恐らく自分の人生を顧みて、割と満足の行く中学生生活を送った人が多かったからでしょう。ただ中学受験経験者の中に、自らの意思で受験校を決めた場合に限る。親に受けさせられているようではデメリットのほうが大きい気がするとか、小学生くらいの年代は、勉強よりも遊んでいた方がいいんじゃないかととかいう厳しい見方をしている人がいたのは興味深いです。

一方、中学受験を経験していない方は票数が5票と少ないですが、結果は分かれました。自分は公立中学でしたけど、私立中学に行ってもそんなにメリットはないと思いますという方のように、特にメリットが無いから公立の方が良いのでは? と考えている人が多いようです。

僕の質問が悪かったのですが、中学受験にメリットが有るとした人は、「受験勉強そのものが良い」という考えと「私立中学に通っておけば後々に有利になる」という考えに分かれていたようです。「受験勉強そのものが良い」派の代表は中学受験のために小学校の勉強をしっかりとすることで、一般常識程度の基本的なことをきちんと学べるので良いと思いますで、「私立中学に通っておけば後々に有利になる」派の代表はやっぱり世間の目の見られ方が・・・でしょうか。この辺りを分けて質問しておけば、もう少し興味深い結果が得られたかも知れません。僕は「受験勉強そのものが良い」派ですが、中学受験はデメリットが大きいとした人は、小学生くらいの年代は、勉強よりも遊んでいた方がいいんじゃないかとというコメントから分かるように、どちらかというと「受験勉強そのものには意味が無い」と考えているようです。

今回のアンケート中に、数年前まで大手中学受験専門学習塾に勤務していた方からメールを貰いました。塾としては中学受験のメリットを「私立中学=中高一貫教育という事で、高校受験を免れる点、よって長いスパンで大学受験への準備が出来る事、公立中学の学級崩壊」として説明しているようです。しかし一方でこの方は「6年生に至っては週5日間、夜9時まで授業があり、日曜のテスト次第で席順やクラスが替わります。このストレスは子どもにも親にもものすごい負担です」とも言っています。従って「良いか悪いかは、一概に言えない」との事。

――以上でアンケートの結果報告を終わりにします。全てが貴重な意見だったので、僕の個人的な意見を結論にはしません。アンケートに協力して下さった方々は、本当にありがとうございました。


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