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恋愛の効能

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恋愛をするのは、自分が特別である事を再確認する為である。

土屋賢二のエッセイ集『ツチヤの軽はずみ』の「特別な存在」というエッセイの中で恋愛について面白い考察が有った。引用しようかと思ったが、それだと長大になってしまうので、掻い摘んで紹介する。

多くの人は「誰も自分を正当に評価してくれない」という不満を持っている。人は多かれ少なかれ「自分は特別な存在だ」と思い込む傾向が有るが、他人と接触する内に「自分は特別な人間なハズなのに、そういう人間を相手にしている割には扱いが杜撰ではないか?」という疑念を抱くようになる。これにより「自分は特別ではないのだ」という自然な帰結をする人も居るが、大抵の人は「自分は特別な存在だ」という意識を完全には捨て切れずにいる。従って「誰も自分を正当に評価してくれない」という不満を持つ結果となる。
この不満を解消する一つの方法として“恋愛”が有る。恋愛の中では相手が特別な存在になる。これはあくまでも当人同士の世界観である為に、他人には何処がどう特別なのかは分からない。実際、当人達にとっても具体的に相手の何処が特別なのかを、明確に説明できる事は少ない。何の正当性も無いのに相手を特別視しているのだ。では何の為に、そんな事をするのか?
これは自分が相手を特別視する事で、その相手から自分を特別視して貰える――少なくとも、そう自分で思い込む事が出来るからである。つまり恋愛とは、「こっちも特別扱いするから、そっちも特別扱いしてくれ」という取引のようなものだ。だから愛する人に愛されたいと思う。我々は、このような無理なやり方をしてまで、自分を特別だと実感しようとしている。

僕は以前、「『好き』と『愛する』の違い」の中で独占欲は恋愛の構成要素の一つであると書いたが、上記の恋愛観は独占欲の必要不可欠性を示してくれそうだ。

つまり恋愛相手を独占していない状態――即ち浮気されている状態というのは、少なくとも自分と同等以上の人間が存在する事になり、「自分が特別である」という意識を激しく揺さぶる結果となる。それは恋愛のメリットを著しく損なう為に、そのような状態は出来る限り排除しなければならない。即ち恋愛相手を独占する事は、恋愛に於いて必要不可欠である。

これには反論したい人も多いだろう。「独占欲が有るなんて、“愛”とは呼べない」と思う人も多いかも知れない。ただ僕が言いたいのは、あくまでも“恋愛”には独占欲が必要という事で、それを“愛”全体に拡張しようとは思っていない。例えば“家族愛”は、家族全体に向けられるべき“愛”である。これを独り占めしようとする心理は、明らかにおかしい。

同様に「お互いに独占欲なんて持っていない」と主張する恋人同士が居たとしたら、その間に存在するのは既に“恋愛”ではなく、もっと昇華された“普遍的な愛”だと考えれば良い。それを踏まえて言い切りたい。独占欲は恋愛の必要不可欠的要素の一つである、と。

以上より結論。

恋愛とは「こっちも特別扱いするから、そっちも特別扱いしてくれ」という取引である。それにより独占欲が満たされ、「誰も自分を正当に評価してくれない」という不満が解消される。つまり恋愛をするのは、自分が特別である事を再確認する為である。


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